夕方のニュースを観ていて悲しいニュースが飛び込んできた。
作家・北杜夫さんが亡くなられたというニュースである。
自分の中で北さんは特別な存在であった。
北さんの本を読むまでの私は読書嫌いであった。
中学生の時の親友の田所好成くんが、そんな私を見かねて、ドクトルマンボウ・シリーズを一度でいいから読めとしつこく薦めてきた。
私は嫌々手にした。
おもしろい!
私の本に対する見方が変わった。
そして、彼には内緒でそのシリーズを読んでしまう。
確か、青春期から始まって、昆虫記、航海期へと読み進んだ覚えがある。
さらに、タイトルは忘れたが遠藤周作氏とのやり取りの作品を読んだ。
そして、遠藤作品へと移っていく。
気がつくと、純文学の代表作も読むようになっていた。
夏目漱石を読むと、彼と仲の悪かった森鴎外の作品を読む。
三島由紀夫の初期作品から憂国まで読むと他の作家に移るといった具合だった。
原文にも挑戦してみたが、明治初期の作品は自分にとっては難解で途中何回も挫折した。
そのうち島崎藤村の作品に行き、彼の詩の作品に行き、そこからさまざまな作家の詩集を読み進み、宮沢賢治へ行き当たるのである。
横道へはそれることもしばしばで、石川啄木の「一握の砂」などは心酔してしまう。
ちょうど感受性豊かな時期とあいまっていたためかもしれない。
本代がなかったので、高校時代は学校の図書館によく通った。
当時の国語・古典・漢文が担任ということもあり、高校二年に上がる時に文系クラスか理系クラスかを選択する時に、理系を選択した時にはずいぶんと担任の子川明治先生を驚かせた。
なにしろ、中学まで国語は大の苦手でテストの点はかなりひどかったが、高校に入るとずいぶんとよくなっていたからである。
北さんの話に戻そう。
彼がなぜ特別なのかというと、テストのときに彼の洒脱でユニークなテスト回答(青春期を参考)がずいぶんと参考になったからである。
例えば、高校時代は生物でずいぶんと彼のテクニックを使った。
「森の進化過程を説明せよ」という質問で、上手に説明ができないので、まず線を引き、矢印を引っ張り、それに草をはやし、また矢印を描き、低木を加え、またまた矢印を描き高木を描き森にした。
それで10点中8点をもらう(ずいぶんと甘い)
染色体地図の質問では、地図の鉄道の記号に似ていたのでその上に坊ちゃん列車を描いたら、先生にはかなり受けて満点をもらった。
大学時代は、法学部の試験で答がわからなかったので、いつも講義を受けていた教室の配列図を描いて、「いつもココに座っている私です」と書いたところ、努力賞ということでなんとか「可」をもらった経験がある。
私の学生時代の試験は、ずいぶんと北さんに助けられたのである。
そんな彼が、26日、享年84歳、腸閉塞で亡くなられた。
私の青春の思い出のひとつがまた一つ幕を閉じた。
ご冥福を祈りたい。 合掌