ソプラノ和泉聰子の『おんがくのいずみ』~うたの心をあなたに~

ソプラノ歌手・ボイストレーナーの和泉聰子のブログ。HPは http://lulu-hikichan.jimdo.com

日本オペラ協会公演『ミスター・シンデレラ 』GP見学とこの13年間

2017-10-12 23:46:49 | 音楽
今日は週末本番の日本オペラ

ミスター・シンデレラ

の昼公演組ゲネプロを見学してきました。





このオペラは鹿児島オペラ協会のためにつくられた作品なので鹿児島が舞台。鹿児島の方言やおはらまつりなど地方色も豊かに入りますが、作品の本質は真実の愛を見つけた夫婦の物語。



そこに登場する
彼らを取り巻く個性的な人々。




台本は演劇的であり、
耳なじみの良い音楽はミュージカル的であり、
でもやっぱりオペラなのです。


なぜならしっかりとした歌唱によってのみ
この作品の魅力が表現され得るから。

耳障りのよい、ポップス調のメロディを
アイドル歌手のように歌っては
この作品は成り立たず、
イタリアオペラと同じに
きちんと声を響きの良いところで歌って初めて
この作品の素晴らしさが出てくるのだと
今日改めて思いました。


メゾ、と書いてある赤毛の女も
今回の公演ではソプラノが歌うから
カデンツァもついてハイDまであるようです。


やっぱり作曲家が生きているオペラは
公演のたびに当て書きされたり、
改訂が加えられて
作品がいきていて素晴らしいですね。


私にとっては2004年、鹿児島オペラ協会と日本オペラ協会との共催で新国立劇場中劇場でこの作品の合唱で舞台に乗ったのがプロとして初めてのお仕事でした。


だからとても感慨深いのです✨✨


あの時は3日間の公演、役によってはトリプルキャストで、劇場入りしてから午前、午後、夜間と丸一日の稽古の日もあったり、今にして思えばあんなに拘束された舞台はないのですが、とにかく初めて尽くしで楽しかった。


合唱の先輩方もいろいろ教えてくれて
とにかく現場が楽しくて仕方がなかった。



結婚してから入った研修所、
出てすぐに出産で
35歳までには音楽の世界に復帰したいと思いつつ、戻れるのか不安を抱えて練習を続けた日々。

ようやく日本オペラ協会のオーディションを受けて、役で落ちても合唱の仕事がきたこの作品。夏休みは子供を富山、新潟に預けつつ音楽の世界に復帰出来たのが34歳の時でした。


薫の気持ちもよく分かった。

自分のキャリアを作りたい、
親からは孫はまだかと言われる、
旦那も仕事に夢中だ、

それでも最後に二人は愛を確かめ合って
感動的な合唱でフィナーレを迎える。


最後の合唱、
指揮の坂本先生にしごかれたっけ。。

もしもこの作品を見に来た人が
帰りに口ずさむとしたらここだと思う。

♪ある朝〜

バカバカしいけれど涙の浮かぶ
とても心あたたまる作品です。

是非皆さんに見ていただきたい。


私も千秋楽、夜公演を観に行きます💕
13年前薫を歌った、大貫さんの再演。
8月のセヴィ婚でフィガロを歌った
村松さんの垣内教授も楽しみです❣️


☆☆☆☆☆☆
そして舞台をみて
感動しながら
自分の13年を振り返りました。


あの後日本オペラ協会のオーディションに受かってキャストで出演者させてもらったり、日生劇場に出たり、ハイライトでもヴィオレッタやウエストサイドのマリアを歌わせて頂いたり、自信を持って舞台に立っていたのに、少しずつ子供の思春期を迎えたり、受験にかこつけて練習を休むようになったりするうちに実力が落ちて来たり、体力が落ちてきたり、喉を壊したり。。



今の私は
あの頃の私に負けているだろうか?


。。。



過ぎた時間は戻らないし
落ちた実力も認めたうえで
ここからまた上を向いて歌って行きたい。


素晴らしい音楽に囲まれて
素晴らしい歌手の仲間に囲まれて
子供たちも大きくなったので
ここからまた自信を持って
舞台に立っている歌手に戻るから。


そう。13年前
ミスター・シンデレラから始まって
また今日から新しいスタートを‼️