高倉健の母への想い 2
僕の映画は人生観で、出たみたいですね。
だけど妹たちがいやがってました。
やっぱり母親で見るから役で見ないんですよね。
独り言がだんだん多くなってきて、
恥ずかしくて連れていくのがいやだって。
「後ろから斬るとね。そんな卑怯なことして」とか言うんですって。
「つかまえてみろ」とか。「逃げなさい」とかね。そういうことチョコチョコと言うんで、
周りの人に恥ずかしくって、一緒に行くのがいやだって、だんだん言ってましたね。
毎年、写真送ってきてましたよ……離婚して…二、三年たってから、
毎年お見合い写真みたいなのに履歴書入れてね。
母の家系って教育者が多いんですね。
あの中学校の校長とか…母も先生でした。
一人になって可哀想……といつも書いてましたね。あなたが。不憫だって、
それはいつも書いてありましたね。
僕が何かのロケヘ行ったりして、ワッと囲まれたとか、
ファンレターがなんとかって
そういうのいっさい見たことないですから。
想像できないんですね、
ぼくの生活が。
女の人とチョロチョロ、なんかコソコソ遊ぶなんて全然想像もしてないんでね、
恥ずかしがり屋でできないと思ってた。
帰っても誰もあなたを迎える人がいない。それを思うと不憫だって、
毎回書いてありましたよ。
「お母さん。あなたが思っているより、僕ず―っともててるんだよ。
教えてやりたいよ本当に」
「バカ」って言ってました。
頑固で、優しくて、そして有難い母だったんです。
自分が頑張って駆け続けてこれたのは、
あの母(ひと)に褒められたい一心だったと思います。