雲の平山荘の夜
日が沈むとすぐに雲の平はぐっと冷え込みが強くなった
ストーブは食堂にしかなく
一番暖かかったのは地下の乾燥室かな
夕食後、食堂で短くビデオ上映会があり
小屋主さんのお話があった
なんと小屋主さんのお父さんが「黒部の山賊」の著者、伊藤正一さんなのだった
2016年(ついこの間)に亡くなって
その偲ぶ会のために作ったビデオとのこと
黒部開発と雲の平山荘建設のあらましを語ったあと
しかし、ヘリによる建築資材等の運搬費用の高騰と
登山人口の減少から
この次はもう山小屋を建て替えることはできないかもしれない
山小屋の運用は採算がとれない事業になってしまうかもしれない
ということを言っていた
日本の登山文化を衰退させないために山小屋を維持していく方法を考えなくてはいけないとのことだった
ところで
雲の平山荘の夜は寒かった
夜中、どっか開いてるんじゃないかと思って
ヘッドライトつけて大部屋を一周した
どこも開いてなかったけど
そしてここで問題の夢をみた
(prophetic dreamの記事を参照)
日付の変わるちょうど午前0時ころ
明け方にサーッという音
雪が降ったらしかった
(つっつく)
二日目、雲の平へ
本日の移動はコースタイムで6時間くらい
なので、天気の回復を少しでも待って太郎平小屋を出発することにしていた
朝は横殴りの雨
吹き流しが水平まで上がって暴れるほどの風
それでも灌木が動いていないから
昨日の風がどれだけ凄かったかわかる
雨が弱まるのを待ちつつ
7時過ぎに出発
雨具を着こんで完全装備
目的地は雲の平山荘
薬師沢までは下り
木道のある窪地を渡り
森のなかをゆっくりと下っていく
何本か沢にかかった橋を渡る
後で地図でみたら
そのあたりがカベッケが原だった
「黒部の山賊」でカッパが出ると言われたり
様々な怪奇現象が起こったとされる場所である
雨のカベッケが原は
紅葉のまさにピークだった
黄色からオレンジ、赤まで全部見ることができた
晴れているときよりも
雨の日のほうが
紅葉の葉の色が際立って見える
晴れていると
日の光を照り返して白く飛んでしまうからだ
雨粒のきらめきを纏って
鮮やかに色づいた木々のなかを歩いた
いつの間にか雨はやんでいて
音ばかりで流れの見えない沢へ下っていく
小屋の裏手に出て
山道が屋根と同じ高さだったので
小屋の屋根の上で作業していたおじさんと目があった
薬師沢小屋だった
薬師沢小屋は岩魚を釣る釣り人も使うのだろうか
飲料水は小屋の前の蛇口から無料でもらえた
中で休みたいなとも思ったけど
何だか忙しそうだった(台風の後片付け?)ので
トイレだけ借りた
お昼御飯を小屋の前の吊り橋のたもとの岩の上で食べた
太郎平小屋のちらし寿司、美味しかった
他に持参のスープと温めいらずのミートボール
川の流れは激流
白く泡立って流れていた
吊り橋は足をのせる板が橋のまん中にしかなくて
左右1/3ずつは何もなくて下を流れる川が丸見えだった
片手でストックをまとめて持ち
もう片方の手で橋のワイヤーをたぐりながら
ちょっと緊張して渡る
川が増水していたので
平常は歩ける川原の道が通れず
ストックをしまって
迂回のために危なっかしいはしごを登り降りしなければならなかった
知らずに来たけど
薬師沢は難所だった
そしてそこから2時間の急登
水の流れ落ちてくる岩だらけの登山道? を手も使って登っていく
ここが登山道だとわかるのは
倒木が切り払われているのと
忘れた頃に現れる標識のおかげ
テープやペンキのマークはなかった
高低差はたぶん500メートル以上
東京タワー1.5本分以上
まわりに木があるから怖くないけど
木がなかったら相当な急斜面の岩場だったのではないかな
台風のあとということもあって
誰ともすれ違わない
誰にも会わない山行だった
山を独り占めしてる感じで嬉しかった
はじめての雲の平は草紅葉
次は緑の頃にも歩いてみたい
でも人が多いのかな
カベッケが原を歩けたのが感激だった
でも薬師沢からの急登はきつかった
15時、雲の平山荘着
同宿は他に男性3人
また別に泊まっているのか
何かの取材をしているっぽい女性と男性がいた
とりあえず缶ビール
つまみは持参したハッピーターン
雲の平山荘は
建て替えたけど外見は前の雲の平山荘を踏襲しているらしい
まだ新しくて内装はおしゃれ
ステレオのセットやスクリーンの映写装置があった
受付をしてくれたおねーさんが美人だった
缶ビールだしてくれた男性はロン毛だった
寝床は最上階の大部屋に自分達だけ
他の人は下の階層の小部屋に分散しているらしかった
大部屋は梁が低くて気を付けないと頭をぶつけそうだった
夕食は17時、朝食は5時半
取材組は自炊していた
夕食は石狩鍋
一つのテーブルで同じ大鍋からよそって食べた
あと生姜の佃煮みたいなのと豆のマリネみたいなのと
でもおかずはそれだけで
美味しいのだけれど量が少ない気がした
ご飯はおかわりした
あとで食べていた小屋番さんたちは
キッシュみたいなものを食べていた
夜は寒そうだったので敷布団の上にも毛布を敷いて寝た
21時消灯
(つっつく)
山から帰ってきたら
部屋の灯りがついていて
ベランダの鍵が開いていたんだけど
一瞬、泥棒かなとも思ったけど
特になくなったものとかはなくて
おそらく
台風24号が通過するときに停電が起こって
それが復帰したときにリモコン式の照明器具が
全点灯したのだろうと考えられる
まあベランダは閉めていったような気がするけど