ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

プリピャチ

2012-02-28 22:46:37 | は行

これは、我々の物語。

「プリピャチ」69点★★★☆


1986年に起きたチェルノブイリ原発事故。

原発から30キロ圏内は立ち入り禁止区域となり、
許可なく立ち入ることができない。

本作は事故から12年後、
原発から4キロのプリピャチ村に自主的に戻って暮らす老夫婦や
稼働中の原発で働く人々のインタビューをまとめたドキュメンタリーです。

まさに福島の状況、そして未来を描いているような映画で
注目度も高いと思います。


ある日突然、故郷を奪われた
プリピャチの人々の心境、原発事故への思い、放射能への対応認識は、
驚くほど今の我々の状況と酷似している。

彼らは一様に
美しかった故郷の変わり様を嘆き、
不安を感じつつも

しかし12年がたち、
目に見えない危険は
どんどん日常のなかに埋没していっている。


自分たちの意志でプリピャチに戻った老夫婦は
湖で小魚を捕り、
禁止されているキノコも「何トンも食べるわけじゃない」と食べる。


だって、誰も助けてくれないから、
目の前の生活が、優先されるんです。


いっぽう、政府の事情で移住が叶わず、
子どもを含む80世帯ほどが暮らしている村もある。


監督は「いのちの食べかた」のニコラウス・ゲイハルター氏で
ほぼ同じ画角で、常に一定の距離感を保って対象に向かい合っている。

そして
閑散とし、色褪せた世界を映すのに
モノクロームの映像がピッタリ合っている。

何の装飾も、てらいもないシンプルな作りも
かえって訴える力になっている。


なにより戦慄なのは
この映画が1999年製作ということ。

人間は、何も学びやしない。
平手打ちを食らったような感じです。

せっかくの先人の啓示から
学ぶべきではありませんか。ねえ。

★3/3(土)から渋谷アップリンクほか全国順次公開。

「プリピャチ」公式サイト
コメント
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