古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

江戸の動物画

2024-07-25 00:00:19 | 絵画(レビュー感想)

千葉市美術館で「秋暉の孔雀」と呼ばれる岡本秋暉展を堪能しました


江戸時代の動物画では、
「若冲の鶏」伊藤若冲、「光起の鶉」土佐光起、 「狙仙の猿」森狙仙 通り名でよばれる名手として
名を馳せています



岡本秋暉「白梅孔雀図」安政3年(1856)




伊藤若冲「群鶏図」(江戸時代1757〜1766)

ご存知、動植綵絵の一枚




土佐光起(光成)「秋郊鳴鶉図」江戸時代17世紀


とてもかわいい鶉です😊



土佐光起(みつおき)は、江戸時代の土佐派を代表する絵師で、「土佐派中興の祖」といわれる。光起は、朝廷の絵所預職に85年振りに復帰した。「光起が描いた鶉の絵に猫が飛びかかった」という伝承がある。


ちなみに、

鶉(うずら)は、現代の日本では中華料理のうずらの卵ぐらいしか連想しないが、平安時代から肉も鶏と同じように食用とされてきた。中国絵画では鶉図は古くから一般的だった。また、江戸時代、武士の間で鶉の鳴き声を競う遊びが流行したそうです。ちなみに、先日見たメイ・ディセンバーでは、ジュリアン・ムーアが野生の鶉(ヨーロッパ鶉)を鉄砲で狩り、ローストにしていました。日本の鶉は昔の方がより身近な存在だったようです。




森狙仙「秋山遊猿図」江戸時代19世紀


森狙仙は、江戸時代後期の絵師で、狩野派、円山応挙の影響を受けながら独自の画風を追求し、森派の祖となった。



こうみると、伊藤若冲はやっぱりアヴァンギャルドですね😮



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サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展 千葉市美術館

2024-01-07 13:21:32 | 絵画(レビュー感想)

ボストン美術館、大英博物館から
貴重な作品が里帰り、錦絵から肉筆画まで約160点の美人画が集結!!

鳥文斎栄之(ちょうぶんさい・えいし 1756-1829)は、旗本出身という異色の 出自をもち、美人画のみならず幅広い画題で人気を得た浮世絵師です。浮世絵の 黄金期とも称される天明~寛政期 (1781-1801)に、同時代の喜多川歌麿 (2-1806)と拮抗して活躍しました。
当初栄之は、将軍徳川家治(1737-86)の御小納戸役として「絵具方」という役目を 務め、御用絵師狩野栄川院典信(1730-90)に絵を学びましたが、天明6年(1786)に 家治が逝去、田沼意次(1719-88)が老中を辞した時代の変わり目の頃、本格的に浮 世絵師として活躍するようになり、やがて武士の身分を離れます
さらに寛政10年(1798) 頃からは、 肉筆画を専らとし、その確かな画技により精力的に活躍しました。寛政12年 (1800)頃には、桜町上皇御文庫に隅田川の図を描いた作品が納められたというエピソードも伝わっており、栄之自身の家柄ゆえか、特に上流階級や知識人などから愛され、名声を得ていたことが知られています。

重要な浮世絵師のひとりでありながら、明治時代には多くの作品が海外に流出 したため、今日国内で栄之の全貌を知ることは難しくなっています。世界で初めての栄之展となる本展では、ボストン美術館、大英博物館からの里帰り品を含め、 錦絵および肉筆画の名品を国内外から集め、初期の様相から晩年に至るまで、 栄之の画業を総覧しその魅力をご紹介します。』展覧会チラシより

写真撮影可は3点のみ
鳥文斎栄之「川一丸舟遊び」大判錦絵5枚続き寛政8〜9年(1796〜97)頃 ボストン美術館蔵 

『大型の屋形船が、5枚続という豪華な版であらわされています。華やかな女性ばかりが描かれるのは、現実的な描写 ではなく、美人画として演出されたものです。寛政後期の伸びやかな姿態の栄之美人たちが群像であらわされ、屋形船の豪華さにも目を奪われます。中でもこのボストン美術館の版は保存状態が良く、紫や赤の色彩がよく残され ていて圧倒的です。』展覧会解説文

鳥高斎栄昌「郭中美人鼓 大文字屋内本津枝」大判錦絵 寛政9年(1797)頃 ボストン美術館蔵


鳥文斎栄之「新大橋下の涼み船」大判錦絵5枚続き 寛政2年(1790)頃 ボストン美術館蔵 ウィリアム・ステージス・ピゲロー旧蔵

『燕が空を飛び船に杜若が描かれることから、季節は初夏である ことがわかります。「兵庫」と書かれた大きな屋形船には、人形遣いや三味線を楽しむ客、左手前には、鯛が捌かれる様もみられ、 吸い物を差し出すすがたもあります。栄之らしい品の良い美人た ちが集い、船上での穏やかな時の流れが感じられるようです。明治時代末期に大森貝塚の発見で有名なエドワード・モースに 伴って来日した医師ウィリアム・スタージス・ピゲローが収集して、 2011年に正式にボストン美術館に寄贈した3万点近い浮世絵の コレクションの1つです。』展覧会解説文


以下、ネットより画像借用
作品は全て鳥文斎栄之
「風流やつし源氏 絵合」大判錦絵2枚続き 寛政3〜4年頃(1791〜2)千葉市美術館蔵
『源氏物語「絵合」の帖の見立絵』
一般に、錦絵を買う客を惹きつけるのは『紅の赤』だが、栄之は意識的に紅色の使用を抑えた「紅嫌い」の作品「紫絵」を出版する。紫を多く使い閑雅な趣をだし、古典物語を題材にしたシリーズは知識層に受け入れられた。
紅嫌いの浮世絵』は鳥文斎栄之を特徴付ける一つだと思う。
栄之は、42歳の寛政10年(1798)以降享年74歳まで肉筆画に専念する
「朝顔美人図」絹本着色1幅 寛政7年(1795)  千葉市美術館蔵 平戸藩主松浦家旧蔵
短冊には『我ならて した紐とくな 朝顔の 夕かけまたぬ 花にㇵ有りとも』と伊勢物語の歌を、のちに風流人が貼り付けたもの
歌の意は、後朝に読む「他の男に下衣の紐をとかないで、朝顔が夕日を待たずに、色を変えてしまうような人だとしても…」

「三福神吉原通い図巻」絹本着色1巻 文政前期頃(1818〜30)  千葉市美術館蔵
『恵比寿、大黒、福禄寿の三福神が吉原通いする図巻』
「貴人春画巻(仮題)」絹本着色1巻第一図 文化6年(1809) 個人蔵 (図録より)
『牛若丸と浄瑠璃姫の悲恋物語を絵画化している』
春画では唯一、貴人春画巻(仮題)の第一図、第二図が展示されていました。肉筆画の中では最も豪華で、古典を題材にした物語性と良質な絵の具による濃彩、細密な描写に目を見張る。
今回の『鳥文斎栄之展』で、ボストン美術館、大英博物館が所蔵する作品がいかに上製で技巧を凝らし、芸術性が高い浮世絵であるかを目の当たりにしました。
忘れられた浮世絵師、
鳥文斎栄之を識る、
キャッチフレーズに違わない
世界初の展覧会 ★★★★★
お勧めします「春画」があれば完璧だが…

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上野散策 黒田記念館

2024-01-04 19:31:46 | 絵画(レビュー感想)

黒田清輝(1866〜1924)は、薩摩藩士の子として産まれ、伯父の子爵黒田清綱の養子となる。法律の勉強のために留学していたパリで画家に転向、ラファエロ・コランに師事する。帰国後、東京美術学校西洋画科の教授になり、以降日本洋画の父となり、日本洋画をリードした。

黒田記念館 昭和3年(1928)竣工
黒田の遺産と作品の国への寄贈により建築される
設計 岡田信一郎(1883〜1932)

岡田信一郎は、歌舞伎座(大正13年)、明治生命館(昭和9年)を設計

アール・ヌーヴォー風の階段手すりは、岡田信一郎の弟子、金沢庸治(1900〜1982)のデザイン

黒田清輝の代表作を飾る『特別室』は年3回無料開放される(撮影可)
新春は2024年1/2〜1/14
(作者名なしは黒田清輝)

「智・感・情」明治23年(1899)

左から「情」「感」「智」を表している
1900年 パリ万国博覧会 銀賞

「湖畔」明治30年(1897)

「舞子」明治26年(1893)

「読書」明治23年(1890)

「故子爵黒田清輝胸像」
高村光太郎 昭和7年(1932)と奥に「花野」 明治40~大正4年(1907~15)

ラファエロ・コラン 裸婦 1870年

黒田清輝の師、ラファエロ・コラン(1850〜1916)の裸婦像 

『アカデミーの古典的な骨格を備えながら、印象主義の影響を受けた折衷的な作風は外光派(Pleinairisme)と呼ばれる』

かなり煽情的な印象を受ける


「野辺 画稿」昭和7年(1932)

コランの影響を受けた「野辺」だが、画稿は“可愛らしい” 

「梅林」(絶筆) 大正13年(1924)
狭心症を発し、病室にしていた麻布の別邸の庭を描いた 享年57歳

日本洋画の記念碑的作品群
作品として観ておくべきだと思う

谷中霊園方面へランチを探す
『八代目傳左衛門めし屋とは
~店主の想い~
大正時代煮豆屋さんだった長屋を改装し 2018年7月に定食屋として開業』とのアナウンス

西京焼き定食を頂きました
家で食べているものとあまり変わらなかった、むしろ…

東博方面に戻る
旧東京音楽学校奏楽堂


チェンバロの練習をしていました
チェンバロを下げた、日本最古の洋式音楽ホールと日本最古の演奏用パイプオルガン

上野公園 東京芸術大学卒業記念作品 野外展示
こういう作品らしい…
「紡ぐ」 永井里奈 

「私は見た」福岡 里菜三
「地獄の門」オーギュスト・ロダン 1917年(原型)1930〜33年(鋳造)

西洋美術館 入口横
ル・コルビュジエ 昭和34年(1959)

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パーフェクトデイズ 

2024-01-01 00:48:27 | 絵画(レビュー感想)


ヴィム・ヴェンダース (Wim Wenders∶1945年〜 ) は、ドイツ出身で、アメリカを舞台にしたロードムービー『パリ、テキサス』(1984年)で第37回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。翌年、敬愛する小津安二郎に捧げたドキュメンタリー『東京画』を製作。1987年には『ベルリン・天使の詩』で第40回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した、世界的名監督です。


THE TOKYO TOILET」の一つ

はるのおがわコミュニティパークトイレ(代々木) 設計 坂茂 


役所広司は『PERFECT DAYS』で主役を演じ、第76回カンヌ国際映画祭男優賞を受賞した。映画は、渋谷区の新しい公共トイレ(THE TOKYO TOILET)を清掃する作業員の“平山”(役所広司)が送る日々の生活を描く。

平山”という名前は、小津作品の『記号』で、『東京物語』で笠智衆が演じる老夫婦の名前である。



下町のアパートに住む(なぜか小津作品の家のように二階がある)初老の一人者、役所広司の生活は規則正しく、毎日寸分の違いもなく過ぎていく

朝日とともに目覚め、空を見上げ、歯を磨き、新しい白いタオルで顔を洗い、採集した木の苗に水やり、作業着に着替え、同じ缶コーヒーを飲み、自分の軽自動車に乗って、カセットテープで古い洋楽、例えばアニマルズの『朝日の当たる家』、オーティス・レディングの『ドック・オブ・ベイ』を聞きながら、現場に向う…
一つ一つのルーチンが”説話論的な構造”を持ち、『空を見上げる』『白いタオル』『着替える』『二階』など小津作品の主題となる要素と重なる

仕事を終えると自転車に乗って銭湯に行き、浅草の飲み屋で一杯やって帰る
寝室は二階で、神聖な空間のようだ、寝る前に必ず文庫を読んで眠る

いま読んでいるのは、フォークナーの「野生の棕櫚」だ、パラレルワールドのもとのような小説


清掃員の同僚、柄本時生と思いを寄せるガールズバーで働くアオイヤマダ、気に入った役所広司のカセットテープを一本くすねる

ある日、役所広司の妹の娘、中野有紗が家出してアパートに来た
役所広司は、昼休みは代々木八幡宮の境内で必ずサンドイッチと牛乳を飲み、古いフィルムカメラで境内の巨樹がつくる”木漏れ日“を毎回同じように撮る


役所広司と中野有紗
中野有紗は、パトリシア・ハイスミスの短編小説「11の物語」(すっぽん)が気に入って、役所広司からもらう

中村有沙の母、役所広司の妹麻生祐未、運転手付きの高級車で現れる
父親の話をする…


役所広司が休日に通う小料理の女将石川さゆり
ある日、小料理を訪ねると三浦友和が…
ラストシーンは…


小津安二郎の作品を何本か観ると
より楽しめそう
★★★★★
お勧めします

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やまと絵展 第四期 最終!

2023-11-30 21:48:35 | 絵画(レビュー感想)

11月21日(火)〜12月3日(日)が第四期です。四期は三期と同じ展示が多く、四期だけの目立った展示は「那智瀧図鑑」「源氏物語絵巻 夕霧」「鳥獣戯画 丁巻」です。

やまと絵展の復習的意味合いもあるかな。


 

(会場は一切撮影禁止のため写真はネット画像を借用)


三期四期の主要作品とお気に入りの作品


山水屏風 6曲1隻 鎌倉時代14世紀 重要文化財 京都・醍醐寺

主題は唐絵であるが、たおやかな表現はやまと絵的手法に親近感を持つ絵師の作品といわれる。

屏風では何と言っても「日月山水図屏風」国宝、でやまと絵展で最高の出会いだった。
三期で解説

4大絵巻では、
源氏物語絵巻 夕霧」は第四期のみの展示

源氏物語絵巻 夕霧3面 平安時代12世紀 国宝 東京・五島美術館

一条御息所からの手紙を読む夕霧(光源氏の長子)の背後から、嫉妬にかられた雲居の雁が忍び寄り、手紙を奪い取る場面。

保存状態が良く、彩色が美しい。


信貴山縁起絵巻 尼公巻 国宝 平安時代12世紀 奈良・朝護孫子寺

命蓮(みょうれん:朝護孫子寺開祖)の姉、尼公が命蓮を探すため東大寺に向う場面。


鳥獣戯画 丁巻 平安〜鎌倉時代 国宝 京都・高山寺

山口晃氏は、丁巻を「どこかふにゃふにゃした絵で、観衆の前で描いたのではないか。わざとふにゃっと描く、ちょろまかす、仕上げすぎないのは日本の絵の特徴。」と語っています。


住吉物語絵巻 鎌倉時代13世紀 
重要文化財 東京国立博物館

継母に疎んじられた姫君と彼女を慕う中将。姫君は住吉に身を隠す。住吉に着いた中将が姫君と再会する場面。


華厳宗祖師絵伝 義湘絵 巻第二
鎌倉時代13世紀 国宝 京都・高山寺

百済の僧、義湘は仏教修行のため唐に渡る。長者の娘、善妙が、「あなたへの抑えられないの。どうか受けとめて。」「いやまぁ、そう言われても…」という場面。中国風彩色が美しい、桃の花だろうか…

異国の物語だが、妙恵上人の事績やイメージと重ねる妙恵上人を慕う人々によって製作されたらしい。

那智瀧図 鎌倉時代13世紀 国宝
東京・根津美術館

第四期のみの展示。


展覧会の終章を飾るのは、
浜松図屏風 6曲一双 室町時代15〜16世紀 重要文化財 東京国立博物館

最初は、きらびやかだけで、ごちゃごちゃした屏風だなと思っていましたが、全体から細部をよく眺めていくと、どんどん絵の中に入り込んでいくではありませんか…

浜辺の景色を中心に描いたやまと絵屏風。
画面中央の光景(上部)に、人々の行き交う浜辺の景色、これを取り囲むように前景に多くの花木花鳥が描かれている。鳥たちは四季の花木に戯れ、鳥たちを追っていくと、自分も絵の中に入っていく。

右隻


鳥たちは、柳の幹で囀り、啓蟄の虫を啄み、海に飛び込む。向こうの浜辺では人々が漁をしている。


左隻

秋草に集う鳥たち、浜辺では漁をする人々と武士の一団が通り過ぎる、山に雪が降り、留まる鳥、飛び立つ鳥たち。

浜辺を中心に、四季の花木と鳥と人々が暮らす楽園。

浜松図屏風のコンセプトは、調度品としての屏風とみるなら俵屋工房の「草図屏風」ようであり、鳥花木の楽園なら伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」を連想する。

【参考】
草図屏風 宗達工房 江戸時代初期
京都・細見美術館

鳥獣花木図屏風(左隻) 伊藤若冲 江戸時代後期 東京・出光美術館

空前絶後のやまと絵展。第四期となり12/3(日)が最終日となりました。現在の展示だけでも数々の名品に会えます。お勧めします🤗

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