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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

三峯様の祭り 前編

2020-12-06 19:38:37 | 民俗学

三峯様の祭祀場(真ん中は庚申、左は秋葉様)

 

葺き替え前のオヤシロ

 

分区長の挨拶

 

用意された萱

 

萱を編む

 

編みあがった敷物を押し切りで整形する

 

重ねた杉の葉を挟みを使って整形する

 

葺き替え完了

 

 辰野町下辰野の法雲寺直下の集落で行われる「三峯様」の祭りを訪れた。新年を前に、オヤシロの葺き替えをするのが今日だった。午前8時からと聞いていたが、それ以前から、既に昨年葺き替えたオヤシロの屋根をはずし、すぐ上の畑で燃やしていた。訪れた際には、すっかりオヤシロの骨格だけとなっていた。骨格といっても、そもそもがそれが社であって、木造である。聞くところによると、木造の社を造り替えたのはもう15年ほど前のこと。常にその社の上に杉の葉で覆い掛けられているため、それほど痛みはなく、見た感じはまだ10年満たないのか、と思わせた。お寺の下の集落ということもあって、ここは「寺小路」と言われる。辰野町では「○○小路」ということをよく耳にする。集落の最小単位のようで、その上に区が存在する。したがってここは、下辰野区寺小路分区というらしい。最も多かったときは40戸ほどあったというが、現在は34戸程度だという。その自治組織の長は「分区長」という。

 昨年葺いた杉の葉の屋根が取り外され、社が露出した状態となり、午前8時になると分区長の挨拶で葺き替えが始まる。社の内側と外側に棒(とくに木の指定はないという)を渡し双方を縛り付けて固定すると、外側の棒と屋根の間に杉の葉を棟に向けて刺していく。屋根一面に杉の葉が覆われると、さらに上に重ねるように杉の葉を重ねていき、まさに茅葺屋根を作るような感じである。この杉の葉は、湖北浄化センターの裏側あたりの山から採って来たという。近年はほぼそのあたりだという。自治組織が山を所有しているわけではないので、杉の葉の調達は昔とは異なるのだろう。何重にも重ねた杉の葉を最後に押さえるように再び棒で抑えて表の屋根と裏の屋根の2箇所縛り付ける。最初に渡した棒が前4本、後ろ4本、そして最後に押さえる棒前後2本で10本用意される。オヤシロの幅は約110センチ、奥行きも110センチほど。

 杉の葉の葺き替え班とは別に、オヤシロに納められる神様の敷物を編む班がある。萱を使って編むもので、萱が少なくなったといって、編むのは敷物のみ。オヤシロの前後左右に掛ける簾もかつては萱で編んだようだが、今は既製品を利用する。小窓用の天津すだれ幅74センチ、長さ90センチのものを推し切りで切断してオヤシロに掛ける。いわゆるホームセンターで購入したもの。もちろんメイドインchinaである。萱が少なくなったから、とは言うものの、用意した萱はだいぶ余っていた。萱といっても選ってきれいなものを使うから、手間がかかる。したがって既製品を利用するようになった、というのが正直なところかもしれない。敷物は、萱をバインダーの紐で編んでいく。完成すると、押し切りで両側を切断して整形する。午前8時に始めた葺き替えも、1時間ほどでほぼ終わる。下辰野区内にある三輪神社の神主さんをお願いして神事が始まるのは午前10時ということで、それまでみなさん世間話で時間つぶしとなる。

 この日集まられたのは14名。寺小路の行事だというものの、全員が参加するというようではないようだ。へ

三峯様の祭り 中編


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