さすがのアーモンドアイにも死角があったという事か
追い切りも抜群だったし、当日の気配にも問題なく、返し馬の入りもすんなりだったこの馬が・・・
_______________________________________________以下引用記事
有馬記念に起きた誤算…なぜ大本命アーモンドアイが9着に沈み2番人気のリスグラシューが勝ったのか?
師走の風物詩、第64回有馬記念(G1、芝2500メートル)が22日、千葉県船橋市の中山競馬場で行われ、単勝1・5倍と断然の1番人気だったアーモンドアイ(牝4歳、美浦・国枝厩舎)がまさかの9着に惨敗。ここが引退レースだった2番人気のリスグラシュー(牝5歳、栗東・矢作厩舎)が突き抜けて5馬身差で圧勝した。ファン投票でも人気を分け合った名牝対決。なぜ、この差が生まれたか。
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想定外の地点でスイッチが入った
中山競馬場に詰め掛けた競馬ファンはその瞬間、声を失った。断然人気のアーモンドアイが馬群に沈む。予想だにしないシーンに悲鳴が交錯した。
「茫然自失です」
ファン投票第1位の期待に応えようと送り出した国枝栄調教師も自信を持っていただけにショックは隠しきれなかった。
ひき上げて来たクリストフ・ルメール騎手も顔色を失っていた。14年前にハーツクライに騎乗し、大本命のディープインパクトを沈める大金星。その後も12戦して実に2勝、2着4回と連対率50%と得意にしていた有馬の舞台で9着に沈むとは頭の片隅にもない結末だったに違いない。
「フィジカルは大丈夫だったけど、馬のリズムが良くなかった。これも競馬です」
スタートして500メートルほど進んだあたりで誤算が生じた。ある意味、5枠9番の中枠がアダになったかもしれない。好スタートを決めたアーモンドアイは機をうかがい、馬群の中に潜り込もうとしたが、スペースがなく、やむなくそのまま外め8番手を追走した。レースは外枠からアエロリットが1000メートル通過58秒5と飛ばしたことで縦長の展開になったが、隊列が決まり、内に入る機会を失った。フィエールマンの後ろにいたが、ルメール騎手は外へ出した。
「いいスタートを切り、見た目はいい感じだった。フィエールマンの後ろにいたが、ごちゃっとして外に出したらスイッチが入っちゃったみたい。反応がいい馬だから行っちゃった」と国枝調教師。
折り合いを欠き、前が開いたことでアーモンドアイは、ここが勝負だと錯覚して行ってしまったのだ。抑えようとするルメール騎手との間で”ノッキング”が起きた。一度、先頭に立ったが、直線で失速した。ルメール騎手は言う。
「1周目スタンドで冷静に走れませんでした。スイッチが入ってしまった。2500メートルでリラックスして走れなかったら最後は疲れてしまいます。アーモンドアイも同じ。最後は疲れてしまいました」
前半の位置取りでストレスが溜まり、結果的に外々を回る形になってスタミナを温存することもできなかった。それらが最後の失速につながった。
3世代の菊花賞馬が3、4、5着に来ているように結果的に血統的に「スタミナ勝負」となったこともアーモンドアイにはマイナスだったのかもしれない。
レース前から大本命のアーモンドアイに不安がなかったわけではなかった。久々の右回り。そこへもってきて今回は初めての中山コース。スタート直後を含め、コーナーが6回あるトリッキーな2500メートル戦は、レースの流れ次第ではスタミナや底力も要求される。ましてや、トップホースが集結する頂上決戦。今年は実に11頭のG1馬が参戦しており、ポジション争いを含め、レース中のプレッシャーも強く、決して簡単な展開のレースにはならないとみられていた。それでも1番人気に支持された理由に、今年も猛威を振るうノーザンファームの生産馬という点もあったのかもしれない。
ディープインパクト(05年2着、06年1着)をはじめ、ブエナビスタ(09年、10年ともに2着)、サトノダイヤモンド(16年1着)、レイデオロ(18年2着)など有馬記念で1番人気に支持されたノーザンファーム生産馬は信頼度抜群。「シルク」「国枝」のブランド力も人気を後押しした。今回のアーモンドアイは、発熱(微熱)明けだったとはいえ、体調管理や調教技術の向上により、そんな不安も吹き飛ばしてくれると、多くの競馬ファンは結論づけたのではないか。だが、競馬は生き物。どんな誤算が起きるかわからないのだ。
対照的だったのが勝ったリスグラシューだ。間にヴェロックスを挟んで、アーモンドアイを少し前にみる位置取り。3枠6番という好枠を生かし切り、内で脚をためた。
殊勲のダミアン・レーン騎手は「ペースが速いと感じていたので、ポジションにこだわるよりもリズム良く走れることを重視した。4コーナーの手応えも抜群。反応も素晴らしかった」と振り返った。
折り合いをつけ、インで脚をためると直線は外へ出して一気に差し切った。衝撃の5馬身差。これぞ、成長力に富んだ父ハーツクライの血の威力か。
矢作芳人調教師は「5歳の暮れにしてさらに進化していると感じていましたが、自分の目に間違いはなかった」と目尻を下げた。これでJRA賞の年度代表馬も確定的となり「やはり格別。一生に一度は取ってみたい。リスグラシューにはありがとうの言葉以外にありません。史上稀に見る名牝だと思います」と愛馬をたたえた。
最終調整では、坂路でハードな併せ馬を消化した。800メートル51秒3、ラスト200メートル12秒3という究極の仕上げを施したことも大団円につながったのかもしれない。