あなたから一番遠いブログ

自分が生きている世界に違和感を感じている。誰にも言えない本音を、世界の片隅になすりつけるように書きつけよう。

シリア軍事介入を巡って見えてきたこと

2013年09月01日 23時12分04秒 | Weblog
 今回の米オバマ大統領によるシリアへの軍事行動決断は、本当によくわからない。建前はともかく真意がつかめない。
 ネット上にも様々な意見が乱れ飛んでいるが、ただひとつ共通しているのは、今回の軍事行動は直接的にはアメリカの国益に反するという点だけだ。
 シリアが反米勢力の強力な一角であるというのはわかる。イスラエルと直接的に敵対してもいる。軍事産業が戦争を望んでいるというのも事実だろう。

 だがおそらく実際には、これまで「化学兵器を使ったら軍事的な制裁を行う」とシリアを牽制してきたのに堂々とやられてしまったので、どうしてもここで示しをつけなくてはならないというところなのだろう。力で世界を支配している合衆国はなめられたら終わりである。ヤクザと同じだ。
 しかし国外で侵略軍的戦闘をするのが基本であるアメリカの力は、現実には瞬発力はあるものの長期戦になったら体力が持たない。大昔から防御3倍の法則と言われるように、攻撃は、とりわけ地の利の無いアウェーでの戦いは、想像以上のエネルギーが必要になる。

 ただ事実としてはっきりしたことはある。
 日本の政府・与党は、各国が及び腰になっているときに、「唯一の同盟国」と公言していち早く支持を予告した。誰が何を言おうが米国と一心同体であることを宣言し、忠誠を誓おうとしているのである。一般的にはフライングとしか言えないし、最後には(ひょっとしたら当のアメリカを含めて)周りを見たら誰もいないということにもなりかねない。そうなってくると、これまで世界で比較的信頼されていた日本への評価が変わってしまう危険性さえある。
 そんなリスクを冒してまでアメリカの一番の子分であることをアピールしたいのだ。こうなるともう哀れさえ感じてしまう。

 しかしもうひとつ明らかになったことがある。アメリカの世論や議会は基本的にシリアへの軍事行動を支持していないということだ。これは何を意味するのか。
 建前で言えば同盟国イスラエルを防衛する、国際秩序を維持するという正義を行使するのが、アメリカン・スピリットであろう。しかし米国民は現実の前にもはや疲れきっている。もうヒーローになどなりたくないのだ。米議会が大統領の決断を否決する可能性も大きい。
 このことと、尖閣問題に対する米国の中立的な立場表明を重ね合わせると、いかに日米安保が存在しようと、結局のところアメリカは日本を見捨てる可能性が十分あると考えざるを得ない。
 さすがに在日米軍基地を脅かす可能性があれば、米軍は自分の軍事拠点を守るために戦うだろうが、それは重大な自国権益の危機だからだ。日本や日本国民のことを考えてくれるなどと思ったら大きな間違いだろう。

 それでも日本の政府・与党・官僚がアメリカに尻尾を振り続けるのは、それが彼らにとって、いわば最後の権威の源泉だからだ。アメリカに頭をなでてもらえない政治家や役人は、大資本から嫌われ見捨てられる。本来は民主主義国家である以上、政治を支えるのは庶民のはずなのだが、常に庶民を冷遇している日本政府に対する信頼はない。ナショナリズムを煽ることでかろうじて支持を得ようとしているが、それだって経済が悪化して更に庶民をいじめることになったらおしまいだろう。
 政府・与党・官僚はアメリカと心中するくらいの覚悟だろうが、日本の庶民はいつでも政府・与党・官僚を見限ることができる。政権交代を経た今日、沖縄、福島、新潟、大阪など中央の言いなりにならない地方の反乱は当たり前になった。選挙で大勝したとは言え、自民党も見た目ほど安泰ではない。

 そうであるからこそ安倍政権は、ナショナリズムと対米追従という矛盾する政策にのめりこんでいかざるを得ない。好戦的強圧的な姿勢も実は危機感の裏返しと言えるかもしれない。
 ただ一言、すでに踏み込みすぎている安倍政権の道連れにされるのは本当にごめんである。
コメント
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