博士は、リリが話すのを、なにか言いたげに、口をパクパクさせながら聞いていました。すると、リリの真剣さに心が動かされたのか、博士は二人を、二階に案内してくれました。
博士が二人を連れてきたのは、どうやら研究室のようでした。なにやらたくさんの機械や、様々な色の試験管、それに、なにやら薬品の入ったたくさんのビンなど、それこそありとあらゆる実験器具がそろっているようでした。
「さぁ、こっちだ……」風博士は、さらに二人を上の階に案内しました。サトルとリリは、人一人がやっと立っていられるような狭い螺旋階段を上り、なにやら薄暗い部屋にやって来ました。
「――ここは、なんの部屋ですか」と、サトルが言いました。
「ここは、わたしの天体観測所だ」と、風博士は言うと、ギイーンという音と共に、天井がゆっくりと左右に開いていきました。星明かりに照らされた部屋には、大きな望遠鏡が据えられていました。風博士は、二人が天体望遠鏡をめずらしそうに見ている間に、急がしく観測所の中を行ったり来たりしていましたが、
「よし、できた!」
と言うと、二人を望遠鏡から遠ざけ、レンズを覗きこむと、なにやらブツブツと言いながら、望遠鏡を動かしました。
「――よし、さぁ、覗いてみなさい」と、風博士が言いました。
サトルは、リリと顔を見合わせましたが、風博士が手招きするまま望遠鏡に近づいていくと、レンズに目を近づけました。
「うわー、きれいだなぁ」と、サトルは感激して言いました。サトルの目の前には、たくさんの星が散らばっていました。赤く光るものや、青く光るもの。そしてドーナツの形をしたものや、まぶしくて見てはいられないものなど、それこそいろんな種類の星達が、まるで生き物のように写っていました。
「きれいですね……」と、サトルは、しきりに感嘆を洩らしながら言いました。
「どうだ……君の星はあるかね?」
風博士は言うと、サトルは今まで出ていた笑い声をピタリと止め、恐る恐る風博士を振り返りました。
「ぼくの星って……異世界っていうのは、宇宙のことだったんですか……?」と、サトルは、信じられないように言うと、望遠鏡に寄りかかりました。
「ぼくの住んでいたのは……地球……。地球です」と、サトルは言いました。
「――地球?」と、風博士は首を傾げて言いました。
サトルは、わなわなと震えて、望遠鏡から離れると、観測所の隅にしつらえてある本棚へ、駆け出しました。
「――おい」と、風博士は乱暴に本を投げ散らかすサトルを止めようとしましたが、我を忘れたようなサトルの勢いに言葉を失い、ただ黙って、見守っていました。
「ないないないない! ぼくの知ってる星の写真が……一枚も、ない――」と、サトルは本棚の本を片っぱしから引っ張り出して見ると、言いました。そして、震えた表情をちらりと見せたかと思うと、散らばった本の上に崩れるように、へたりこんでしまいました。
博士が二人を連れてきたのは、どうやら研究室のようでした。なにやらたくさんの機械や、様々な色の試験管、それに、なにやら薬品の入ったたくさんのビンなど、それこそありとあらゆる実験器具がそろっているようでした。
「さぁ、こっちだ……」風博士は、さらに二人を上の階に案内しました。サトルとリリは、人一人がやっと立っていられるような狭い螺旋階段を上り、なにやら薄暗い部屋にやって来ました。
「――ここは、なんの部屋ですか」と、サトルが言いました。
「ここは、わたしの天体観測所だ」と、風博士は言うと、ギイーンという音と共に、天井がゆっくりと左右に開いていきました。星明かりに照らされた部屋には、大きな望遠鏡が据えられていました。風博士は、二人が天体望遠鏡をめずらしそうに見ている間に、急がしく観測所の中を行ったり来たりしていましたが、
「よし、できた!」
と言うと、二人を望遠鏡から遠ざけ、レンズを覗きこむと、なにやらブツブツと言いながら、望遠鏡を動かしました。
「――よし、さぁ、覗いてみなさい」と、風博士が言いました。
サトルは、リリと顔を見合わせましたが、風博士が手招きするまま望遠鏡に近づいていくと、レンズに目を近づけました。
「うわー、きれいだなぁ」と、サトルは感激して言いました。サトルの目の前には、たくさんの星が散らばっていました。赤く光るものや、青く光るもの。そしてドーナツの形をしたものや、まぶしくて見てはいられないものなど、それこそいろんな種類の星達が、まるで生き物のように写っていました。
「きれいですね……」と、サトルは、しきりに感嘆を洩らしながら言いました。
「どうだ……君の星はあるかね?」
風博士は言うと、サトルは今まで出ていた笑い声をピタリと止め、恐る恐る風博士を振り返りました。
「ぼくの星って……異世界っていうのは、宇宙のことだったんですか……?」と、サトルは、信じられないように言うと、望遠鏡に寄りかかりました。
「ぼくの住んでいたのは……地球……。地球です」と、サトルは言いました。
「――地球?」と、風博士は首を傾げて言いました。
サトルは、わなわなと震えて、望遠鏡から離れると、観測所の隅にしつらえてある本棚へ、駆け出しました。
「――おい」と、風博士は乱暴に本を投げ散らかすサトルを止めようとしましたが、我を忘れたようなサトルの勢いに言葉を失い、ただ黙って、見守っていました。
「ないないないない! ぼくの知ってる星の写真が……一枚も、ない――」と、サトルは本棚の本を片っぱしから引っ張り出して見ると、言いました。そして、震えた表情をちらりと見せたかと思うと、散らばった本の上に崩れるように、へたりこんでしまいました。