サトルの胸に、リリのことを心から心配している、樹王の顔が浮かびました。
「――リリ」サトルが、強い口調で言いました。「リリ、やめろ! そんなことしたら、今度こそ砂になっちゃうじゃないか」
サトルは、リリの手を無理矢理引き離しました。みるみるうちに、周りの景色が元に戻り始めました。リリは、目にいっぱい涙をためて、ベッドに突っ伏してしまいました。
「ごめんなさい……わたしが悪いの……。わたしが弱いばっかりに……」と、リリは時折むせ返りながら、言いました。
「いいんだよ。もうぼくはいいんだ。また明日から、働きに出るよ……もうぼくはいいんだから……」と、サトルは、自分も鼻声になりながら言いました。
ヒュー……ッ、ヒュヒューン……。
窓の外で、しきりに風が吹いていました。
(今日は、風が強いや……)
と、サトルは目を拭いながら、外を眺めました。カタカタ、コトト……と、ガラス窓が揺れ、涼しくて気持ちのよい風が、涙を乾かしてくれそうでした。
(風さんありがとう……。みっともないよね カゼ?)
と、サトルは、ねむり王の城から、死の砂漠に落とされた時のことを思い出しました。確かあの時、サトルは砂に飲みこまれまいと必死でしたが、目の前で砂に変わっていくガッチが、何度も何度も、サトルに言っていたことがありました。
(カゼ――カゼ、ハカセ……)
「――そうだ、風博士だ」と、サトルは急に目を輝かせて、立ち上がりました。「そうだ、風博士だ。ようし、行くぞーっ!」
サトルは窓を開けっ放して、うれしそうに風を浴びました。リリは、びっくりして、涙の跡が残った顔を上げ、どうしたんだろう、とサトルを見ていました。
「リリ、風博士だよ。魔笛の谷に住んでる、風博士……そこへ行けば、ぼくが帰る方法も、見つかるかもしれない……」サトルが、リリにニッコリと笑って言いました。
「――もしそこでも、帰る方法が、見つからなかったら」と、リリが小さな声で言いました。
「……」サトルは、リリの顔を見て黙っていましたが、窓の方を振り返ると、心地のよい風を顔に受けながら、
「その時は、ぼくもドリーブランドの住人さ……」
サトルは言うと、すっと目を閉じて、心地よい風の音に、耳をすませました。
「――リリ」サトルが、強い口調で言いました。「リリ、やめろ! そんなことしたら、今度こそ砂になっちゃうじゃないか」
サトルは、リリの手を無理矢理引き離しました。みるみるうちに、周りの景色が元に戻り始めました。リリは、目にいっぱい涙をためて、ベッドに突っ伏してしまいました。
「ごめんなさい……わたしが悪いの……。わたしが弱いばっかりに……」と、リリは時折むせ返りながら、言いました。
「いいんだよ。もうぼくはいいんだ。また明日から、働きに出るよ……もうぼくはいいんだから……」と、サトルは、自分も鼻声になりながら言いました。
ヒュー……ッ、ヒュヒューン……。
窓の外で、しきりに風が吹いていました。
(今日は、風が強いや……)
と、サトルは目を拭いながら、外を眺めました。カタカタ、コトト……と、ガラス窓が揺れ、涼しくて気持ちのよい風が、涙を乾かしてくれそうでした。
(風さんありがとう……。みっともないよね カゼ?)
と、サトルは、ねむり王の城から、死の砂漠に落とされた時のことを思い出しました。確かあの時、サトルは砂に飲みこまれまいと必死でしたが、目の前で砂に変わっていくガッチが、何度も何度も、サトルに言っていたことがありました。
(カゼ――カゼ、ハカセ……)
「――そうだ、風博士だ」と、サトルは急に目を輝かせて、立ち上がりました。「そうだ、風博士だ。ようし、行くぞーっ!」
サトルは窓を開けっ放して、うれしそうに風を浴びました。リリは、びっくりして、涙の跡が残った顔を上げ、どうしたんだろう、とサトルを見ていました。
「リリ、風博士だよ。魔笛の谷に住んでる、風博士……そこへ行けば、ぼくが帰る方法も、見つかるかもしれない……」サトルが、リリにニッコリと笑って言いました。
「――もしそこでも、帰る方法が、見つからなかったら」と、リリが小さな声で言いました。
「……」サトルは、リリの顔を見て黙っていましたが、窓の方を振り返ると、心地のよい風を顔に受けながら、
「その時は、ぼくもドリーブランドの住人さ……」
サトルは言うと、すっと目を閉じて、心地よい風の音に、耳をすませました。