「私がなぜ風博士と言われているのかというと、それは私が、風が運んでくる情報を受信して、私達がわかる言葉に組み直すことができるからなんだ。
それは、まだ私が若い頃に発見した事なんだが、この二階にあるたくさんの装置は、そのための機械なんだ。風の話を聞くには、風がたくさん吹いてくる場所の方が都合がいい。それで私は、こんなへんぴな所に引っ越してきたんだよ。
でもね、ここの風は、私がいつも受信していると、時たま目を疑うようなことを言いだすんだ。それが、さっき来た情報なんだが、円盤ムシという、まだ誰一人として見た事がない幻のムシの事なんだ……。
そいつはどうもおかしくてなぁ、風にもつかまらない時があるらしいんだ。言ってみれば、それはドリーブランドの外に出て、宇宙を飛んでいる、という事になるんだ……」
風博士はそこまで言うと、急に物思いにふけるように静かに天を仰ぎ、深々と椅子に体をあずけました。サトルとリリは、風博士の話を真剣に聞いていましたが、博士が黙ってしまうと、リリがぽつりと言いました。
「……そのムシに、サトルが乗ればいいのに……」
サトルは、ふっとリリの顔を見ました。サトルも、そうだったらいいのにな、と思っていたのでした。
「なんだって、ムシに乗る?」と、博士が大きな声で言いました。
二人はビックリして、椅子から飛び上がりそうになりながら、いきなり大声を出した博士を見ました。
「きみ、ムシに……ムシになんか、乗れるのかね」と、博士が震える声で言いました。
「はい」と、リリが笑顔で言いました。「――でも、もうずっと前ですけど」
リリが言うと、風博士は信じられないというように、うつむいてワナワナと頭を抱えました。
「――そうか、あれだ」と、風博士は不意に立ち上がると、二階の研究室に向かっていきました。
どうしたんだろう、と階段を見ながら待っていると、ドタンガタンとなにやらぶつかりあう音がして、白いホコリを頭から被った博士が、急いで階段を降りてきました。
「どうか、したんですか?」と、サトルが聞きました。
「わかったんだよ、ムシのことが。そう……それに君のことだ。……ガッチ君という人から、風に言づけされたものだけどね……」
「――えっ」と、サトルは風博士が渡した紙を手に取ると、ガッチからと聞いて、さっそく読んでみました。それには、“サトル、ドリーブランドに落ちてきた異人。ハカセ、助けてやってくれ……”と、短いでしたが、サトルにも読める文字で、確かに書いてありました。
「ガッチ……ありがとう――」
「――ムシはな、やはり古代人の乗り物であったらしい……リリさんの言ったとおり、あのムシには人が乗れるんだ」サトルが、ガッチからの言づてを読み終えて顔を上げると、博士が、興奮した顔でムシについて話してくれました。「――だからサトル君、君も、自分の住んでいた世界へ帰れるんだよ……私もなんだが、無性にやる気が出てきたぞ!」
それは、まだ私が若い頃に発見した事なんだが、この二階にあるたくさんの装置は、そのための機械なんだ。風の話を聞くには、風がたくさん吹いてくる場所の方が都合がいい。それで私は、こんなへんぴな所に引っ越してきたんだよ。
でもね、ここの風は、私がいつも受信していると、時たま目を疑うようなことを言いだすんだ。それが、さっき来た情報なんだが、円盤ムシという、まだ誰一人として見た事がない幻のムシの事なんだ……。
そいつはどうもおかしくてなぁ、風にもつかまらない時があるらしいんだ。言ってみれば、それはドリーブランドの外に出て、宇宙を飛んでいる、という事になるんだ……」
風博士はそこまで言うと、急に物思いにふけるように静かに天を仰ぎ、深々と椅子に体をあずけました。サトルとリリは、風博士の話を真剣に聞いていましたが、博士が黙ってしまうと、リリがぽつりと言いました。
「……そのムシに、サトルが乗ればいいのに……」
サトルは、ふっとリリの顔を見ました。サトルも、そうだったらいいのにな、と思っていたのでした。
「なんだって、ムシに乗る?」と、博士が大きな声で言いました。
二人はビックリして、椅子から飛び上がりそうになりながら、いきなり大声を出した博士を見ました。
「きみ、ムシに……ムシになんか、乗れるのかね」と、博士が震える声で言いました。
「はい」と、リリが笑顔で言いました。「――でも、もうずっと前ですけど」
リリが言うと、風博士は信じられないというように、うつむいてワナワナと頭を抱えました。
「――そうか、あれだ」と、風博士は不意に立ち上がると、二階の研究室に向かっていきました。
どうしたんだろう、と階段を見ながら待っていると、ドタンガタンとなにやらぶつかりあう音がして、白いホコリを頭から被った博士が、急いで階段を降りてきました。
「どうか、したんですか?」と、サトルが聞きました。
「わかったんだよ、ムシのことが。そう……それに君のことだ。……ガッチ君という人から、風に言づけされたものだけどね……」
「――えっ」と、サトルは風博士が渡した紙を手に取ると、ガッチからと聞いて、さっそく読んでみました。それには、“サトル、ドリーブランドに落ちてきた異人。ハカセ、助けてやってくれ……”と、短いでしたが、サトルにも読める文字で、確かに書いてありました。
「ガッチ……ありがとう――」
「――ムシはな、やはり古代人の乗り物であったらしい……リリさんの言ったとおり、あのムシには人が乗れるんだ」サトルが、ガッチからの言づてを読み終えて顔を上げると、博士が、興奮した顔でムシについて話してくれました。「――だからサトル君、君も、自分の住んでいた世界へ帰れるんだよ……私もなんだが、無性にやる気が出てきたぞ!」