アラ還のズボラ菜園日記  

何と無く自分を偉い人様に 思いていたが 子供なりかかな?

真説 国定忠治 其の壱拾九

2013年09月04日 | 近世の歴史の裏側

 

○天保の飢饉と土木工事

享保、天明、天保の三度の凶年を、江戸時代の三大飢饉(ききん)と

よんでいる。この時は上州一帯もひどいものであって、利根・吾妻など

山間部では飢死見出たほどである。天保七年、忠治の大戸開所破りの

二度目を行った。原因は、子分の茅場の兆平が、天保七年の春に

信州の旅先きにおいて、信州のやくざ波羅七(原七が正しい)に

殺された事伴が起こった。忠治は、子分二十名を連れて、鉄砲や槍を

持って急行し、大戸の関所をまかり通り、六里ヶ原を越えて信州に行ったと、

伝えられているが、この件の古文書などは、一切無いので山越えで

所謂、関所破りになったのと推測するが、其れでは面白くない。

ところが、対手の原七は役人に捕えられており(役人の罪で)どうにも

ならず、空しく帰ってきたことがある。帰ると、関東一帯は凶年で大変な

騒ぎであった。忠治がこの時に、有名な土木工事を起こしたことになっている。

忠治は飢えた村民のために金品を与えて救い、赤城近辺の村々は飢えずに

すんだという。赤城録の著者は、「この時予緑野(みどの)郡を宰す、郡は赤城に隣る。

管内餓ふ(莩)なし。忠が事を聞き赧然面無背汗、地縫入る可き無きを恨む」

と記しているが、この緑野郡を宰すというのは岩鼻代官のことをさして

いるのであるが、岩鼻は群馬郡で緑野郡ではない。まして赤城に隣ると

いうのもおかしい。このことから、羽倉外記の「赤城緑」は、

必ずしも全面的に信用できないということもいえる。しかし、たしかに、

忠治が天保の飢饉で人命を救助したことは伝聞であったらしい。

 あくる天保八年になると、田部井村に大賭場を開き、そのテラ銭で、

田部井村向原に在った沼ざらいの工事をした。その土木工事の

人足賃で、貧民を救ったという。これについて、忠治の甥の利喜松の談話は、

「田部井村の名主宇右衛門は忠治と仲がよかったが、代官の平出七之助と

いう者が金三十両を宗右衛門に下附し、沼ざらいをさせたが、宗右衛門は

忠治に十五両をやって沼普請をさせた。忠治は、工事場を設け、

おおっぴらに賭場を開き、負けた者は土をかつがせた。賃銭を得た者は

また十 六勝負をさせた。一時は飲食店まで出て大さわぎだった。

八州の役人もこの時は黙認していたのは、工事の人足か働らかせる

為には、どうしてもバクチを一つの慰安にしたからだ」とこう述べている。

しかし、このこと自体が多くの矛盾を持っている。兇状持ちの忠治が、

土木工事を請負い、しかも堂々と賭博を開いたという事がおかしいし、

関八州の取締りが黙認したということも考えられないはずである。

しかし、当時の為政者、役人側には、毒をもって毒を制する方法は

とられていたから、忠治を逆用して、沼の土ざらいをさせたという事も

考えられないことはない。そうだとすれば、現在の暴力団にも見られる

社会的善行と見せかけて、実は大いにこれでボロい儲けをするという

方法もあるからである。あとにも先きにも、忠治が社会のために

やったと思われるものは、善にしろ悪にしろ、この天保の飢饉の時の

ことであるが、ことの真相はなかなかつかみにくいことである。

この沼は磯沼という溜池だという。

 この磯沼の工事が、偽装したやくざの行動の一つとすれば

むしろ興味ある事といえよう。忠治の賭場のテラ銭を、全部工事費に

つぎこんだという説が真実とすれば、まさに、ある公共事業の費用を、

ギャンブルによってまかなおうという主張と似ていることがわかる。

目的のために手段をえらばない資金稼ぎを、もし幕府の役人が黙認して

いたとすれば、丁度「公共事業の費用と賭け」の近代的意味もあるの

で、一そう興味深い暗示を与える。忠治を、そういう時に逆用したと

すればその役人心なかなかのものであるが、それなれば、ほかに忠治を

使っていろいろの仕事をさせてよいはずである。

とにかく、この間忠治は逮捕もされず、公然と土木工事をしていたと

すれば、殺人、傷害、強盗で指名手配中だから記述自体に矛盾が有る訳で

なをかつ、忠治自身も相当な策略家あるし、宗右衛門が、半分の一五両を

何もしないで懐にした事にもなる。

 

                           つづく

 田部井村向原にあったという、磯沼は、現在の伊勢崎市田部井町

1丁目天神沼と思われるが、確たる証拠はないが、当時から存在した。

 

一 六勝負

ばくち・双六(すごろく)で二つの賽(さい)を振って(さい)の目の裏表で

あるところからさいころの目に一が出るか六が出るか又は、その目に

一と六とが同時に出ることですが、丁半、アトサキ、に比べて極めて

勝率の低い勝負です。

なを、テラ銭の取り分は、5分デラはてんから5%ですから丁半、

アトサキ、など一般的な博打では胴元が勝者より5%(1万円なら500円)

のテラ銭を徴収して付けます。(盆の上の駒は自分のものではありますが、

張った以上は中盆が自分の前に投げるまで触ることはご法度です。)



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