表題にあるサンサシオン(Sensation)とは、気持ち、感覚という意味のフランス語ですが、ここでは山口晃氏が「今一度日本人の『近代絵画』に対する向い方を問いたいという思い」と「普段の視覚認知機能を疑い、混乱させ、そこから引き起こされる、新たな(本来の)視覚認知機能を気づかせたいという思い」= ”サンサシオン“ を、近代日本の美術・文化について、山口自身が感じている感覚(違和感、掻痒感)を共有(追体験)して欲しいという“思い”ではないだろうか、と感じた。
部屋が化傾いている!!
まっすぐに歩けない…
私の視覚と三半規管は、歩くことはおろか、立っていられず、右にずれ落ちて、とんでもない『G』を感覚する… もう少しで嘔吐しそうだ
最初から『視覚認知機能』にカウンターパンチをくらい、異界に導かれた
ジャムセッション 石橋財団コレクション ✕ 山口晃
の題材は、「セザンヌと雪舟」
ポール・セザンヌ
サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール 1904-06年頃
2023年
山口晃がサント=ヴィクトワール山を訪ね、絵画と実景について「現地で驚いたのは、色彩の写実性」と記し、小林秀雄の『近代絵画』のサント=ヴィクトワール山の解説をひき、「絵を描かない人がここまで書けるのか!」と驚いている。
『サント=ヴィクトワール山』は、見れば観るほど山水画のように見えてくる。しかし、多視線で近景、中景、遠景を描くが、近景が歪み、遠景は歪まない。山水画の『三遠』とは異なる。
雪舟 四季山水図 室町時代15世紀
重要文化財
夏珪様で描かれた端正な四季山水図、後の『秋冬山水図』のような荒々しさ、奥行きは感じられない
雪舟 秋冬山水図 国宝
山口は、そんな雪舟な
という解説で、『「雪舟もよくわからなかった」「俄然として雪舟に目覚める」で、初めて雪舟に感動を覚えたのは〈秋冬山水図〉の「冬景」においてでした。何によるのか解らないながら、無性に怖さを感じたのです。とにかく怖いので、少し離れたところから眺めておりました。そのうち「ああ、この片ぼかしが凄いんだな」と気づくのです。』と解説しています。
雪舟をリスペクトし、山水画独特の『遠近』を表現したインスタレーション「アウトライン アナグラム」2023年
山水画、特に雪舟の山水画は、書割(かきわり)を並べたような奥行のレイヤーが特徴的
〈アウトラインアナグラム〉は、
残念ながら、撮影禁止…細い通路を暗がりに向かって進むと、空間を切り取った窓からすだれごしに展望がひらけ、遙かに奇なる岩山がそびえる。眼下には、下る坂に家並みが張り付くように建っている。右に目を向けると鬱蒼とした山に反射炉のような塔が見える。
雪舟の水墨画を舞台の書割に展開したようなインスタレーション
有るようでなかった作品
とにかく、その場に行かないと
分からない空間
水墨画の中で、山水を眺める高士
になったような感じ
茶を喫しながら何時間でも
眺めていたい
〈アウトラインアナグラム〉
山口晃 東京圖 2018-2023年