西田稔の爺(時事)評論

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自動車のEV化時代における経済政策

2022-12-21 13:19:57 | 政治・経済
自動車EV化の時代においては従来の経済政策論の考え方が通用しなくなっている。
従来は、地球温暖化対策としてEV化を促進するという政策目的を追求する場合にも、自動車メーカーを減税や補助金などの手段で支援することは自由貿易の精神に反するので、EV自動車の買い手つまり消費者側に補助金を与えるのが自由競争の精神に適合すると主張されてきた。
しかし、過去の太陽光発電パネルの設置補助金の例を見てもわかるように、補助金の恩恵を最大限利用したのは安価なパネルを大量生産して世界中に輸出した外国メーカーであり、日本の企業は彼らとの競争に負けてほとんど姿を消してしまった。それによって日本は経済成長の機会の一部を失った。
同じことが自動車産業においても起きるであろう。いまEV化自動車を安価に大量生産して世界市場を支配しようとしているのは中国の自動車メーカーである。日本政府が提供しているEV購入補助金の恩恵を最大限に享受して市場を支配す露はそれらの外国企業となり、日本の自動車企業は競争に負ける恐れが大きいと言わざるをえない。日本国民の税金の大部分が海外企業に使われるだけでなく、日本の自動車製造業が弱体化するという二重のマイナスを生むことになる。
だからといって、EV購入補助金の対象から海外企業、輸入自動車を排除するわけにはいかない。それは外交上の摩擦を生むだけでなく、露骨な保護貿易主義としてWTO(世界貿易機構)の規則違反に問われることになる。
そこで従来の考え方から離れて、日本のEV車メーカーやEV化対応の事業転換をめざす日本の部品メーカーを強力にサポートする政策に切り替えることが賢明であり、不可欠である。新しい時代における経済政策であり、地球環境せいさくである。
実は、アメリカはすでに過去の政策思想を修正して、国家経済安全保障政策の重要な柱として以上に述べたような産業政策の採用に踏み切っている。したがって、日本がそのような産業政策を採用しても、1980~90年代のような激しい対日攻撃をアメリカから受けることはないであろう。

今後15年のミサイル防衛戦略

2022-12-09 16:18:16 | 政治・経済
2035年までを見据えた今後15年の日本のミサイル防衛戦略について考えてみる。
いま政府・自民党では、与党内の抵抗勢力・公明党に足を引っ張られながらも、スタンドオフ・ミサイル(小型の射程1000キロ超のミサイル)の保有に向けて安全保障戦略の改定作業が進められている。これ自体はよいことであるが、気をつけなければならないのは、それによって日本の国防が今の現状以上にアメリカ依存、米軍依存を深めてしまうことである。
自衛隊の12式対艦ミサイルの設計を改造して射程1000キロ超のスタンドオフミサイルを開発するが、その配備までには5年以上の時間を必要とする。その間の繋ぎとしてアメリカの保有する巡航ミサイルを導入すると伝えられている。この巡航ミサイルの運用には米軍の精密誘導システムなどの支援が必要になり、自衛隊の作戦行動が米軍の支援に深く依存することになる。
日本の国防・安全保障の自立性を保つためには、上記のような施策と並んで、日本が国産の中距離弾道ミサイルを配備する準備を進めなければならない。これは日本の自立的安全保障能力の獲得に役立つというだけでなく、自衛隊の人員不足の問題解決にも役立つものである。
自衛艦艇や戦闘機の増強、運用の安定には高度な身体能力をもつ多数の若い人材を必要とするが、少子化・人口減少の時代にあって極めて困難な課題であろう。ところが、中距離弾道ミサイルの運用においては、男・女、年齢の制約なく、健康で安定した精神力と判断力をもつ人材であれば、誰でもこの任務に就くことができる。しかも、米軍の直接的な支援なしに運用することができる。
自走式発射台などの付帯設備こみで中距離弾道ミサイルは、安定的な長期契約のもとでなら、1基あたり100億円程度で調達できるはずである。毎年20基ずつ導入するとして年に2000億円の予算で達成できるであろう。早急に議論して安全保障戦略に書き込むべきである。