「……」と、サトルは首を振りました。「途中、樹王言っていた魔獣に襲われたんだ。でも、この子犬が助けてくれたんだ。この子がいなかったら、帰ってこられなかったかもしれない」
サトルは、うれしそうにこちらを見ている子犬の頭を、わしゃわしゃとなで回しました。
「ありがとうね」
と、サトルは、樹王の根元でうずくまっているリリの様子に気がつきました。
「――どうしたんだろう。あんなにうれしそうに走ってたのに」と、サトルは心配でリリをのぞき込みました。「わからないけど、泣いてるみたいだ」
「サトル……」
と、樹王が、太い根の陰にうずくまっているリリを見ながら、重々しい声で言いました。「おまえがやって来た異世界へ戻るには……この娘の力が必要だ。ドリーブランド広しといえども……異世界に足を運ぶことができた者は、リリ一人だけだ……この娘をどうにかして元の姿に戻すのだ。そうすれば……必ずおまえは異世界へ帰る事ができる。この娘を連れて行ってやってくれ……ワシの頼みだ」
樹王が目を伏せました。その目には、キラッと光るものが溢れているようでした。
「でも……ぼくは、ぼくはどこにも連れて行く事なんて――」
「できる!」と、樹王が目を見開いて、言いました。「もっと自分を信じるんだ。おまえはもう、こんな所にいる必要はない……。早く落ちてきたところへ、戻るのだ……」
樹王は言うと、自分の体を激しく震わせ、一枚の青々とした葉を取ると、サトルに渡しました。
「これは……?」と、サトルが言いました。
「それは……ここから別の世界へ行く際に……その者の力になってくれる葉だ」と、樹王が言いました。「それを持っていれば……どんな者でも……やって来た世界へ戻る事ができる……ただし……行きたい世界に意識を集中して……自分が心からそこへ行きたい、と願う事ができればだ。それさえできたなら……その葉は力を発揮して、一瞬に目的の場所へ運んで行ってくれるはずだ……」
手にした葉っぱを見つめたサトルは、樹王の話を、うなずきながら聞いていました。樹王がくれた葉っぱは、一見すると、どこにでもある木の葉のようでしたが、よく見ると、神々しい光を放っているように感じました。もっとよく見ると、なんだかとっても勇気が湧いてくるような気がしました。
サトルは、樹王に言いました。
「――ぼく、やってみます。なんとかリリを助けて、ぼくのやって来た世界に帰ります」
「よし……。そうだ……天馬はまだ帰ってないようだな……ちょっと待て……今ワシが呼んでやる」と、樹王は言うと、ピーッと甲高い口笛を、空に向けて吹きました。
と、だんだん白けてくる東の空の彼方から、ヒヒーンという嘶きが聞こえてきました。と思う間もなく、額に角を生やした天馬が、大きな翼を羽ばたかせて、まっしぐらにこちらに向かって来ました。
サトルは、うれしそうにこちらを見ている子犬の頭を、わしゃわしゃとなで回しました。
「ありがとうね」
と、サトルは、樹王の根元でうずくまっているリリの様子に気がつきました。
「――どうしたんだろう。あんなにうれしそうに走ってたのに」と、サトルは心配でリリをのぞき込みました。「わからないけど、泣いてるみたいだ」
「サトル……」
と、樹王が、太い根の陰にうずくまっているリリを見ながら、重々しい声で言いました。「おまえがやって来た異世界へ戻るには……この娘の力が必要だ。ドリーブランド広しといえども……異世界に足を運ぶことができた者は、リリ一人だけだ……この娘をどうにかして元の姿に戻すのだ。そうすれば……必ずおまえは異世界へ帰る事ができる。この娘を連れて行ってやってくれ……ワシの頼みだ」
樹王が目を伏せました。その目には、キラッと光るものが溢れているようでした。
「でも……ぼくは、ぼくはどこにも連れて行く事なんて――」
「できる!」と、樹王が目を見開いて、言いました。「もっと自分を信じるんだ。おまえはもう、こんな所にいる必要はない……。早く落ちてきたところへ、戻るのだ……」
樹王は言うと、自分の体を激しく震わせ、一枚の青々とした葉を取ると、サトルに渡しました。
「これは……?」と、サトルが言いました。
「それは……ここから別の世界へ行く際に……その者の力になってくれる葉だ」と、樹王が言いました。「それを持っていれば……どんな者でも……やって来た世界へ戻る事ができる……ただし……行きたい世界に意識を集中して……自分が心からそこへ行きたい、と願う事ができればだ。それさえできたなら……その葉は力を発揮して、一瞬に目的の場所へ運んで行ってくれるはずだ……」
手にした葉っぱを見つめたサトルは、樹王の話を、うなずきながら聞いていました。樹王がくれた葉っぱは、一見すると、どこにでもある木の葉のようでしたが、よく見ると、神々しい光を放っているように感じました。もっとよく見ると、なんだかとっても勇気が湧いてくるような気がしました。
サトルは、樹王に言いました。
「――ぼく、やってみます。なんとかリリを助けて、ぼくのやって来た世界に帰ります」
「よし……。そうだ……天馬はまだ帰ってないようだな……ちょっと待て……今ワシが呼んでやる」と、樹王は言うと、ピーッと甲高い口笛を、空に向けて吹きました。
と、だんだん白けてくる東の空の彼方から、ヒヒーンという嘶きが聞こえてきました。と思う間もなく、額に角を生やした天馬が、大きな翼を羽ばたかせて、まっしぐらにこちらに向かって来ました。