2017年1月3日に放送された、NHKBS
「新春特番 欲望の資本主義2017 ~ルールが変わるとき~」
再放送を偶然見て衝撃を受け
早速、書籍を購入した
特に、チェコ共和国の経済学者トーマス・セドラチェクの言説は、神話、歴史、哲学などの切り口から経済学のあり方を問う、刮目すべきものでした。
(1977〜)
CSOB(チェコスロバキア貿易銀行)チーフストラテジスト
20代でチェコ共和国初代大統領ハヴェルの経済アドバイザーに就任
2012年「善と悪の経済学」が世界的ベストセラーとなる
我々が生活している社会(資本主義)
は、「個人が自由にお金儲けをしてもよい社会」です。お金儲け=欲望とは何か?から思考が始まります。
セドラチェクは、欲望の原型を「聖書」に探ります。
楽園に住むアダムとイブが追放された人類の「原罪」とはなにか…
アダムとイブ 1550年頃
『原罪は中世の教会では性的な罪といわれるが、聖書に性的記述はない。聖書には「消費」の文言が頻出する。「この果実を消費してはならない」。彼らが禁断の果実を食べたのは空腹だったからではない。善悪を知りたい誘惑に負けた。欲望に負けた「過剰消費」の典型的な例。』
『神はアダムとイブを楽園から追放した時に「呪い」をかける。イブには「需要」の呪い。永遠に欲し続ける呪い。欲望にコントロールされ、欲望の虜になってしまう。アダムには「供給」の呪い。労働の呪い。どんなに働いても、欲望の全てを満たすほど生産・供給することはできない。』
セドラチェクは言う、
『かっての欲望は、「物からの自由」=物質的充足をめざした。
物質的充足を達成すると、「消費の自由」消費できるほど自由を感じる。その結果、必要のないものを買うため、したくもない仕事をする。』
しかしながら、世界では未だ物質的充足に満たない途上国が多数あり、先進国では貧富の格差の拡大によって相対的(富裕層のための社会になっているため)に貧困層となる人々が存在する事も語っています。
また、セドラチェクは「欲望の三角形」と「美人投票」について語ります。
「欲望の三角形」とは、ルネ・ジラール(1923〜2015)フランス生まれのアメリカの人類学者の理論。
人間の欲望は、主体的なものではなく、往々にして他者の模倣であり、人が欲しいものを欲してしまう。
従って欲望には限度がなく、満たされることはない。欲望の対象は現実を超えたものになる。
「美人投票」はイギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズ(1883〜1946)が名著「雇用、利子および貨幣の一般理論」に書かれた例え話で、「美人コンテスト」で優勝した女性に投票した審査員が勝者とする。
すると、①自分の好きな女性ではなく他のみんなが好きそうな女性を選ぶ ②その結果、誰一人として好まれない女性が優勝することもある ③勝つためには、女性ではなく審査員を観察することが重要… という行動原理になる。
ケインズは、金融市場、投資市場における貨幣の動き(欲望)は「美人投票」であると見透した。
2008年のリーマンショックは、多くの投資家がサブプライムローンは安全な投資と思い、IT技術が「美人投票」の世界を加速させて生まれた。実態とは異なる「美」のバブルだった…と警鐘する。
つづく