9
「うわっ! まぶしい――」
サトルは、天馬に乗って、もくもくと立ちこめる厚い雲から抜け出しました。すると、そのあまりのまぶしさに、思わず声を上げてしまいました。サトルの腰に手を回しているリリは、閉じられない目のために、サトルよりもまぶしかったらしく、サトルが息苦しくなるほど、ぎゅっと力を入れてしがみつきました。
目が慣れてくると、サトルは自分達の下に、黄色い砂ではなく、青々とした緑が広がっているのに気がついて、胸を躍らせました。
「――見て、リリ。ぼく達、砂漠から出られたんだよ」と、サトルは興奮気味に言いました。
リリも、青々と広がる緑に気がついて、サトルと顔を見合わせ、笑う事こそできませんでしたが、たったひとつの目に、こぼれ落ちそうなほど星をちりばめました。
「おおーっ、タ……タ」と、浮かれすぎたサトルが、がくん、とバランスを崩しました。
天馬は、サトルがよろけたことに気がつきましたが、風を切るほどスピードが出ていたため、うまく支えることができず、サトルは天馬の背から転がるように、真っ逆さまに落ちてしまいました。
「うわー……」と、サトルは、空中で手足をバタバタさせてもがきました。
ヒヒーン……と、翼を返した天馬が、サトルを必死で追いかけました。
やっとのことで、天馬は勢いをつけて落ちるサトルに追いつきましたが、サトルは、気を失いかけていました。
天馬と並んだサトルの目はうつろで、前後左右の方向感覚も、なくしかけていました。
「だ、れ……」
と、空を落ちていくサトルは、細い木の腕を伸ばしているリリを見て言いました。
気を失いかけているサトルは、なぜかきれいな天使が、自分を迎えに来たのだと感じ、ゆっくりとリリに手を伸ばしました。
リリは、サトルの手をしっかりつかまえると、天馬の背に引っ張りあげました。
天馬は、サトルが背中に乗った事を確かめると、地上に落ちるぎりぎりで、空に駆けのぼりました。あっという間に空高く舞い上がった天馬は、すぐ近くにある森の中に、小さな二階建ての小屋を見つけると、翼を返して降下を始めました。
――……
「――ん?」と、サトルは誰かがしきりに体をつつくのを感じて、ゆっくりと目を開きました。
「うわっ! まぶしい――」
サトルは、天馬に乗って、もくもくと立ちこめる厚い雲から抜け出しました。すると、そのあまりのまぶしさに、思わず声を上げてしまいました。サトルの腰に手を回しているリリは、閉じられない目のために、サトルよりもまぶしかったらしく、サトルが息苦しくなるほど、ぎゅっと力を入れてしがみつきました。
目が慣れてくると、サトルは自分達の下に、黄色い砂ではなく、青々とした緑が広がっているのに気がついて、胸を躍らせました。
「――見て、リリ。ぼく達、砂漠から出られたんだよ」と、サトルは興奮気味に言いました。
リリも、青々と広がる緑に気がついて、サトルと顔を見合わせ、笑う事こそできませんでしたが、たったひとつの目に、こぼれ落ちそうなほど星をちりばめました。
「おおーっ、タ……タ」と、浮かれすぎたサトルが、がくん、とバランスを崩しました。
天馬は、サトルがよろけたことに気がつきましたが、風を切るほどスピードが出ていたため、うまく支えることができず、サトルは天馬の背から転がるように、真っ逆さまに落ちてしまいました。
「うわー……」と、サトルは、空中で手足をバタバタさせてもがきました。
ヒヒーン……と、翼を返した天馬が、サトルを必死で追いかけました。
やっとのことで、天馬は勢いをつけて落ちるサトルに追いつきましたが、サトルは、気を失いかけていました。
天馬と並んだサトルの目はうつろで、前後左右の方向感覚も、なくしかけていました。
「だ、れ……」
と、空を落ちていくサトルは、細い木の腕を伸ばしているリリを見て言いました。
気を失いかけているサトルは、なぜかきれいな天使が、自分を迎えに来たのだと感じ、ゆっくりとリリに手を伸ばしました。
リリは、サトルの手をしっかりつかまえると、天馬の背に引っ張りあげました。
天馬は、サトルが背中に乗った事を確かめると、地上に落ちるぎりぎりで、空に駆けのぼりました。あっという間に空高く舞い上がった天馬は、すぐ近くにある森の中に、小さな二階建ての小屋を見つけると、翼を返して降下を始めました。
――……
「――ん?」と、サトルは誰かがしきりに体をつつくのを感じて、ゆっくりと目を開きました。