ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

暗越奈良街道 勺禰子

2010-04-30 04:52:21 | クンストカンマー(美術収集室)
きちんと育てられたんやねと君は言ふ私の闇に触れてゐるのに

闇に触れていることに気が付かない相手。それどころか、どこかズレている。しかし、もう闇に触れられてしまったのだから引き返せないだろう。そこが切ない。
ちなみにこの歌は連作の中の一首である。下の一首から道ならぬ恋を詠んでいると思った。

夜が白みはじめるころにふくらみを増しくる咎を抱きつつ眠る

もしも、道ならぬ恋の相手が「きちんと育てられたんやね」と言ったとしたらどこか狡さを感じる。もっともこれは私見であるが。

短歌人五月号

2010-04-29 06:04:59 | 平成23年短歌人誌より
息子には褒めるところがない故に耳が人よりでかいと言いぬ

自らを虹女だと言いし子に父は雷男と明かす

学校の帰り道には風の国悪魔の道を抜けてくるらし

ぼややんと大きな雲が浮かぶ空うちはダンプにはねられたいねん

衣食住足りて近頃きみにした酷い仕打ちを思い出してる

共にいた君よりもなおあざやかに脳裏に架かる雨の宇治橋