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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

十九夜講

2019-04-26 23:23:24 | 民俗学

おだんご作り(平成13年3月19日)

 

如意輪観音へのお参り(平成13年3月19日)

 

十九夜念仏(平成13年3月19日)

 

 お三夜様について触れたところだが、二十三夜の他にも女衆が主体になる念仏は多い。平成13年3月20日に、長野県民俗の会例会として、南佐久郡臼田町田口大奈良の十九夜講を訪れた。東信地域でには十九夜講の事例が多いということを、例会の報告で聞いた。もちろん女性の講であるということから、安産祈願が主旨だったのだろうが、この講には「拾九夜講萬控帳」なるものが残されていて、最も古いものは昭和9年3月19日のものだった。「大奈良 女中連」と記された控帳の最初には当番人の続き、15名の名前が記されていた。そして買物控として、酒2升、ローソク2本のほか、紙、線香、茶、たき木が購入されている。

 

 午前中にだんごなどが作られ、午後1時過ぎに念仏は始まった。古い念仏帳もあるが、新たにワープロで作られた原稿には次のような念仏が記されていた。

 

きみうちょうらい 十九やの

ゆらいを くわしくたづぬれば

なむや にょいりん かんぜおん

きある人が あつまりて

わかき 女人の たいやくや

なむや にょいりん かんぜおん

なんざんよけの きとうとて

しみづあらため みをきよめ

なむや にょいりん かんぜおん

ここのか ここのよ おほけれど

とらの 三月 十九日

なむや にょいりん かんぜおん

十九やねんぶつ はじまりて

きある人も なき人も

なむや にょいりん かんぜおん

たがいにさそい さそわれて

あめのふるよも かぜの日も

なむや にょいりん かんぜおん

いかなるしんの やみのよも

いとわつ たがわづ けだいなく

なむや にょいりん かんぜおん

十九やこうに あつまりて

わがなを せんべん とないなば

なむや にょいりん かんぜおん

はらたつたびの とがもとけ

このよのきとう みらいまで

なむや にょいりん かんぜおん

ただいま もうした おねんぶつを

まるめて おぼんへ つみあげて

十九やさまへ さしあげて

かないあんぜん ありがたき

 

 この日の報告を中川美穂子氏が「長野県民俗の会通信」164号に行っている。中川氏は関東各地で十九夜講を調べられていて、とりわけ大奈良の講を訪れて「一節毎に「南無阿弥陀仏」が入るのは、この地方の特徴のようですが、このリズムが優しさを引き立てていました」と感想を述べている。一昨日も触れた『日本石仏事典』(昭和50年 庚申懇話会)には、十九夜講について「ほとんど女人講である」としており、「家に妊婦のある時にはロウソクのもえさしをもらって帰り、お産の時陣痛がはじまるとロウソクをともす。するとその火が消えるまでに無事出産できるといわれる」と記しており、二十三夜講以上に十九夜講ら安産祈願が色濃かったことがうかがえる。

 


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