恒久停戦と人道危機の打開を
路上で抱き合い、歓喜にあふれる人々―。1年3カ月余に及ぶガザ市民への筆舌に尽くしがたい無差別殺戮(さつりく)、破壊、人道危機に対し、停戦合意が結ばれたことを心から歓迎します。
今後に予断は許しませんが、ジェノサイド(集団虐殺)を止めよ、国際憲章を守れという国際世論の圧力をさらに強め恒久的な停戦を確実なものにし、同時に全人質の解放をすすめなければなりません。壊滅的な人道状況の改善も急務です。
合意は3段階からなると報じられています。19日からの第1段階で戦闘を6週間止めハマスが人質33人を解放、イスラエルは捕らえているパレスチナ人を釈放し軍をガザの人口密集地から撤収。第2段階で残る人質が解放され、イスラエル軍は全面撤退。第3段階でガザの復興を図ります。
■世界の声強めて
第2段階のすすめ方は第1段階中に協議されます。双方は合意を着実に実行し、決して攻撃を再開してはなりません。
急がれるのは人命を救う緊急支援です。イスラエルは、同国内で国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を停止させる法律をつくっています。国連総会は、UNRWAの活動継続を求める決議を採択しました。イスラエルは同法の施行を中止し、人道支援活動への妨害を直ちにやめるべきです。
グテレス国連事務総長は停戦合意を歓迎する声明を発表し、合意を仲介したカタールなどの「外交的解決を見いだそうとする揺るぎない決意が突破口だった」と強調しました。背景には世界の市民と各国政府の歴史的な前進があります。
■国連憲章に従え
国際司法裁判所(ICJ)はジェノサイド防止とガザへの攻撃停止の暫定措置命令に続き、昨年7月、イスラエルの行動は武力による領土取得、パレスチナ人の自決権はく奪であり、国連憲章と国際法違反だと断罪し、占領と暴力の速やかな終結、損害賠償をイスラエルの義務とする勧告的意見を出しました。
9月には国連総会が勧告的意見を支持する決議を、国連加盟国の6割超の124カ国の賛成で採択、イスラエルへの武器提供の禁止など各国がとるべき措置を掲げました。イスラエルに対しては、ガザでのジェノサイドの防止、ヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレムからの撤退と土地や資産返還などを要求しました。
国際刑事裁判所(ICC)は11月、戦争犯罪の罪でイスラエル首相らに逮捕状を出しています。
グテレス氏も今回の停戦歓迎声明で、イスラエルのパレスチナ占領の終結、パレスチナとイスラエルの2国家共存に向けた道筋を確立するよう訴えています。
トランプ次期米大統領は停戦合意を自分の手柄と誇っていますが、問題はイスラエルに恒久停戦を求め、ICJや国連総会決議に従った中東問題の公正な解決に向かわせるかどうかです。1期目に同氏は、国連決議だけでなく歴代米政権の方針に反し、エルサレムをイスラエルの首都と認定しました。巨額の軍事援助は今後も続ける構えです。
日本は、無差別攻撃や占領などイスラエルの無法を本気でただすため、同国と米国に迫るべきです。