「ちっきしょう!」
と、サトルは言い様、博士が落としたロープを拾うと、素早く輪を作り、勢いよく空を上っていく深空魚に向かって、投げつけました。
輪を結ったロープは、空を飛ぶ黒い帯のような深空魚の胸びれに掛かり、ロープを握っているサトルを、軽々と宙に舞い上げました。
「サトル君、無理してはいかんっ――」
「博士! 今、行きます……」
サトルは、ロープを登りつめると、ちょっとでも油断すれば滑り落ちてしまいそうな深空魚の背中に、しっかりとしがみついて這い上り、博士を咥えている深空魚のあごまで、やって来ました。
「博士っ!」
「――サトル君、ここにナイフがある。これで、袋のひもを切ってくれ」
博士はポケットからナイフを出すと、手を伸ばすサトルにやっとの事で渡しました。
サトルは、博士からナイフを受け取ると、言われたとおり、袋のひもをゴシゴシと切り断ちました。
バツン――という音と共にひもが切れ、サトルは自由になった博士の手をつかむと、深空魚の背中に引き上げようとしました。しかしその途端、深空魚は急に体をねじり、博士は、サトルになにやら訴えるような視線を向けたまま、地の底の果てしのない谷に落ちていきました。
「ハカセーッ!」
あっという間に小さくなっていく博士を、しかし白い稲妻が助け上げました。それは、リリが操った天馬でした。サトルは、天馬が谷を怖がっていたのに、なぜ? と思いましたが、見ると天馬の目に、しっかりと布で目隠しがしてありました。
「――サトルー! 乗ってー!」
と、深空魚の牙をかわしながら、天馬がサトルの元へ駆けていきました。サトルは、すれ違い様に手綱を受け取ると、そのまま背中にまたがり、谷を上へ上へと戻って行きました――。
――パチッパチッ、と小気味のいい音を立てている火のそばに、サトルとリリ、そして風博士が、沈鬱な表情で座っていました。
風博士のそばには、風の音を受信する機械が、無残にも中の機械をむき出しにして、転がっていました。サトルは、火に時折枯れ枝をくべながら、ため息をつき、その度に、周りの空気が少しずつ淀んでいくように、感じられました。
と、サトルは言い様、博士が落としたロープを拾うと、素早く輪を作り、勢いよく空を上っていく深空魚に向かって、投げつけました。
輪を結ったロープは、空を飛ぶ黒い帯のような深空魚の胸びれに掛かり、ロープを握っているサトルを、軽々と宙に舞い上げました。
「サトル君、無理してはいかんっ――」
「博士! 今、行きます……」
サトルは、ロープを登りつめると、ちょっとでも油断すれば滑り落ちてしまいそうな深空魚の背中に、しっかりとしがみついて這い上り、博士を咥えている深空魚のあごまで、やって来ました。
「博士っ!」
「――サトル君、ここにナイフがある。これで、袋のひもを切ってくれ」
博士はポケットからナイフを出すと、手を伸ばすサトルにやっとの事で渡しました。
サトルは、博士からナイフを受け取ると、言われたとおり、袋のひもをゴシゴシと切り断ちました。
バツン――という音と共にひもが切れ、サトルは自由になった博士の手をつかむと、深空魚の背中に引き上げようとしました。しかしその途端、深空魚は急に体をねじり、博士は、サトルになにやら訴えるような視線を向けたまま、地の底の果てしのない谷に落ちていきました。
「ハカセーッ!」
あっという間に小さくなっていく博士を、しかし白い稲妻が助け上げました。それは、リリが操った天馬でした。サトルは、天馬が谷を怖がっていたのに、なぜ? と思いましたが、見ると天馬の目に、しっかりと布で目隠しがしてありました。
「――サトルー! 乗ってー!」
と、深空魚の牙をかわしながら、天馬がサトルの元へ駆けていきました。サトルは、すれ違い様に手綱を受け取ると、そのまま背中にまたがり、谷を上へ上へと戻って行きました――。
――パチッパチッ、と小気味のいい音を立てている火のそばに、サトルとリリ、そして風博士が、沈鬱な表情で座っていました。
風博士のそばには、風の音を受信する機械が、無残にも中の機械をむき出しにして、転がっていました。サトルは、火に時折枯れ枝をくべながら、ため息をつき、その度に、周りの空気が少しずつ淀んでいくように、感じられました。