ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

明りを灯す人

2011-10-04 20:30:00 | あ行

青い空、広がる緑。
キルギスって、すんごく美しい国なんですねえ。

「明りを灯す人」71点★★★★


中国とカザフスタン、ウズベキスタンなどに囲まれた
中央アジアのキルギス共和国。

美しい自然に囲まれつつも
資源に乏しいこの国で、
人々は寄り添って暮らしていた。


そんなキルギスの小さな村に暮らしている
主人公“明り屋さん”。

電気工の彼は、貧しい人々に電気を使えるよう
メーターに細工したりする
“善き人物”で、

風力発電を夢見て、
自家製風車を作ったりしている。

だが、あるとき村に
国会議員に立候補する男が票集めにやってくる。

そして静かな村に
だんだんと変化が起き始めて……?!


人々を助ける明り屋さんの暮らしを
ユーモラスに描いた作品です。

単純に
知らない土地の風俗が
興味深いっていうのもあるんですが、

それだけには収まらない
「おっ?」というおもしろさがありました。


展開にもちょっと意表をつかれるし。


まず、キルギスって
印象としてはチベットやモンゴルっぽいんですが、

砂埃の大地だけでなく
緑もちゃんとあって、

木陰の雰囲気なんて
どこか沖縄のようでもあったりするんですよ。

不思議な場所だなぁ、と。

で、
男性はキム兄のような、
ミニ朝青龍のような見た目で、

対する女性は肉感的で
八代亜紀みたいな美女(笑)。

この組み合わせもおもしろい。

また
性的にも意外に開放的というか、
明るくプリミティブなエロスが漂うんですねえ。


また限りなき善人である明り屋さんが、
汚濁にまみれた我々の日常では
なんとなく寛容されてしまっている物事を
嫌悪する様も
(例えば、接待とか賄賂とかね)

意外にいま描きにくい
純粋でシンプルな
現代への批判だとも感じました。

明り屋さんが夢見ている風力発電もそうだし。


明り屋さんを演じているのは
監督・脚本も担当したアクタン・アリム・クバト。

彼は「あの娘と自転車に乗って」(98年)で知られる監督ですが、
この映画を機に
ロシア名のアブディカリコフ、からキルギス名のアリム・クバトに
替えたそうです。

いろいろ意欲含んだ作品ですね。


★10/8からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「明りを灯す人」公式サイト


それにしても。

おなじみ『週刊朝日』先週号(10/7号)のツウの一見で
国立民族博物館教授・小長谷有紀さんに
お話を伺いましたが、

キルギスってほんっとに
美しい国なんですって!

記事にも書きましたが

ガガーリンの有名なセリフ
「地球は青かった」には
実は前フリがあって

この地方を好んで描いていた
ニコライ・レーリッヒという画家の
「絵のように青かった」と言ってたらしいんですね。

ここに絵が出てますが
NYレーリッヒ美術館
おお~~なるほど!

確かに美しい!

行ってみたいですねえ。
コメント (2)
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