河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

茶話121 / 式部ちゃん

2024年02月23日 | よもやま話

家の前の道を、男子高生が大きな声で歌いながら、自転車で通り過ぎて行った。
とても上手とはいえない。
恥ずかしくはないのだろうか。
その後から、自転車に乗った女子高生が三人、短いスカートで、恥ずかしげもなく通り過ぎて行く。
寒っぶいのに、おいど冷えるで……と思いつつ、「女学生」という懐かしい言葉が頭をよぎった。

♪向こう通るは女学生
三人並んだその中で モストビューティーが目に浮かぶ
色はホワイト目はパチリ むすんだ唇あいらしや
もしもあの娘が彼女なら 僕も増々勉強して
優等で卒業したからは ロンドン、パリーをまたにかけ
三年五年また五年 無事に帰ったその時にゃ
あの娘は誰かの妻だった 
ざんねんだざんねんだ
ざんねんだったら 寝てしまえ♪
(ざんねん節 唄:守屋浩・曲:浜口倉之助・採譜:仲田三孝 2010年)

自由奔放に振る舞うのは若者の特権で、今に始まったことではない。
明治の33年に「ハイカラ」という言葉がつかわれ出した。
「ハイカラー(=高い襟=ワイシャツ)」からできた言葉で、〈西洋かぶれ・気障な当世風〉という意味だ。
 ♪チリンリンと出で来るは シルクハットに燕尾服 ゴールド眼鏡を鼻の先 ゴム輪の人力駆け回り ゼントル気取るハイカラも 家へ帰れば火の車 アイス(? 高金利)返すは口車♪ (以下 ハイカラ節)
最初は西洋かぶれの成り金男性をからかう言葉だったが、そのうちに、当時から増えだした「女学生」にもつかわれだす。
 ♪ニ八(にはち=16)乙女の初恋は 互いに行き交う丸の内 スクール帰りの道の辺に 逢うて楽しき胸の裡 いつしか色にあらわれて ものや思うと尋ぬられ パット散りたる桜色♪
はては、海老茶色の袴(はかま)を履いて、得意げにしている女学生を「海老茶式部」と呼ぶようになる。

 清少納言こそ、したり顔にいみじうはべりける人。さばかりさかしだち、真名書き散らしてはべるほども、よく見れば、まだいと足らぬこと多かり……『紫式部日記』。
 (清少納言ほど、得意顔してイヤな女は有りゃしませんよ。やたらと賢こぶって漢字をつかいまくっておりますが、書かれたものをよく読んでみると、ほんと、まだまだ未熟なことだらけだわ)

現代の女子高生のルーツは「光るの君」にまでさかのぼれる。
若者は誇らしげでいい。
明日からは、自転車通学の彼女たちを「ミニ式部ちゃん」と呼ぶことにしよう。
♪霞に匂う隅田川 春の夕べの月影に 雪かと見ゆる八重桜 花に見違うドーター(女学生・娘)の 背なに垂れたる黒髪に 散るやチェリーのひらひらと 女蝶男蝶の戯れか♪
※竹貫佳水 著『少女四季物語』明42 国立国会図書館デジタルコレクション 


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