サトル達は次の日、一路円盤ムシを目指して、魔笛の谷のさらに奥、ドリーブランドの局地と呼ばれる深き空の峡谷へ、向かいました。
サトルとリリは、天馬に跨がり、風博士は、天馬に引かせる簡単な馬車を天馬に繋ぎ、それに乗りこみました。
朝早くから、風博士の研究所を発った三人は、それこそ風よりも速く走る天馬のおかげで、昼の少し前には、渓谷のすぐ近くにまで飛んで来るとことができました。その辺りまで来ると、風博士が、大きな背負い袋からなにやら取り出し、風の情報収集をしきりにやっているようでした。サトルは、必ず円盤ムシに会えるようにと、まだ見たこともない幻のムシに、心の中で祈りました。
渓谷は、魔笛の谷とは違い、切り立った岩山に囲まれてはいませんでしたが、地面を真っ二つに裂いてできたような広大なその谷は、空から見下ろしても、底が真っ暗でなにも見えないくらい深いものでした。
「よし、ここから下へ降りるんだ――」と、風博士が、耳にヘッドホンを当てながら言いました。
「はい、博士」
天馬は馬首を傾けると、ぐんぐんと加速しながら深き空の峡谷に入りこんでいきました。しかし、どれだけ天馬が空を駆けても、いっこうに底は見えず、とうとう、お日様の光がまったく届かない所まで、来てしまいました。
と、天馬がいきなり回れ右をして、上昇を始めました。谷の底に広がる深い闇が、天馬を恐れさせたようでした。
「どうしたんだ、サトル君!」
「わかりません! 急に上昇し始めたんです……」と、サトルはなんとか天馬に言うことを聞かせようと、必死で手綱を操りながら言いました。
「うーん……しかたあるまい」と、風博士が残念そうに言いました。「戻りすぎないうちに、天馬を止めるんだ。そこからは、私達だけで行こう……」
「――はい!」サトルは、わかりました、と言うと、天馬をなんとか操りながら、テーブルのようにせり出した広い場所に、天馬を着地させました。
「ここからは、サトル君と私で行く。リリさんは、ここで天馬を見ていてくれたまえ……」
風博士は言うと、袋を背負い、ロープを肩に巻いて、さらに深い所へと、降りていきました。サトルも、リリに「行ってくるからね……」と言うと、リリが見守っている中、風博士に続いて、深い谷へ降りて行きました。
――――……
「サトル君……ちょっと待ってくれ……」と、風博士が、少し広まった所にさしかかると、言いました。
「どうか、したんですか――」と、サトルは、ハァハァ息をつきながら、額を拭いつつ言いました。
「ちょっと、待ってくれたまえ……風の通信を受けてみるから――」
風博士は、背中の荷物を地面におろすと、中から機械を取り出し、ヘッドホンを耳にあてると、風の吹いてくる方向を探して、幾度も場所を変えながら、風の声を聞いていました。
サトルとリリは、天馬に跨がり、風博士は、天馬に引かせる簡単な馬車を天馬に繋ぎ、それに乗りこみました。
朝早くから、風博士の研究所を発った三人は、それこそ風よりも速く走る天馬のおかげで、昼の少し前には、渓谷のすぐ近くにまで飛んで来るとことができました。その辺りまで来ると、風博士が、大きな背負い袋からなにやら取り出し、風の情報収集をしきりにやっているようでした。サトルは、必ず円盤ムシに会えるようにと、まだ見たこともない幻のムシに、心の中で祈りました。
渓谷は、魔笛の谷とは違い、切り立った岩山に囲まれてはいませんでしたが、地面を真っ二つに裂いてできたような広大なその谷は、空から見下ろしても、底が真っ暗でなにも見えないくらい深いものでした。
「よし、ここから下へ降りるんだ――」と、風博士が、耳にヘッドホンを当てながら言いました。
「はい、博士」
天馬は馬首を傾けると、ぐんぐんと加速しながら深き空の峡谷に入りこんでいきました。しかし、どれだけ天馬が空を駆けても、いっこうに底は見えず、とうとう、お日様の光がまったく届かない所まで、来てしまいました。
と、天馬がいきなり回れ右をして、上昇を始めました。谷の底に広がる深い闇が、天馬を恐れさせたようでした。
「どうしたんだ、サトル君!」
「わかりません! 急に上昇し始めたんです……」と、サトルはなんとか天馬に言うことを聞かせようと、必死で手綱を操りながら言いました。
「うーん……しかたあるまい」と、風博士が残念そうに言いました。「戻りすぎないうちに、天馬を止めるんだ。そこからは、私達だけで行こう……」
「――はい!」サトルは、わかりました、と言うと、天馬をなんとか操りながら、テーブルのようにせり出した広い場所に、天馬を着地させました。
「ここからは、サトル君と私で行く。リリさんは、ここで天馬を見ていてくれたまえ……」
風博士は言うと、袋を背負い、ロープを肩に巻いて、さらに深い所へと、降りていきました。サトルも、リリに「行ってくるからね……」と言うと、リリが見守っている中、風博士に続いて、深い谷へ降りて行きました。
――――……
「サトル君……ちょっと待ってくれ……」と、風博士が、少し広まった所にさしかかると、言いました。
「どうか、したんですか――」と、サトルは、ハァハァ息をつきながら、額を拭いつつ言いました。
「ちょっと、待ってくれたまえ……風の通信を受けてみるから――」
風博士は、背中の荷物を地面におろすと、中から機械を取り出し、ヘッドホンを耳にあてると、風の吹いてくる方向を探して、幾度も場所を変えながら、風の声を聞いていました。