九十歳の頃から、自ら認知の衰えを感じていたらしく寒い弐月だった。
其れは、老いた女性とは迚思えぬ文字で私自身信じられなかったが、
一枚の半紙に、少し傾いていたが眼鏡を好まぬ母が書いたのは事実で
自分の生涯を遺すかの様な如く精魂を傾けたのだろうか、今までの母の
観念を儘覆すか、諌める一句だった。
お前は、最後に生んだ子だからと渡したのだが其時は、迚理解出来なかった。
下記は其写しです。
神葬祭の家系に嫁いだのだが、生まれた家が仏教徒で其れに従ったのか、
西とは、浄土を指すのか其れとも、西に沈まんとする夕日を指すのだろうか?
其れとも両方を重ねたのかも知れない。
我は此れを辞世の句と為す。