その昔まだ若くて元気で
山々を経巡っていたころのこと
ある夏、八ヶ岳で遭難しそうになりました。
友人と二人、赤岳からの道を失い
真夜中までかかって湿原まで
なんとか降りてきたものの
星もない夜
とぼとぼ歩いていると
100メートルほど先の暗闇に
ぽつりと
灯りが・・・
駆け寄って行くと
一軒の小さな小屋の戸にランプが
ぽつりと灯っていたのです。
中にいたのは牧場の番人
「なにやら人声がするで
もしやと思いランプ吊るした」と。
今も忘れられぬあの灯り。
八ヶ岳も今はすっかり開発されて
一面、別荘の地になってしまいましたが
そしてあの小屋のあったところは
今はどうなっているのだろう。
ときどき思うのです、
ああ、あの灯火は
私の青春の灯りだったなあと。