「おい、しっかりしろ……」と、風博士が心配そうに言いました。
「サトル……」と、リリは細い眉をひそめて、心配そうに言いました。
「――わかったわかった、わかった」と、風博士は頷きながら、二人に言いました。「君達が本当に、異世界のことを尋ねに来たのはわかった。まぁ、君が異人だというのは……うん、認めるとしよう。でもすまないが、私には異世界に行く方法など、考えもつかん。――すまんないが」
「わかりました……仕方ありません――」と、サトルは震えながら立ち上がると、言いました。そして、リリににっこりと笑顔を見せると、風博士にお礼を言い、螺旋階段へ、重たい足取りで歩いて行きました。
「本当に……すまないけど……」と、風博士は、がっくりと肩を落として帰って行く二人に、申し訳なさそうに言いました。
二人の姿が、階段の下へ消えてしまうと、突然天体観測所の壁にある赤いランプが点灯し、けたたましい音を鳴らし始めました。
振り返った風博士は点灯したランプを見ると、あわてて向き直り、二人が降りていった階段を、追いかけるように駆け下りていきました。
風博士は、肩を落としている二人には目もくれず、研究室に置かれた、なにやら細々としたスイッチや、色とりどりのゲージがついた装置の前に座りました。
耳にヘッドホンを被せた風博士は、まるでピアノを奏でるような身振りで、
「――ウン、ウン」
と頷きながら、紙にペンを走らせました。
サトルとリリは、なにか大事件でも起こったのか、と黙って風博士を見守っていました。
「ふうー……」
風博士は椅子の背にもたれかかると、ヘッドホンをはずしてため息をつきました。と、思い出したように、急いでペンを走らせていた紙を取り、声を出して読み上げました。
「円盤ムシ……魔笛の谷……深き空の峡谷……善処せり……」と、風博士は言うと、思い出したように笑い出しました。「ハッハッハッ、やっと見つけたぞ……今度こそこの目で確かめてやる」
立ち上がった風博士は、黙って見守っていた二人を見ると、今はじめて気がついたように、ビックリして動きを止めました。
「やあ……君達、まだいたのか」
風博士は、なんだか急に気分がよくなって、今日はもう遅いから泊まっていきなさい、と言うと、温かな料理を二人にごちそうしてくれました。
食事の後、温かい火の焚かれた居間でくつろいでいると、風博士は二人に、自分自身のことと、先ほどの通信のことを話してくれました。
「サトル……」と、リリは細い眉をひそめて、心配そうに言いました。
「――わかったわかった、わかった」と、風博士は頷きながら、二人に言いました。「君達が本当に、異世界のことを尋ねに来たのはわかった。まぁ、君が異人だというのは……うん、認めるとしよう。でもすまないが、私には異世界に行く方法など、考えもつかん。――すまんないが」
「わかりました……仕方ありません――」と、サトルは震えながら立ち上がると、言いました。そして、リリににっこりと笑顔を見せると、風博士にお礼を言い、螺旋階段へ、重たい足取りで歩いて行きました。
「本当に……すまないけど……」と、風博士は、がっくりと肩を落として帰って行く二人に、申し訳なさそうに言いました。
二人の姿が、階段の下へ消えてしまうと、突然天体観測所の壁にある赤いランプが点灯し、けたたましい音を鳴らし始めました。
振り返った風博士は点灯したランプを見ると、あわてて向き直り、二人が降りていった階段を、追いかけるように駆け下りていきました。
風博士は、肩を落としている二人には目もくれず、研究室に置かれた、なにやら細々としたスイッチや、色とりどりのゲージがついた装置の前に座りました。
耳にヘッドホンを被せた風博士は、まるでピアノを奏でるような身振りで、
「――ウン、ウン」
と頷きながら、紙にペンを走らせました。
サトルとリリは、なにか大事件でも起こったのか、と黙って風博士を見守っていました。
「ふうー……」
風博士は椅子の背にもたれかかると、ヘッドホンをはずしてため息をつきました。と、思い出したように、急いでペンを走らせていた紙を取り、声を出して読み上げました。
「円盤ムシ……魔笛の谷……深き空の峡谷……善処せり……」と、風博士は言うと、思い出したように笑い出しました。「ハッハッハッ、やっと見つけたぞ……今度こそこの目で確かめてやる」
立ち上がった風博士は、黙って見守っていた二人を見ると、今はじめて気がついたように、ビックリして動きを止めました。
「やあ……君達、まだいたのか」
風博士は、なんだか急に気分がよくなって、今日はもう遅いから泊まっていきなさい、と言うと、温かな料理を二人にごちそうしてくれました。
食事の後、温かい火の焚かれた居間でくつろいでいると、風博士は二人に、自分自身のことと、先ほどの通信のことを話してくれました。