今日は。
皆さん、お元気に毎日をお過ごしの事と思います。
遅くなりましたが、10月3日の朝日新聞の天声人語欄に眼が留まり、約50年前を思い出しました。欄には、カリコ氏は大学の上司から『社会的に意義ある仕事とは認めがたい』と言われ、降格されたとある。しかし、高校時代に読んだ生理学者の『生命とストレス』に『諦めてはいけない、自分を信じろ、新たな発見に必要なのは長く味気ない期間に耐える楽天性と自信なのです』の言葉を抱き続けてきたと言います。
山之内製薬の薬理研究所に就職し、消化器グループに回され、既存薬を真似た薬物の開発でした。毎日、合成陣が持ってくる化合物の動物実験です。5年間が過ぎても有望な化合物はありませんでした。こんな事なら大学に戻って基礎的な研究から新薬の開発を目指そうかとも思いましたが、6人家族の長子で家計を助けるため、給与が良かったので退職出来ません。6年目になり、世界初のヒスタミンH2阻害薬で酸抑制を示して胃・十二指腸潰瘍に著効を示すシメチジン(タガメット)が上市され、次いでラニチジン(ザンタック)が見付かり、何とか世界で三番目にならないかと合成陣共々張り切りました。これまでも見つからない時には、なる様にしかならないとか、飼育室で上司と二人の手術の際には違う曲を歌っていました。休日には研究を忘れて草野球です。
驚いた事に、H2遮断薬のテーマに舵を切ってから確か5カ月後位に立て続けに3化合物がモルモット心房でH2遮断を示し、ヒスタミン持続静注に依る酸分泌をぴたりと止めたのです。いずれもラットの胃潰瘍にも有効でした。シメチジン、ラニチジンより少量でしかも両者が持っている副作用もないか少なかったのです。それがファモチジン(ガスター)です。なる様にしかならないとか、何時かは見付かるだろうとか、楽天的な面もありましたか。50年後の現在も使用され、薬局の棚にもありました。
カリコ氏の業績とは比較になりませんが、当時H2遮断薬の発見で胃・十二指腸潰瘍の手術が激減し、外科医が嘆いていたと聞きます。
ガスターの開発経緯はアマゾンの電子本に『生かされて華開くー新薬開発の裏窓ー』に掲載されています。10月27日から31日迄無料キャンペーン中ですので、ご笑覧下さい。閲覧方法はこのGooブログの8月27日版の所にあります。