おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

夕陽のガンマン

2020-06-10 07:58:03 | 映画
「夕陽のガンマン」 1966年 イタリア


監督 セルジオ・レオーネ
出演 クリント・イーストウッド
   リー・ヴァン・クリーフ
   ジャン・マリア・ヴォロンテ
   マーラ・クラップ
   ルイジ・ピスティリ
   クラウス・キンスキー

ストーリー
マンゴー(C・イーストウッド)は若い男で激しい性格、物事はすばやく片づけるのが得意の賞金稼ぎだ。
もう一人、大佐(L・V・クリーフ)と呼ばれる男は初老で、身のこなしも上品、冷静に計算してから仕事を片づけるという賞金稼ぎである。
この二人はお互いに相手を知らなかったが、共通の目的はインディオ(G・M・ポロンテ)と呼ばれる凶悪な殺人鬼を探し、殺すことだった。
賞金は二万ドル。
マンゴーと大佐の出会いは、お互いの不信から決闘寸前にまでいったが、血をみずに終り、共通の目的を果たすために手を結んだ。
もちろん賞金は山分け、ということで…。
このときインディオは牢獄を脱走し、仲間と一緒にエル・パソの銀行を襲撃する計画をねっていた。
これを知った二人は、一人がインディオの仲間に潜入し、手引きをした末に彼を殺すことにきめた。
そしてマンゴーが潜入する役を引きうけることになった。
銀行襲撃の日、うまうまとインディオ一味に加わったマンゴーは内部から、大佐は外からインディオを倒すことに手はずをととのえた。
ところが大佐が待ち伏せて倒す計画が素早いインディオのため失敗。
舞台はメキシコ領の小さな村に移された。
ここで略奪品に手を出したマンゴーと大佐は、インディオの手下に捕えられてしまった。
だが二人を助けて自分の手下を殺させ、その上で二人を殺そうというのがインディオの考えだった。
結果は二人の銃弾に手下は皆殺しになったが、大佐はインディオの銃の前に立たされてしまった。


寸評
ストーリーはシンプルで、腕利きのガンマン二人がお尋ね者にかかった賞金目当てに手を結びやっつけるだけ。
しかも余分なストーリーを省いて雰囲気を出しながらファーストシーンから一気にラストにもっていくのが痛快だ。
最初からエンニオ・モリコーネのテーマ音楽が心地よく流れ、この映画の重きをなしている。
「荒野の用心棒」が黒澤明の「用心棒」の焼き直しで、監督のセルジオ・レオーネがボブ・ロバートソンとアメリカ人らしい名前に変えていたのに対し、こちらはセルジオ・レオーネとフルヴィオ・モルセッラのストーリーをルチアーノ・ヴィンセンツォーニとセルジオ・レオーネが脚色という正真正銘のイタリア製西部劇だ。

クリント・イーストウッドはこの後「ダーティ・ハリー」で大ブレイクするが、この作品では彼よりもリー・ヴァン・クリーフの方が目立っている。
登場シーンも颯爽としている。
彼は賞金稼ぎで、賞金のかかった男を狙っているが、その男が危険を察して逃げ出したところで、馬に下げていた包みを開くと色んな銃が収められていて、かれのプロフェッショナブルぶりが示される。
その中からライフルを取り出し、馬を撃って逃げるのを止めてから奇妙な銃で簡単に仕留めてしまう。
やがてイーストウッドも現れて、こちらも簡単に賞金を稼いでいく。
高額賞金のかかったインディオ目当てに遭遇した二人は互いの帽子を打ち合って腕前を披露しあう。
導入部分としては手際よくまとめられている。

捕らわれていたインディオが仲間の手引きで脱獄しアジトに潜伏しているところへイーストウッドが乗り込んでくるのだが、このあたりからあまりにもあっけない展開が続く。
鉄壁と思われた銀行襲撃の手際よさは認めるとしても、強盗団の所へリー・ヴァン・クリーフが現れて彼らの仲間に加わるのは余りにも都合がよすぎる展開である。
何よりも、打ち合わせをしたリー・ヴァン・クリーフを裏切って、別の場所へ導いたイーストウッドとの間に何事も起こらないのが物語を軽くしている。
仲間を殺させて奪った金を独り占めしようとする為に二人を逃がすなんて不自然と言えば不自然だ。
仲間の一人と結託していたのだし、インディオがその気になれば、仲間を始末することぐらいたやすいことだったはずだが、そこはまあ映画の世界ということなのだろう。
で、結局仲間をすべてやられたインディオは二人と対決する羽目になってしまう。
そんなバカなと思うのだが、それがマカロニウェスタンなのだろう。

リー・ヴァン・クリーフの正体も明らかになって終わるのだが、最後まで二人の争いはない。
それでも再びエンニオ・モリコーネのテーマ音楽が流れるとなぜか満足してしまう。
勧善懲悪、アクロバット的な銃撃戦、滅茶苦茶強い主人公など、極めて単純な組み合わせで何もないから楽しめる映画となっている。
それがマカロニウエスタンなのだが、そのために短期間でブームは去ってしまったのだとも思う。
歴史的な意味合いで名を留める作品だ。