ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

阪森郁代「ランボオ連れて風の中」花ほのぼのと

2012-11-30 05:49:26 | クンストカンマー(美術収集室)短歌
声さびし風にひびかせ子を呼べば思はぬ方(かた)より花吹雪する

この一首を読んだとき、美しいと感じた。それから少し遅れて残酷だなと思った。この声は子を呼ぶために発せられたが、思はぬ方より花吹雪が応えたのだ。子を呼ぶ声であるがさびしい。さびしさに花が吹雪となった。それは偶然かも知れない。けれど神は時々、そのようなことをする。

阪森郁代「ランボオ連れて風の中」花ほのぼのと

2012-11-29 06:17:07 | クンストカンマー(美術収集室)短歌
息づけるつたなき生を花に見す花ほのぼのと人を見おろす

花は姿を変えた神である。この「息づける」は疲れきった息づきだ。生に対してほのぼのとした花。息づけるつたなき人間。その対比が人間が人間として精一杯生きなければならないことの美しさを浮かび上がらせる。

詩、高く、なるべく高く

2012-11-28 06:38:11 | 
ゆっくりと手を振る

少しだけ力を抜いて

ひじを曲げて

なるべく高く

本当に大切な人に

もう目の前にはいない人に

手を振る

時間とは一体なんだろう

喪失したものはもう戻らないのだろう

一度でも手離してしまったら

もう

だから

ゆっくり

手を振る

決して戻らないものたちに


阪森郁代「ランボオ連れて風の中」白樺派展

2012-11-27 06:38:02 | クンストカンマー(美術収集室)短歌
梨の実をわが手にゆだねセザンヌの「森」の暗みへあなたは帰る

梨の実はあなたが現実に存在した証拠。その実をゆだねてセザンヌの描いたもう一つの完璧な世界に帰る。しかし確実にあなたは作者と繋がった。一瞬であっても。また見えなくなったあなただったとしても。