真弓「黒き水着」斎藤典子 2010-10-31 06:07:53 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 生きかへるすべかもしれず耳なかに息を吹きこむ戯れをせむ 誰の耳に息を吹き込んだのか。愛おしい人だ。ここからは私の想像だが多分、吹き込まれた人は静かに寝ている。あまりに静かでほんの少し不安になったのではないか。だからこそ、この行為に及んだ。とても大切な存在なのだ。
短歌人十一月号「筆圧」鶴田伊津 2010-10-31 06:05:55 | 平成22年短歌人誌より 子を叱りきみを叱りてまだ足りず鰯の頭とん、と落とせり リズムがいい。特に「とん、」の間が絶妙だ。鰯の柔らかい頭はストンと落ちる。すると、確かにスッキリする。鰯だから沢山の頭を落としたのだろう。とん、とん、とん。とん、とん、とん。怖い。
短歌人十一月号「信濃」大谷雅彦 2010-10-30 06:05:09 | 平成22年短歌人誌より まつすぐに降りしきる雨八月の街が唐突に洗はれてゆく 今年もゲリラ豪が猛威を振るった。まさに、強い水流でシャワーを浴びているような。「洗はれてゆく」の現在進行形が、臨場感を伝える。
真弓「黒き水着」斎藤典子 2010-10-30 06:04:40 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 ひとはなほ真面目に生きよといふ論理置きどころなくぶらさげてをり 「なほ」は前より一層という意味だろう。だいたい、真面目に生きていない人などいるのか。どんなに不真面目そうな人でも生きているだけで真面目だろう。それでもまだ真面目に生きろと言われれば置き所もなくなる。なんだかとてもやる瀬ない。
真弓「黒き水着」斎藤典子 2010-10-29 06:18:27 | 平成22年短歌人誌より 飛行機のけふは低く飛びゆくを扁桃腺を腫らしつつ見き 扁桃腺が腫れると高熱が出る。高熱では浮かない気分だろう。だからこその「けふ」だ。飛行機はいつもと変わらない高度で飛ぶが、見る人の状況で感じ方が変わる。扁桃腺の腫れが重くて飛行機の高度が上がらないようにも読めるから面白い。