タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

≪スズメの寿命(07年)≫

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 自然の状態で野生の生きものの死骸を見ることは、非常に稀なことである。春先に山奥の沢の中で、餓死したエゾシカの死骸を見るようになったのは、ここ数年顕著になったことで、エゾシカの生息数が増え過ぎた証左といえよう。餌が不足する冬期間に、樹木の外皮から甘皮までを総嘗めにして、枯死に至らしめる被害は、深刻の度合いを増している。空腹に耐えきれず、最近は樹種を選ばないようである。
 少年の頃、『象の墓場』という物語を読んだ記憶があるが、そのような場所は存在しない。『ウィキペディア』は、「実際には密猟したハンターによるほら話や、観光客目当てのデマであるとされる」と記している。野生動物のほとんどは、人の目に付かない場所でそっと死を迎え、自然の摂理に従って土に還る。象が死骸を人目に晒すのは、象牙密猟者による違法行為の故である。
 七月十九日、物置小屋の軒下の奥で、子育てを終え、大往生したと思われる、親スズメの死骸を発見した。息絶えたのが、わが家の物置と隣家のブロック塀に挟まれた狭い場所だったので、カラスやトンビの餌にならずに済んだようだ。今月中旬に一斉に巣立ちを始め、羽を震わせて餌をねだっていた子スズメも、今は、親から離れ、自由にわが家の庭を飛び交っている。役目を終えた親スズメの少なくとも三分の一は、人知れず天寿を全うしたのだろう。
 柴田敏隆『カラスの早起き、スズメの寝坊──文化鳥類学のおもしろさ』(新潮社)には、「自然界は厳しいので、野鳥の平均寿命は想像以上に短く、イギリスの鳥類学者D・ラックは一九五四年に小鳥の平均寿命を多くの統計からわずか一・五年と発表して学界を驚かせた」という記述がある。スズメは1.3年となっているが、雛鳥の死亡率が高いため数字が小さくなっているのであって、実際は、少なくとも三~五年は生きて、数回の子育てを経験する。

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