http://blogos.com/article/186503/ より転載
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宗谷海峡に「プーチン航路」 - 吉村慎司 (フリージャーナリスト・北海道国際交流・協力総合センター研究員)
日本とロシアを直に結ぶ唯一の旅客定期航路、稚内―サハリン航路の運航が今週復活した。同区間では1999年以来夏季のフェリー運航が毎年続いてきたが、昨秋、運営主体だった日本のフェリー会社が不採算を理由に撤退。今季の運航が絶望視されていたところにサハリン州政府から協力の申し出があり、新体制での再開に至った。ロシア側は船会社をあっせんするほか、運航経費の一部を負担するなど異例の協力ぶり。背景には、極東振興に取り組むウラジーミル・プーチン大統領の影響力が見て取れる。
稚内ーサハリン航路
8月1日の昼過ぎ。青空の下、80人乗りの双胴船「ペンギン33」(270トン)が稚内沖に姿を現した。ロシア・サハリン州のコルサコフ港を出発してから約4時間半。穏やかな海面を順調に進み、13時前に無事稚内港に着岸した。新体制による稚内―サハリン航路の第一便である。船から降り立ったロシア人客が報道陣のカメラに笑顔で手を振る。岸壁で出迎えた数十人の地元関係者に、一様に安堵の表情が浮かんだ。
運航するのは日本の会社ではなく、ロシアのサハリン海洋汽船(SASCO=サスコ)だ。サスコがシンガポールの船会社から船員ごとレンタルした船を使う。定員80人で貨物の扱いはなし。昨年まで乗客200人強、車両50台程度を運べるフェリーだったのに比べれば小規模だが、小型化することで運航コストを抑える狙いだ。
(サハリンからの乗客)
「春の時点では、今年の運航はないと誰もが思っていた」と稚内の行政関係者が話す。航路はこれまでビジネスや観光だけでなく、若者の交流事業、旧樺太出身者の墓参など、少ないながらも多様な利用者を運んできた。季節航路を16年維持したハートランドフェリー(本社:札幌市)が昨秋に運航を終えるのと前後して、稚内市と地元経済界はハートランドからの船の買い取り、新たな運航会社の確保などを画策してきた。だが諸条件が折り合わず昨年末までに計画は断念。打開策がないまま今年4月に第三セクター「北海道サハリン航路」を発足し、当面2017年までに航路を再開することを目標に掲げていた。
風向きが変わったのは5月下旬だった。サハリン州政府から稚内市に、資金を含めた協力の申し出が入った。航路は99年のスタート以来黒字化せず、市が補助金で支えてきたが、その間ロシア側からの資金支援は一度もなかったため、関係者に驚きが広がった。支援はオレグ・コジェミャコ州知事の判断だった。
コジェミャコは州外から昨春やってきた、新しい知事である。ロシアの知事は形式上は地元住民による投票で選ばれるものの、実態は大統領による任命制だ。コジェミャコの場合は、前の州知事が昨年3月に汚職容疑で逮捕された際、クレムリンの命を受けて知事代行として州外から赴任した。選挙を経た正式な知事就任は昨年9月。サハリンの前には別の地方の知事を務めており、サハリンの慣習やしがらみにとらわれずに地域を発展させることを中央から期待されている。
(コジェミャコ州知事と高橋北海道知事)
プーチン、安倍会談
航路支援申し出の約3週間前、日ロ間では大きな出来事が起こっている。ロシアのソチで5月6日に行われた、プーチン大統領と安倍晋三首相の会談だ。9月に開かれるロシア極東での経済フォーラムに安倍首相が参加する見通しとなり、経済協力の機運は高まっていた。
プーチン政権にとって、人口が少なく経済が立ち後れている極東地域のテコ入れは大きな課題だ。極東の看板都市は9月のフォーラム会場にもなるウラジオストクだが、ほかの地方にも種々の特区を設置するなど極東全体の経済振興に力を入れるのが政権のスタンスだ。その分、各知事は実績づくりのプレッシャーにさらされている。ロシア国内で最も日本に近いサハリン州においては、両国間の交通インフラ整備は格好のアピール材料の一つとなる。
しかしコジェミャコ知事はサハリンに来てからまだ1年強しかたたず、航路について詳しいわけではない。そこで同知事は稚内市に対して5月下旬、航路の現状・課題についての説明を求めた。州政府を尋ねた現地駐在の稚内市職員からレクチャーを受け、支援を即決する。
知事のトップダウンにより、部下も浮き足だった。6月3日、コジェミャコの決定から数日後に開かれた北海道―サハリン官民定期会合で、州政府幹部が「航路を7月15日に再開する」と明言。実はまだ日程はおろか事業スキームも話し合っていない時点のフライング発言だがロシア側メディアでそのまま報じられた。「寝耳に水。いったい何のことを言っているのか」。稚内市や北海道庁などに混乱が広がった。実際には2週間強遅れて8月1日の初運航となる。
関係者間で事業計画が正式にまとまり、調印したのは7月4日。運航経費をロシア側と日本側で折半する内容だ。ただ日本側には船の安全性に疑問を抱く声も多く、また、運航主体があくまでロシア企業であって日本側のコントロールが及ばないことを不安視する向きもある。日本側の三セクの社長を務める藤田幸洋・藤建設社長は、「航路再開に向けては、ロシア側が支援すると言っている今が千載一遇のチャンス。今できることをやらなければ来年や再来年にどうなるかわからない」と語る。
船は週2往復で、9月16日までに計14往復を運航予定。乗客数は1000人を目標とする。「あまり利用者が少ないようだとロシア側が協力をやめる懸念もある」(地元行政関係者)。実質的にわずか2カ月程度で就航したためPRが後回しになっており、関係者は乗客確保に躍起になっている。
復活した稚内サハリン航路は、日ロ地域間経済協力のモデルケースとなるのか、短期間で破綻して失敗事例の一つに加わるのか、予断を許さない。
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♫この記事を読むとロシア人の仕事のやり方が、わかりますね。
日本人だと、期日に合わせるのが、普通ですが、期日は遅れても仕事をすることでの期日を、先に決めると言うやり方ですね。
人種が違うと仕事のやり方も違ってきます。面白いですね。
稚内とサハリンの就航が、今後どれだけの客が見込めるのでしょうか?
私も実はウラジオストックや、サハリンには、行ってみたいと思っていますよ。笑
遠い国では無くなったロシアですね。