最近の報道を見ていると、本当に中東情勢には驚かされます。チュニジアとエジプトの指導者は退陣を余儀なくされ、民衆の反政府行動の波はイエメン、バーレーン、リビア、そしてイランにまで及んでいるとのこと。長年の間、鬱積した不満が一気に噴出したといった様相を呈しています。この「革命」の成果が「吉」と出るのか、「凶」と出るのかは予断を許しません。イスラム原理主義勢力が台頭し、却って国民から自由を奪うかもしれませんし、イスラム教徒内部でもシーア派とスンニ派の対立が激化するかもしれないからです。今回の「革命」においては、民衆を先導するカリスマ的な指導者が見当たらないことが特徴のようで、そのような背景からも、混迷が深まる可能性を秘めていると言えます。
さて、わが国では、一人の指導者が「革命」を成就させました。名古屋の河村たかし市長です。愛知県知事、名古屋市長、名古屋市議会解散住民投票のトリプル選挙に完全勝利を収め、より一層、注目を集めるようになりました。
しかしながら、個人的には、同市長の主張に「大衆迎合」の香りを感じてしまいます。「市民税の10%減税、市議会議員の報酬半減」というスローガンは単純明快であり、聞こえもよいですから、市民にも支持されたのだと思いますが、少し冷静になって考えてみると、議員の報酬を半分にしたところで市民税の減収分を補うことは不可能だろうと思われます。歳入の不足分を補うためには地方債の発行を行わざるを得ないのですが、それだけで市政を運営していけるのかどうか。いずれは、市職員の給与を数パーセント削減するということが行われるのではないでしょうか。職員の給与カットが地域経済に与える影響については、何ら考慮されないままに。
今回のトリプル選挙の結果を受けて、大村秀章愛知県知事と河村市長は喜びを分かち合っておられましたが、このお二人は、ほんの数年前まで、それぞれ自民党、民主党を代表する論客としてテレビにも頻繁に出演されており、自党の見解を舌鋒鋭く披瀝されておられました。そんなお二人が抱き合って喜ぶさまを見ながら、今後の政治の流れを想像して、少し背筋が寒くなりました。
ただ選挙に勝つために、大衆受けする短絡的な主張を掲げた御旗の下に現与野党の議員がなだれをうって集まってくる。彼らは過去の主義主張を顧みない。そして、大衆を「扇動」する能力に長けた者がリーダーとなる。そういう事態を想像してしまったのです。大衆受けする施策といえば、減税、社会保障の充実、そして、財源を確保するための“公務員たたき”というのが昨今の通り相場ではないでしょうか。
今、特定のリーダーと彼の親衛隊のような地域政党を中心に地方政治を変えてゆこうという動きは愛知の他には大阪にみられるだけなのかもしれませんが、国民が停滞感の打破を渇望すれば、中東のように、短期間で大きなうねりとなって永田町に及んでくる可能性があります。現在の民主党、自民党ほどの規模ではないにもせよ、大衆迎合的な政策を主張する第三極がキャスティング・ボートを握る。そのような状況が、はたして国益にかなうのでしょうか?今、何ら施策を進めずに与野党ともに自滅の道を歩むのか、あるいは、党利党略を捨てて与野党が政策協議を行い、閉塞状況を徐々に打破していくのか、重大な岐路に立っているように思います。
しかし、そんな私の気持ちなど斟酌するには及ばないと考えたのか(?)、今日、与党議員16名が会派離脱届を党に提出してしまいました。本当に、どうなることやら・・・。
【ふく福】