ドラマのハイライトの一つは、日影茶屋事件ですね。
大杉栄は、フリーラブを説き、妻の堀保子と、妻も知る愛人の神近市子がいました。
伊藤野枝の夫、出逢った時、辻潤は女学校の英語教師で野枝は教え子だった
教師をやめた辻潤は定職につかず、世捨人のような生活をしていた
伊藤野枝は平塚らいてうから雑誌「青踏」を引き継いだが、経営難から廃刊とし、辻潤と子供をおいて離婚し、大杉の許へ走った。
そこに青踏社で同僚だった神近市子が現われ、大杉の愛人であることを知り愕然とする。
当時、神近市子は東京日日新聞の記者で大杉に経済的支援もしていた。
長崎県北松浦郡佐々村生まれ。津田女子英学塾卒。在学中に青踏社に参加する。弘前県立女学校の教師ののち、東京日日新聞の記者となった。
大杉が野枝に惹かれていくことに神近は…
私のブログ「欲望の資本主義」にあった、メラニー・クラインの「欲望」分析を思い出した。
『「羨望は、自分以外の人がなにか望ましいものをわがものとしていて、それを楽しんでいることへの怒りの感情であり―羨望による衝動は、それを奪い取るか、損なってしまうことにある」 嫉妬は、「羨望に基づいているが、少なくとも二人の人物の関係を含んでいるものであり、主に愛情に関係していて、当然自分のものだと感じていた感情が、競争者に奪い去られたか、奪い去られる危険があると感じることにある」 貪欲は、「その人が必要とする以上のもの、相手も与えることができ、与えようと思っている以上のものを望む、激しいあくことを知らぬ渇望である」』
「嫉妬」から激しい「羨望」(羨望による衝動は、それを奪い取るか、損なってしまう)に繋がった。
1916年、葉山にある日影茶屋で、神近市子は大杉栄の首を短剣で刺し重症を負わせる。
神近市子は、傷害罪で懲役2年の実刑判決を受けた。
2年の刑期を終えて八王子刑務所を出た神近を出迎えたのは、童話作家の秋田雨雀と盲目のロシア(ウクライナ)詩人ヴァスィリー・エロシェンコだった。
二人とも「中村屋文化サロン」の仲間だった。
エロシェンコは、中村彝(つね)の絵画で有名です
エロシェンコは、神近市子に恋い焦がれていたが、市子は大杉栄に夢中で、エロシェンコが国外追放されるまで振り向くことはなかった。
相馬黒光 中村屋文化サロン
中村彝
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市子は出獄後、『女人芸術』に参加して寄稿したほか『婦人文芸』を創刊して文筆活動を開始した。
また生活面では、近衛文麿、子飼いの反共テロリスト中溝多摩吉(防共護国団)の二号さんだった。
1953年左派社会党から出馬し衆議院議員に初当選した。
その後も、日本社会党から出馬して衆議院議員を5期務め、女性の地位向上、売春防止法の成立などに尽力した。
自らの日影茶屋事件を題材にした
1981年、93歳で波乱の生涯
を終えた。
戦後、価値感の大転換が
あったとはいえ、
不倫・傷害事件を起こして
服役した女性が、
衆議院選挙で5回も当選するとは、
現在の羨望、嫉妬が渦巻く、
現代のSNS不寛容社会では
考えられませんね…
つづく