西田稔の爺(時事)評論

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自民党総裁選における候補者たちの主張への疑問

2024-09-07 15:22:53 | 政治・経済
自民党総裁選における立候補者の顔ぶれが出そろいはじめた。まだ立候補を表明出来ていない予想候補者たちを含めて、その方々の主張を私の観点から評価してみたい。
まず、国家安全保障と経済安全保障:
石破茂氏は、憲法改正について、自衛隊の保持を憲法に明記するという自民党の現在に案は不十分であって、憲法第9条第2項(戦力不保持、交戦権否定)の廃止と書き換えを主張している。この主張は正論であり純粋に望ましい。しかし、日本の現下の政治状況において実現は極めて難しい。石破氏はこのような主張を掲げることによって、実質的には早急な憲法改正の実行から逃げているのではないか。実際に、石破氏は、総理になったら直ちに憲法改正に全力で取り組むとは言わず、任期中には改正を実現したいと述べるのみである。本気で取り組む気があるようにはみえない。

小泉進次郎氏は、政治資金問題への取り組みを就任1年目の最大課題にあげ、総理就任後ただちに衆院総選挙の実施を公約の第一に掲げている。憲法改正は一番後に付けたりのように書いているだけで、まるでやる気があるようには見えない。小泉氏は強大な共産党独裁帝国とどのように対峙するのかという、日本にとっての国家安全保障の最大の課題が念頭にあるのだろうか。

つぎに、経済政策:
高市早苗大臣は、担当の経済安全保障については豊富で的を射た主張を展開されているので、信頼できる。しかし、一般経済政策となるとアベノミクスへの思い入れが強すぎるというか、今後の日本経済の運営に不安を感じさせる。アベノミクスは今やその失敗が明らかとなっている。日銀によるゼロ金利政策や国債等の大規模買い入れなどの「異次元の金融緩和」は3年間でデフレ脱却の効果がでなかった時点で終了させるべきであった。10年にわたる異次元金融緩和の主たる効果は日経平均株価の史上最高値に迫る上昇だけであった。雇用はたしかに大きく増加したが、低賃金労働ばかりであった。こうしたアベノミクスをどう乗り越えて、国際的に強い、発展する日本経済を実現するのか、高市大臣にはその見取り図を示すことが求められている。
もう一点付け加えておくならば、選択的夫婦別姓制度について、保守派の高市大臣は反対の立場かもしれないけれど、この制度はあくまでも個々の男女が自由に選択できるというだけのことで、夫婦別姓が家族の伝統的姿を壊してしまうと考える人たちに夫婦別姓を強制する制度ではないのだから、強く拘って反対を唱える必要もないように思う。

小泉進次郎氏の経済政策だが、父純一郎元総理と竹中平蔵元大臣の規制緩和政策の延長線上で積み残し分を片付けるという様子にみえる。それはよいとして、解雇規制の改革と労働時間規制の改革はよほど十分な枠組みを組み立てて実行しなければ、日本社会にとって大変な劇薬になるだろう。総理就任後1年でやり遂げると公約するほど簡単な問題ではない。進次郎氏に分かっているだろうか。純一郎・平蔵コンビが推し進めた派遣労働制度の自由化・拡大は、低賃金・非正規労働者の増加と格差拡大、さらには正規労働者の賃金の伸び率停滞をもたらした。それらの轍を踏まないために、周到な制度設計をしなければならない。


続く


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