立ちしまま死に至る他なくば夜もなほ恍惚として金の向日葵 (河野裕子)
この向日葵は倒れて枯れない。
「金の向日葵」とは太陽に照らされる、いや、太陽を直視する向日葵。
けれど、作者が見ているのは夜。
夜を越えれば越えるほど、死が近くなる。
が、恍惚とする。
死が見えているから、生命が輝く。
死は孤独だが、やはり美しいのだろうか。
「死に至る他なくば」の言葉は死を不可避なものとして受け入れている。
だからこそ、「夜もなほ」生命を輝かせる。
人は見たいように見たいものしか見ない。
私の闇に触れる。
「きちんと育てられたんやね」と言った人。
その人が触れた。
手で。言葉で。視線で。
けれど、その人は自分が触れている闇には気付かない。
どちらが孤独なのだろう。
お互いが孤独だと思う。
永遠に分かり合えないから、人は永遠に理解しようとしてしまうのだろう。
孤独とは互いを理解するための力。
身をそらす虹の
絶巓
処刑台(高柳重信)
虹が見えるほどに、身をそらす。
虹の頂点が見える。
虹がギロチンのように見えた。
だから、処刑台なのだと思う。
何があったのか。日常ではない。
唯ならぬことがあった。
例えば、銃弾に倒れる。
例えば、車と衝突する。
死を意識する瞬間。
刹那。
この俳句の死は美しく描かれている。
まるで尊いもののように。
死は究極の孤独。
孤独は美しいという顔も持つのか。