古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

京セラ美術館 無鄰菴

2023-11-22 17:36:49 | 絵画(レビュー感想)

「井田幸昌展」を観に京セラ美術館に来ましたが、開館が10:30という働き方改革?
とりあえず、朝食を食べよう…
中国から移築したという屋上の六角堂が印象的な有鄰館。近くの「無鄰菴」にかけたのかな…

モーニングもやってるパン屋さん「リグナム」
ていねいに作った感があるスクランブルエッグ、ていねいに焼きすぎたトーストも許してしまう、美味しいコーヒー🙂

京セラ美術館2階へ
『 芸術は人のために存在しますが、人自身も日々変化をし続けています。変化が普通だとしたら、その瞬間の美しさを見 つめ続けたいという思いから、この展覧会名が生まれました。地球が回り続ける限り、あらゆるものは変化し続けます。 それは決して変わらない唯一のことなのです。
————井田幸昌 』

1990年鳥取県生まれ。2019年東京藝術大学大学院油画修了。

「Panta Rhei(パンタレイ)」とは、古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスの思想『万物は流転する』という意味

『 鑑賞者は、地面に床材として置かれた絵画の上を歩むよう促され、井田幸晶の絵画の世界、そして造形美術の表現に 物理的に導かれてきました。この部屋での鑑賞者と作品との関わりは、従来の美術作品展示におけるそれとは全く異 なります。正面からキャンパスを見るのではなく、キャンパスに迎え入れられるようなかたちで、芸術作品と鑑賞者との新 たな関係性が確立されています。』展覧会解説より

変形した2次元の自画像から3次元の自画像彫刻へ
幻想的な具象画へ
抽象表現として
絵日記のように日々を綴る
木彫表現として
最後の晩餐、登場する
巨匠が憑依したような作品も、常に変化することこそが真実で、真体だと言っているようで、
なんの衒いもなく、ベーコン、リヒター、ホックニーなど現代アートの巨匠の表現方法、マチエールを本歌取りする姿は、清々しくさえある
★★★★☆


近くの「権兵衛」でランチ
鴨なんばん、胡麻豆腐、エビス
それなりの味

歩いて数分で「無鄰菴」に到着
琵琶湖疏水から引き入れた水が陽光にきらめく

作庭家、小川治兵衛(植治)の傑作庭園、明治時代を代表する庭園

茶室から庭を眺める

東司に向う坪庭

光を採り入れた坪庭

「無鄰菴」こそ、『不易流行』常に変化するもの、変わらないもの

「無鄰菴」をあとに、疎水から分岐した白川を歩く
水面のきらめきと、揺れる柳の作り出す影が美しい
祇園に続く…

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皇室のみやび 皇居三の丸尚蔵館開館記念展

2023-11-17 15:12:18 | 絵画(レビュー感想)
旧三の丸尚蔵館が「皇居三の丸尚蔵館」として開館
開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」を訪ねました
旧館は入場無料でしたが、本展覧会は日時指定予約制の有料です(注意!予約で完売状態です)
11/3に開館しましたが、現在も2期工事中で来年度にフルオープンのようです
大手門
『三の丸尚蔵館は、平成5年(1993年)11月に皇居東御苑内に開館。「尚蔵(しょうぞう)」とは、古代の律令制において蔵司の長官「くらのかみ」をさし、大切に保管するという意味があります。また、旧江戸城三の丸の地に建設されたことから「三の丸尚蔵館」と名付けられました。』

さっぱりしすぎている?!「皇居三の丸尚蔵館」

『2023年10月には、管理・運営が宮内庁から国立の博物館などを運営する独立行政法人国立文化財機構へ移管され、11月から「皇居三の丸尚蔵館」の名称で開館することになりました。


展示面積は旧施設の160平方メートルから、計690㎡(2026年度には全面開館し計1300㎡に)へ、収蔵庫面積も旧施設の980㎡から3200㎡(同4000㎡)へ、それぞれ大幅に拡充されます。』三の丸尚蔵館HPより


記念展入場
春日権現験記絵
『藤原氏の氏神、 奈良・春日大社の草創と、 霊験の数々を描いた全20巻からなる絵巻。 左大臣・西園寺公衡の発願により制作、絵は宮廷絵師の高階隆兼が描きました。 豊かな色彩と精緻 で気品あふれる描写による、 中世やまと絵の代表作。 明治時代 に鷹司家より献上。』

春日権現験記絵 高階隆兼筆 
2巻(20巻のうち) 鎌倉時代1309年頃 国宝

藤折枝蒔絵箱 2合 鎌倉時代14世紀 国宝

『「春日権現験記絵」(1-1)を納めていた箱。黒漆塗りの箱の 表と金銅製の紐金具には、それぞれ金高蒔絵と透かし彫り により、藤原氏と春日大社にゆかりの深い藤花の文様が表さ れています。』

蒙古襲来絵詞 後巻
『いわゆる元寇のうち、弘安4年(1281)の2度目の来襲を描 いています。 生の松原の石築地前での主人公・竹崎季長主従 の出陣や、それに続くモンゴル軍との海上戦などを、臨場感あ ふれる筆致で描いています。 歴史的大事件を描いた同時代の 絵画としては唯一のもの。明治時代の御買上品。』

蒙古襲来絵詞 後巻 鎌倉時代13世紀 国宝

屛風土代(びょうぶどだい) 小野道風筆 1巻 平安時代928年 国宝
『三跡の一人、平安時代の小野道風 (894~966)35歳の書で、醍醐天皇の勅命で新調された。 屏風の色紙形に書く漢詩の下書き (土代)。随所にみえる書き入れや訂正に推敲の跡がう かがえます。 政治家・井上馨の旧蔵品で、 井上家から大正天皇 に献上されました。』

動植綵絵 4幅
『現在も京都・相国寺に伝わる伊藤若冲筆「釈迦三尊像」を荘厳するために描かれた、30幅に及ぶ花鳥図の大作で、若冲の代表作として名高い。様々な植物、鳥、昆虫、魚貝などの生き物の生命感をいかに瑞々しく描写するかにこだわった若冲によるこれらの作品は、どの作品のどの描写もが、観る者を魅了する。明治22年(1889)、相国寺より献上。』
動植綵絵 伊藤若冲筆 左 秋塘群雀図 右 老松白鳳図 江戸時代18世紀 国宝

動植綵絵 伊藤若冲筆 左
南天雄鶏図 右 菊花流水図 江戸時代18世紀 国宝

『』はすべて展覧会の解説または宮内庁HPより


天皇皇后両陛下と愛子さまは、即位5年と両陛下の結婚30年を記念する特別展(三の丸尚蔵館)をご覧になりました。

以上 NHK NEWS WEBより

展示作品は少ないですが全て
国宝です
日時指定予約制のため時間が経過するとわりとゆっくり見られます
特別展は、皇室ファンには
たまらないですね

★★★★★

唐獅子図屛風がでる後期も
見逃せません

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第三期 やまと絵展 東京国立博物館

2023-11-10 16:16:54 | 絵画(レビュー感想)

11月7日(火)〜11月19日(日)が第三期です。三期の目玉は、「日月山水図屏風」です。寝覚物語絵巻、後鳥羽天皇像は三期限定の展示です。


(会場は一切撮影禁止のため写真はネット画像を借用)


まずは、「日月山水図屏風」6曲1双
右隻 右から桜の春から夏、金色の日輪、空には金銀の箔が散りばめられる

左隻 右から雪山から秋、銀色の月輪、雪山の空は銀泥、松は高蒔絵のように盛上がる


6曲1双
下部の波立つ荒波が右から左へ流れるが、島に当って渦巻く
あるいは、山にあたる雲海ともいわれる
ずっと眺めていると、水あるいは雲の動きが見えてくる
垂直に落ちる滝とくねくねと曲った松が生き物めいている
大胆な構図、装飾性、箔、泥など工藝的技法の採用など、後代の『琳派』の元がここにあるようだ


屏風を右端、左端から観ると、凸面は近く、凹面は遠くなり、松林が立体的に見える
波の動きがよりダイナミックに感じる

日月山水図屏風 室町時代15世紀 国宝 大阪・金剛寺

この屏風は、南朝とゆかりがある河内長野の大阪・金剛寺で、潅頂儀式(かんじょうぎしき:密教の儀式)に用いられていた。
奈良・當麻寺の「十界図屏風」との関連も指摘されている。


雪舟の四季花鳥図屏風

四季花鳥図屏風 雪舟等楊筆
室町時代15世紀 重要文化財 京都国立博物館 6曲1双

右隻の岩、滝、松は屏風の凹凸で見ないと、前後関係が分からない
後の「秋冬山水図」などに比べると、雪舟独自の空間は見られない


鳥獣戯画は、丙巻


鳥獣戯画丙巻 平安〜鎌倉時代12〜13世紀 国宝 京都・高山寺

前半は人間、後半は擬人化された動物で甲巻をオマージュしたものだが、甲巻の躍動感はない

「病草紙」は、「地獄草紙」「餓鬼草紙」「辟邪絵」「小柴垣草紙」とともに、後白河法皇がプロデュースして、蓮華王院宝蔵に納められた「六道絵」のひとつ。

病草紙 肥満の女 平安時代12世紀
重要文化財 福岡市美術館


病草紙 ふたなり 平安時代12世紀
国宝 京都国立博物館

眠っている両性具有の性器をもつ人の着物をめくって、面白がる二人の男。三人の構図が巧みで、二人の男の位置、着物をめくる男の手足、楽器の配置などで、独特な遠近を出している。感情を的確に表す描線は、見る者に二人の男の無邪気な悪意と両性具有者の悲しみを描き出す(ただしこれは現代的見方だろう)。病草紙の中でも傑作だと思う。


地獄草紙 平安時代12世紀 国宝 東京国立博物館

実見すると、地獄の鬼たちが楽しそうに人間をオモチャにして遊んでいるとしか思えない。
今でも漫画のモチーフとして生きている。


久能寺経 平安時代12世紀 国宝


寝覚物語絵巻 平安時代12世紀
国宝 奈良・大和文華館


後鳥羽天皇像 伝藤原信実筆 
鎌倉時代13世紀 国宝 大阪・水無瀬神宮


妙恵上人像(樹上座禅像) 鎌倉時代13世紀 国宝 京都・高山寺

高山寺を開いた妙恵上人の肖像。松林を飛び交う小鳥や樹上のリスが愛らしい。妙恵の顔貌は迫真の表現。
全体の穏やかさに溶け込む妙恵上人の禅境。


和漢朗詠集 巻下(太田切) 伝藤原公任筆 平安時代11世紀 国宝 
東京・静嘉堂文庫美術館


一遍聖絵 法眼円伊筆 鎌倉時代1299年 国宝 神奈川・清浄光寺(遊行寺)


百鬼夜行絵巻 伝土佐光信筆 室町時代16世紀 重要文化財 京都・真珠庵


年中行事絵巻(住吉本) 住吉如慶他筆[原本]常盤光長筆 江戸時代1661年頃

「日月山水図屏風」を実見できた事が何より嬉しい。お勧めします。

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北宋書画精華 根津美術館

2023-11-09 18:21:40 | 絵画(レビュー感想)
東京国立博物館の「やまと絵展」に呼応するように、根津美術館は「北宋書画精華」を開催

中国から請来された『唐絵』を集め、目玉は「80年間所在不明」だった李公麟の「五馬図巻」とメトロポリタン美術館蔵の「孝経図巻」の同時展示

中華圏では、「五馬図巻」は特別な絵画らしく、台湾人と思われる観光客が熱心に鑑賞していました
逆に欧米人はスルー

(会場は一切撮影禁止のため、写真はネット画像を借用しました)
まずは、「五馬図巻」(ごばずかん)
作者は、李公麟(りこうりん)1049〜1106年 北宋のエリート官僚で文人・画家・古物収集家(官僚を除くと杉本博司氏の大先輩?)
北宋の皇帝に西域から献上された5頭の名馬を描いている





五馬図巻 李公麟 中国・北宋時代 11世紀 東京国立博物館蔵

線描に淡彩が施されている。『李公麟に描かれた馬は魂が抜き取られて死んでしまった』と評されるほど、見事な写実で、実物は保存状態もよく、墨の描線と淡彩が美しくまさに生写しのような印象。馬への深い愛が感じられる。
実際に現代の馬(幾世代も改良されたサラブレッドだが)の写真と比べても、その描写力はとてつもない事がわかる。


「メジロマックイーン優雅に立つ」 
今井壽惠(いまいひさえ) 1993年

『80年間所在不明』だった「五馬図巻」の由来は、

清王朝乾隆帝の収蔵となっていた「五馬図巻」は、辛亥革命後、ラストエンペラー愛新覚羅溥儀の弟溥傑に下賜され、日本に流出。明治の実業家、末延道成氏が所有し、その後、京都大学の某教授が所有していたが、戦時中に焼失したと報告されていた。近年、国内で発見され、2017年度に東博に寄贈された。寄贈元は公表していない。



孝経図巻(部分) 李公麟 中国・北宋時代 
1085年頃 アメリカ・メトロポリタン美術館蔵


畢世長像(ひつせいちょうぞう
) 李公麟 中国・北宋時代 
1056頃 アメリカ・メトロポリタン美術館蔵



山水図 李唐 中国・北宋時代 
12世紀 国宝 京都・高桐院蔵

李唐(1049〜1130)は、宋代山水画壇を代表する三大家の一人


巻子本 古今和歌集序(部分) 
日本・平安時代 12世紀 大倉集古館蔵

北宋製の料紙に「古今和歌集」を書写した
貴族たちは舶載の料紙を用いた和歌集を愛で、贈答し合ったらしい



五馬図巻は必見ですね

★★★★★

五馬図巻だけで★5つ

お昼は、キラー通り入口のホテル2階のKAWAKAMI-AN TOKYOへ


テーブル席とコの字型カウンター
窓際は植栽が美しい

定番クルミそば
川上庵青山よりつゆが薄い?

ホテルの2階で致し方ないと思うが、会話が反響して、とにかくうるさい! (神田まつやの活気とは全く違う)
そば屋の情緒ゼロ… 川上庵青山をお勧めします

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やまと絵展 第二期

2023-10-30 15:51:27 | 絵画(レビュー感想)

10月24日(火)〜11月5日(日)が第二期です。二期の目玉は、神護寺三像です。三像は二期限定の展示です。


 

(会場は一切撮影禁止のため写真はネット画像を借用)


二期のみ展示では、「粉河寺縁起絵巻」国宝があります。




粉河寺縁起絵巻 平安時代12世紀
和歌山・粉河寺

和歌山県紀の川市にある粉河寺の草創縁起と霊験譚を描いた絵巻
火災により詞書が失われ、絵巻上下が焼損している
信貴山縁起絵巻などに比べると、描写は素朴で動きに乏しいが、社寺縁起絵巻の最初期の作例として重要


鳥獣戯画は乙巻を展示
甲巻の断簡と比較すると面白い





「気」をはくライオンの先に蝶がいる、甲巻に「気」をはくカエルがいたが線がちょっと違う


鳥獣戯画乙巻 平安時代12世紀
京都・高山寺

乙巻の前半は、牛や犬など身近な動物が描かれ、後半は像や虎、ライオンなど海外の動物と一角獣、麒麟、龍など霊獣が混然

甲巻の擬人化された、ウサギやカエル、サルなどの奔放な線と動きは、北斎漫画の元祖のような躍動感がある。乙巻の動物は、若干白描画的線描と静的な描写で、主題は博物画なのだろう



鳥獣戯画断簡 平安時代12世紀
東京国立博物館



神護寺三像


伝源頼朝像 鎌倉時代13世紀 国宝
京都・神護寺 


伝平重盛像 鎌倉時代13世紀 国宝
京都・神護寺



伝藤原光能像 鎌倉時代13世紀
国宝 京都・神護寺

三像は約、縦143cm 横112.8cmの大画面にほぼ等身大に描かれている
頼朝像、重盛像には仏画に用いる裏彩色の技法が使われている
描かれている人物が本当は誰か?は未だに議論されている

三像の中でも、頼朝像は浮き出る顔の白さ、線描の確かさ、毛一本一本の精緻な描写が、仏画にも似た威儀を正した高貴な人物の姿を見ることができる


11月7日からの第三期には、これぞ『やまと絵』といえる、大阪・金剛寺の「日月山水図屏風」国宝が展示される
雪舟の「四季花鳥図屏風」重要文化財、京都国立博物館も楽しみだ