詩、キリン（２）

あなたはキリンに似ている

黒目が大きくて首が長く少しゆっくりだ

ドブネズミのように世界の端ばかりを逃げ回り、人を避けてきた僕とは違う

いつかあなたと動物園のキリン舎に行きたい

そして本物のキリンとあなたを交互に見比べて、からかうんだ

あなたの手をしっかりと握りながら

短歌人１月号「晩秋」同人２、小西芙美枝

人を待つ人を待たすも同一の華やぎにゐし今にして思ふ

待つにしても、待たせるにしても人との関わりから発生する。それは華やぎだろう。私もこの一首のように振り返る日がくるのか。他人を厭う感情から逃れられない。

詩、キリン（１）

昨日、夢を見た。

あなたが僕の両親に会いに来て

とても感じのいいあなただから両親もずっと笑っていた

僕は三人の笑顔を見ていると

温かい水がだんだんと満ちていくのを感じた

キリンみたいなあなたを見ているだけで

僕は永遠を意識する

森澄雄

初秋の蝗（いなご）つかめば柔かき
芥川龍之介
森澄雄「俳句への旅」より

初秋は稲が太り、蝗も太る。その恵みが具体的な動作と感触で伝わる。まるで豊かな秋そのものを掴んだように思え幸せになる。

短歌人１月号「天神祭」同人２、山中重子

壊れてるよく解らぬが壊れてる孫の少年をひしと抱きやる

よく解らないがよく解る。よく解らないことが切実な事実だ。もう「ひしと抱きやる」しかない。「孫」だけでなく「少年」と表現したことで、読者も感情移入がしやすくなっている。