同じ空想 2022-04-09 06:40:00 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 カニ風味かまぼこの風味もつ蟹をわれ空想す机のうへに(菊地孝彦) 何度も読み返して理解する。「カニ風味かまぼこ」の「風味もつ蟹」だと。それを多分、何となく机に座って空想している。遠くない未来に、遺伝子操作とやらで産まれるのか。違う蟹だから、蟹のままでいい。いつの間にか作者の空想に付き合っている自分。
人ごみの憂鬱 2022-04-08 10:53:00 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 つかの間の失踪をする踏み切りに入りて抜け切る人ごみの中(山下富士穂) たくさんの人の中にいると、ふと自分を見失う。踏切という空間の持つ緊張感。抜け切るために必死だからだ。自分は何者なのか。踏切には留まれない。
どちらか気になる 2022-04-07 06:18:00 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 貸していた本にあなたの髪の毛がはさまれていてそこをまた読む(木嶋章夫) 何気無いことだけれど、何も言ってないのだけど、多分、恋の歌だ。違うのかも知れない。本当にたまたま「そこをまた読む」だけなのかも知れない。何となく「また読む」。
不幸が呼ぶ幸い 2022-04-06 09:19:00 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 しおどきがきたとカラスが啼いておりくやしいけれど不幸ではない(螟虫良) カラスは何故、啼いているのか。その声に自分を重ねる。不幸でなければ幸せなはずだが、「くやしい」。不幸は人を安心させることもある。贅沢であるのだが。
エプロンの結ぶもの 2022-04-05 06:18:00 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 八方へはみだすこころを収めむとエプロンの紐きつちり結ぶ (田中あさひ) 「八方へはみだすこころ」になることがある。嫌になってしまう。ここから逃げ出したくなる。そんなこころを「エプロンの紐をきつちり結ぶ」ことによって、現実に結ぶ。エプロンでこれ以上無い日常を感じらる。