ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

顔のないスパイ

2012-02-24 01:40:57 | か行

リチャード・ギアは
カッコよかったですけどね。

「顔のないスパイ」53点★★★


現代のアメリカ。

ロシアと密接な関係を持つ、
上院議員が暗殺された。

その手口から
敏腕スパイ「カシウス」の存在が浮かびあがる。

しかし、カシウスは死んだはずだった――。

そこで、かつてカシウスを追い詰め、
いまは引退生活を送っている
CIAエージェント(リチャード・ギア)が呼び戻される。

ポールはFBIの若き捜査官(トファー・グレイス)と組んで
カシウス追跡を任されるのだが――?!


ピリピリ張りつめた空気が終始漂う
スパイサスペンス。

しぶしぶ捜査に加わる
元エージェントと

伝説のスパイ「カシウス」を研究しまくっていた
若いオタク捜査官の温度差とか

もっと盛り上がるネタありそうなのですが、
そもそもの話に書き込みが足りないのが残念。


割と早めにタネが明かされるのは
まあいいとして、

「大方わかるよ」というところを
ご丁寧にセリフで説明してくれたりと、
ミステリー、サスペンス慣れしたすれっからしには物足りなすぎる。

まあどんでん返しは一応あるけど、
予想範囲内、かな。

原題「The Double」に、すべてが表されてました。

★2/25(土)から全国で公開

「顔のないスパイ」公式サイト
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トワイライトサーガ/ブレイキング・ドーンPart1

2012-02-23 01:17:43 | た行

途中、抜かした人も
これは観る価値ありですぞ?!

「トワイライトサーガ/ブレイキング・ドーンPart1」74点★★★★

禁断のヴァンパイアラブストーリー、
ついにシリーズ最終章、二部構成の前編。
……って、引っ張るなア(笑)。


ついに愛するエドワード(ロバート・パティンソン)と同じ
ヴァンパイアになる決心をしたベラ(クリスティン・スチュワート)。


人間のうちに結婚式をあげ、ハネムーンに向かうベラを
オオカミ族のジェイコブ(テイラー・ロートナー)は
複雑な心境ながらも、祝福して送り出す。

そして南の島で
ついに結ばれるエドワードとベラ……

が、翌朝。
ベラは体の異変に気づく。

なんとベラの体内には、
もう新しい命が宿っていたのだ――。

そしてその子は
決して作ってはいけない危険な子だった――!


ちょっ、ちょっ、これはスゴいことに!


シリーズ4本目ともなり、やや中だるみあったものの、
今回は思いもかけない展開と、
かなーりホラーな映像に驚愕!


「ドリームガールズ」の監督だけに、
展開がスピーディーでうまく、

さらに
運命の恋人達の甘くてドリーミーな月夜のハネムーンから一転、
凄まじいことになる展開の落差が
オイシイねえ(笑)

まだ前編なのに釘付けになりました。

いままでとちょっと違ったテイストになってるし、
ホラー的な“美”要素も満載なんで
単体でも楽しめるかもしれない。


なによりスゴイのが
ベラ役、クリスティン・スチュワートの鬼気迫るやせっぷり!
いや、これCGなのか?!そうなのか?!

てか、続きどうなんの?!
早く見たい~~!!


★2/25(土)から新宿ピカデリーほか全国で公開。

「トワイライトサーガ/ブレイキング・ドーンPart1」公式サイト
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pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち

2012-02-22 00:46:36 | あ行

これは3Dの意味がある!

映画「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」75点★★★★


世界中の人を魅了し、2009年に急逝した
天才舞踏家ピナ・バウシュ。

その舞台を
20年来の友人であるヴィム・ヴェンダースが映画化したものです。


存命のときから企画はあったのだけど、
映像で彼女の舞台を表現する
いい方法がなかったという監督。

そこで出会ったのが3D技術。

ということで映画化が叶ったそうですが

舞台を視覚化するのに3Dがここまで有効だとは
正直、思いもしませんでした。
てか、それだけヴェンダースがうまく撮ってるんですよね。


番長、残念ながら生の舞台を見たことがないのですが、
この映画の迫力は
舞台体験を補ってあまりあるかもしれません。

実際、舞台をよく観ていた方も
魅了されたとおっしゃっていました。


とにかく舞台上の奥行きがあり、
かつカメラでなければ不可能な場所から、スゴいアングルで見ることができる。

その贅沢さとおもしろさは格別です。


大きく4つの演目がありますが、
なかでも舞台に土をひいた上で踊る「春の祭典」は衝撃。
ダンサーたちの身体言語が、画面からほとばしり
体の芯に響くような、迫力と重量感がある。

また彼女の舞台には
所々に独特のユーモアがあって
難しく考えなくても、楽しめるのがいい。

ただ歩く、イスを倒す…
それだけの動作を
繰り返すだけで凝視してしまったり。

そういった表現は、
例えば赤ん坊が
自分の手をじっと見つめて笑うような
精神が「体」を意識する原点のような感覚を思い起こさせます。


さらに舞台を飛び出して、公園や街中でも踊るのも
おもしろい演出。

合間にピナを振り返る団員たちのコメントや
ピナ自身の映像も少し挟まり、

「探し続けなさい、方向や道がわかなくとも」と言い続けた
「探求者」=ピナ・バウシュの姿に背筋が伸びました。

しっかしマジで3D、使えるじゃん!

★2/25(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9ほか、全国順次3D公開

「pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」公式サイト
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ヤング≒アダルト

2012-02-21 00:08:34 | や行

主人公の行動すべてが痛すぎて
だからこそ、笑えて、愛おしい!(笑)

「ヤング≒アダルト」83点★★★★

「JUNO/ジュノ」の脚本家×「マイレージ、マイライフ」の監督作品。
人間観察力が、並じゃないです。


ミネアポリスで都会暮らしをする
メイビス(シャーリーズ・セロン)、37歳、独身。

美人…には違いないんだけど、
その日常は、かなーり雑(笑)。

ほぼ毎日、二日酔いで
メイクも落とさないまま就寝。
起きたらまず、ヌーブラ、ベリッ(笑)

仕事はヤングアダルト(少女向け小説)作家なんだけど
実はゴーストライターで
ちょっとしたスランプに陥っている。

そんなダメダメなある日、
高校時代の元カレから一通のメールがくる。

何を思ったかメイビスは
故郷の田舎町に帰ることにするが――?!


いや~素晴らしいですね。

「JUNO/ジュノ」脚本のディアブロ・コディは
現代“ビミョー人間”ドラマの天才。

なんといっても主人公の
立体的な人物造形に舌を巻きます。

まずは一人暮らし女の
雑な日常生活のリアルなこと(笑)
笑った笑った。

これ別に女子に限ったことでなく
「人目にふれないところで、気を抜いている」状態のリアルなので
誰もが共感できるはず。
前に座ってたおじいさんも、吹いてた(笑)

すごい観察眼だよなあ。


そして彼女を帰郷させることで、
田舎町では“イケてた”彼女が
過去のプライドにしがみついている様子を
うまいこと描き出し、

そこで起こるドタバタ騒動に盛り上げていく。

彼女の行動すべてが
「勘違い」だったり痛々しいんですが、
でも、憎めない。


彼女が
「みんなはフツーに出会って、幸せになってるのに
なんで自分にはそれができないの!」と
吐露するシーンには、思わず涙。


紛争も格差も深刻な社会問題だけど
「一人ぼっちでかわいそう」と見られる世の中も
一人モノにとっては深刻な社会問題なのだ!


そんななかでメイビスの幸せや如何に――?!となるんですが
まあ、そこもうまいはずしの妙で、
可笑しくも、やがてしんみりを共有させる。


結局のところ
じゃあ「幸せってなんぞや?」ということなんですよね。


ダンナがいなくても、宙ぶらりんで不安定な仕事でも、
ふと気付けば、
ほら、アナタは自分の足で立ってるんじゃないですか、と。


そして周囲のみなさんも
紛争と同じく、一人モノ理解に必要なのは
“寛容”なんですよ、と。


ま、この映画はそこまで
言及したいかどうかはわかりませんが

いち“一人モン”としても
この映画は、
かなりイイ線に到達してると思います。


★2/25(土)から全国公開。

「ヤング≒アダルト」公式サイト
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汽車はふたたび故郷へ

2012-02-20 00:54:04 | か行

自伝的な話って
微妙に難しかったりするね。


「汽車はふたたび故郷へ」64点★★★


「月曜日に乾杯!」「ここに幸あり」の
オタール・イオセリアーニ監督が
自身の映画人生を振り返るように描いた作品です。


旧ソ連の共和国だったころのグルジア。

少年ニコは女の子バルバラとルカと
わんぱくっぷりを発揮していた。

やがて成長したニコ(ダト・タリエラシュヴィリ)は
映画監督になり、
幼なじみのバルバラやルカの協力で映画作りをしている。

しかし検閲の厳しいグルジアでは
なかなか思うような映画が作れない。

ニコはグルジアを離れ、
フランスに行くことにするが――。



セリフを少なくしたサイレント映画のような間合い、
ちょっとしたシュール、
ユーモアが味わい深いのは、監督ならでは。


特にニコの少年時代のわんぱくぶりが
楽しく、ワクワクさせられます。

ただ自伝的要素が強いせいなのか
全体のつながりなどにはあまり気を使っていなく
かなり散文的。

唐突な展開もあり、シーンのリズムなどがバラバラで、
普通に見ていると、つまづいてしまう。


「映画愛」という観点を第一に、
グルジアという国の歴史や背景を知りつつ
見るのが正しいかもしれません。


写真の引き延ばし器や、編集に使うスプライサーなど
小道具もまた「映画愛」に溢れていました。


★2/18から岩波ホールで公開。ほか全国順次公開。

「汽車はふたたび故郷へ」公式サイト
コメント (2)
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