人生の階段ー日々の詩に託してー

ある老婆の日々ーー

忘れじの風景

2016年11月03日 | 日記

その昔まだ若くて元気で

山々を経巡っていたころのこと

ある夏、八ヶ岳で遭難しそうになりました。

友人と二人、赤岳からの道を失い

真夜中までかかって湿原まで

なんとか降りてきたものの

星もない夜

とぼとぼ歩いていると

100メートルほど先の暗闇に

ぽつりと

灯りが・・・

駆け寄って行くと

一軒の小さな小屋の戸にランプが

ぽつりと灯っていたのです。

中にいたのは牧場の番人

「なにやら人声がするで

もしやと思いランプ吊るした」と。

今も忘れられぬあの灯り。

八ヶ岳も今はすっかり開発されて

一面、別荘の地になってしまいましたが

そしてあの小屋のあったところは

今はどうなっているのだろう。

ときどき思うのです、

ああ、あの灯火は

私の青春の灯りだったなあと。