備前の国の旅の途中、和気(わけ)の宿場から富士の山が見えた。
和気富士というのだそうな。左右対称で富士山に見えなくもない。
ただし、標高が172.8mの山である。中国山地の山は概して低い。
高い山ベスト5はすべて鳥取県で、①大山=1729m ②氷ノ山=1510m ③烏ヶ山=1448m ④東山1388m ⑤三室山=1358m。
このうち①から④の山は「~やま」「~さん」とは読まずに「~せん」と読む。
山岳仏教の修行の山だったので、古代インドの世界観の中で中心にそびえる「須弥山(しゃみせん)」から名づけられた。
須弥山は円盤が3枚重なった上にそびえる山である。
円盤の広さは太陽系の広さぐらい、したがって、須弥山の高さは約132万Km。
これが一つの世界で小世界という。
小世界が1,000個集まったものを小千世界。小千世界が1,000個で中千世界。中千世界が1,000個で大三千世界という。
♪三千世界の鴉(カラス)を殺し 主(ヌシ)と添い寝がしてみたい♪
長州藩の幕末の志士、高杉晋作が詠んだとされる都々逸(どどいつ)である。
この三千世界のの中心に存在する仏さまが毘廬舍那如来(びるしゃなにょらい)、つまり、大仏さま。
お釈迦さまは、この中の一つの小世界の人々を導くために現れた仏さまである。
円盤のまん中にある山が須弥山。
頂上には神様の住む世界があり、その上に悟りの世界がある。
その一歩手前を「有頂天」という。
頂上を守るのが「四天王」。
山の下にある一番上の円盤を金輪といい、その遠いはてを「金輪際」という。
人間の世界は須弥山の裾に広がる海の中にある一つの島でしかない。
その島の中で煩悩にとりつかれた凡夫が自分である。
そう考えると、目の前の和気富士が偉大な山に見えた。
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