ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

短歌人三月号「会員2」柿沼良訓

2011-03-30 05:56:15 | 平成23年短歌人誌より
わが姿見ても跳ばざる蝗あり冬の園にて老いを噛みしむ

蝗という存在。老いている自分。冬の園。なぜ、蝗は跳ばないのか。もはや生気を感じなかったのか。実感が具体を通して伝わる。関係ないが、園に下記の一首を思い出した。

前川佐美雄「捜神」春の夜深く

紅梅にみぞれ雪降りてゐたりしが苑(その)のなか丹頂の鶴にも降れる


短歌人4月号

2011-03-29 13:25:31 | 平成23年短歌人誌より
捕れるよう投げた言葉は弧を描ききみの頭上を遥かに越えた

「あのへんがうちの家」だと大まかに入道雲を君は指差す

映してはいるが見てなどいなかった白いビー玉みたいな君の眼
わたしともこの世界とも自身ともあなたはいつも終末を見る

言ってみれば悲劇のなかで喜びを見出だすことはとてもやさしい

アボカドの種を植えては水をやる明日を妬む少女のように