先の11月8日は、皆既月食(月が地球の陰に入り、赤褐色に見える)と、天王星食(その月の陰に天王星が入り、地球から見えなくなる)、の二大天体ショーが同時に観察され、前回より442年ぶり、次回まで322年、という稀有な出来事として、TVでも喧伝されました。
その中で、「一生に一度の出来事なので…」と言った人がいますが、ちょっと奇異な感じがしました。もっとはるかに長いスパンですから…。
この日は、見送る手は無い、とばかり撮影を思い立ったのですが、適当な撮影場所を思いつきません。狭い村は開発された安全な場所は光害が溢れ、未開発の広場は安全が危ぶまれます。
急遽思いついたのは、我が家のベランダです。足場の安定性は信頼できませんが、短時間撮影で、数で稼ごう、という訳です。
このために手持ちの3台のカメラを午前中から準備しましたが、勝手に伸びた柿の枝が、邪魔をしています。それらを、鈴生りの渋柿ごと、切り払って準備完了。(渋柿は、後日干し柿に転用。)
愈々となって、本番で使えたのは、前から持っている600㎜、F4Ⅱの望遠レンズx2倍テレコンⅢ+最近中古で安く買ったカメラ=1DX、天王星食に入るところから出るまでの動画も試みました。さらに、もっと前から持っている450㎜レンズx1.4テレコンⅢ+前から持っているカメラ=7DⅡは何とか使えましたが、最も新式のソニーのコンデジは、昼間の猛禽撮影には威力を発揮するのに、夜は満月を撮影する調整に手間取り、使用を諦めました。
なお、ここでお見せする写真の殆どは、簡便な民家のベランダで撮ったもので、撮影者の動きによるカメラブレを排除できてなく、まことにお恥ずかしいものですが、世紀に亘る稀有な天体ショーの記録として、敢えて掲げるものです。
1.皆既月食
天王星食の撮影の途中に、皆既月食の場面も有ったはずです。しかし、天王星に露出を合わせていますので、満足な月食図は得られていません。
2.天王星食
天王星は、太陽系惑星の中でも外から2番目(冥王星を除外)の遠い星で、撮影しようにも表面模様も期待できず、普段は感心も無いものでした。
しかし、皆既月食の最中では、暗い中に場所も同定しやすく、月食図の中で、よく光っておりました。
写真は、順に、食前(20:27)、食最中(20:54)、食後(21:26)及びその2分後(21:28)と、61分間に亘って撮影したものです。
終りの2枚は、わずか2分間の差しか無いのに、ハッキリと天王星の位置の違いが見て取れます。元来、この天王星食の起源そのものが、月の地球公転角速度(0.009°/分)と、地球の自転角速度(0.25°/分)の差によるものですから、天王星の方が速く動くように見え、2分間でおよそ0.5°の差が出ていることを反映しているのでしょう。
将来、今の撮影機材でも頑張れば、もっと遠くて小さい海王星も撮影できるかもしれません。
なお、この食の前から食後までの間は、動画撮影を仕掛けておりましたので、食の直前・直後の写真は、その動画を解析せねばならず、後日の課題です。
3.木星の衛星の動きの記録
天王星食撮影の区切りマークとして、少し東南~南側にクッキリ見えていた木星を撮影しました。
天王星主体で明るく撮る設定ですから木星本体の縞模様は潰れて見えませんが、4つの衛星がはっきり見えます。
撮影時刻は、順に、17:28, 18:02, 18:06, 18:09, 18:18, 18:31, 18:41, 19:10, 19:29 で、計約1時間の記録です。
撮影条件は、EOS 1DX+64Ⅱx2Ⅲ、F=8、1/15~30秒、ISO=12800,でした。
私としては、こんな丁寧な撮影は初めてですので、以下のような ”発見” が有りました;
(1)4つのガリレオ衛星の互いの位置関係や見える数までが、変化して見えます。これは、各衛星の公転周期が内から順に凡そ、1.8日、3.6日、7.2日、4番目のカリストのみが約16.7日と大きい由、動きの激しさが異なることが原因でしょう。
特に一番内側の衛星イオが最も激しく移動しているように見えるはずで、逆に一番外側のカリストは、この一時間では殆ど動いていないように見えるはずです。
(2)外側の衛星の明るさが暗く見える時が有りましたが、ソフトで調整したら輝度は殆ど似てきましたが、大きさに違いが見うけられます。
この現象は、約18日間にわたって系統的に観察し、どの輝点が何番目の衛星であるかを厳密に同定した後、反射能なども考慮して議論する必要が有りましょう。
(3)最後に、4つの衛星がほぼ直線状に一列に並んで見えているその直線の傾きが、徐々に時計回りに回転しているように見えること。
初め、不思議に思えたのですが、結局、撮影系を赤道義に載せて駆動すれば、このようなことにはならないはずです。
私は簡便に、普段野鳥撮影に使っているジンバル雲台を使用したので、地球上に無い天体を、時間をかけて観察・撮影したので、このようなことになった訳です。
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