まるぞう備忘録

無題のドキュメント

天狗企業の罠。

2015-06-20 13:45:00 | まるぞう経営学
 昨日の続きであります。具体的なIT会社のお話ですので、業界に関係のない人にはピンと来ないかもしれません。ただ急成長する会社にはそれと同等の罠があるということが何となくわかっていただければ幸いです。ここでもまた陰と陽の因子の話ともつながるかもしれません。



  まるぞう株式会社は薄利多売でありますからお客さんの数はそこそこあります。毎日のようにいろいろなお客さんから問い合わせやらクレームのメールが来ます。それらの対応については直接は担当の社員がやっています。が、その文章については一つ一つ私がチェックしています。
 CoCo壱番屋というカレーチェーンがあります。その社長さんは午前中かけて、前日全国のお客さんから来たクレームを一つ一つ読んでいくそうです。今では社長は二代目になりましたが、二代目社長もその伝統を受け継ぎ、午前中かけて全国からのクレームを全て読むそうです。私はココイチのカレーは好きですが、この社長さんの姿勢も好きであります。



 さて逆に傾きかけたIT会社を身近に2つ知っています。一つ目のA社は右肩上がりだった営業成績がここ数年落ち始めていました。ある営業部長さんが「おかしい」と離れていったお客さんをいろいろ聞き取りしていくと、問題はサポートにあるということが判明しました。
 IT会社は製品を納めるところが儲けの半分。保守サポートが残りの儲けの半分といって過言ではありません。しかしサポートとは、ほぼクレーム対応であり、やはりめんどくさい仕事なのです。
 そして急成長したIT企業は社内に天狗の風潮が蔓延しやすいようです。天狗企業はサポートのサービス低下に一番あらわれます。窓口対応のサービスがまず落ちるのです。
 かの営業部長はサポート受け付けたもののうち3割が未対応のまま放置されていたということでした。3割放置とは驚くべき低サービス風土です。これでは顧客がどんどん離れていくのは当然でありましょう。



 またもう一社天狗企業を知っています。こちらもまた問い合わせをして返答が返ってくるまでに一ヶ月以上もかかることが頻繁にありました。このB社は、ある分野では業界トップシェアの新進気鋭の会社でありましたが、今は大口顧客がどんどん離れていっているようです。
 かつては優秀な営業マンが何人もいました。お客の無理難題やクレームでも社内に持ち帰り、社内を説得してお客さんに回答を提示していました。なかにはそれはできないよ。という内容もあったことでしょう。しかしきちんと誠意をもって「うちの会社の製品は◯◯はできないです。それは仕様です。ですが、△△の機能を使うことでここまでは対応ができると思います。」というような提案をしてたことでしょう。お客さんが必要なのは、担当者が「お客さん目線」かどうかが一番重要なのですから。


 B社は急成長することでやはりサポート窓口がパンクしたようです。担当の営業マンがフォローすべきクレーム数は飛躍的に増加しました。しかし天狗企業の共通点は組織の風通しがどんどん悪くなっていくことです。
お客さんの数が少ない時は、社員全員でそのお客さんの役に立ちたいと思っていたことでしょう。しかし顧客が増えて社員の数も急激に増えることで風通しが悪くなります。
 結局腕の良かった営業マンたちはどんどんB社を離れることになりました。それはお客さんと会社の板挟みになり続けた結果でした。腕利き営業マンはお客さんからのクレームを社内にあげます。なんとか解決して欲しいと開発部に依頼します。しかし開発部はクレーム対応はお尻が重いのです。


 私は開発の現場を知っていますが、クレーム対応とは新規開発以上に手間がかかるのです。できればやりたくない仕事の筆頭です。そもそもクレームにあがってくる不具合を、自社の開発環境で再現させるまでが大きな手間です。そして運良く自社の開発環境で再現したとして、開発手段もわかったところで、それをどうやって直すかがまた一苦労です。単純に直していいのかどうか。もうお客さんの数も多いですから、直したことで逆に不具合が発生するケースがあるかどうかを一つ一つチェックしなければなりません。評価されないのに地味な作業ですから。


 一方逆に、新規開発はそれなりに苦労もありますが、でも新しいものを創る喜びは担当者にはあります。完成したらみんなから「そんなのができるんだ。そんな格好いいデザインなんだ」と褒められることも励みになります。
 しかしクレームサポートはまずお客さんからの「苦情ありき」の後ろ向きの仕事です。自分が開発したものならとにかく、先輩技術者や他社技術者が作った製品の尻拭いも少なくありません。そもそも同じクレームを自社開発環境で再現するまでが一苦労です。


 天狗会社はこうしてサポートのサービス力が落ちていき、小さいボヤだったクレームは炎上をつづけ大火事になります。そして天狗社長の知るところとなり、担当者に大きな雷となります。
「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!!」


 そうすると社内はどんどん萎縮した空気になります。もうクレームが起きても誰も部長に報告しません。そして部長もまた社長に報告しません。だってクレームがあると知らせると怒られるのは自分だからです。もう隠しおおせなくなるまでクレームは炎上しつづけます。その板挟みに耐え切れず優秀な営業マンが一斉にやめていくのでした。


 身近のIT会社が天狗になって、サポートサービス力の低下で、お客が離れていって業績が落ちるのを目の当たりにすると、本当にこわいことであると思います。クレーム対応とは後ろ向きの仕事でありますから、これこそが本当に社長など会社のトップが直接指揮するべきことであろうと思います。


 働いている現場とは忙しいものです。突然ふってくるクレーム対応はできればババ抜きとして誰かに押し付けたいと思う気持ちもわかります。だからクレームというババは、会社のトップが積極的に消化(昇華)していくべきものです。
 「こんなになるまでどうして放っておいたんだ!!」という言葉は絶対に社員に言ってはいけないでしょう。それは風通しの悪い経営陣の責任です。



 私が小さい会社の経営の体験で学んだことは、クレーム処理こそ儲けの源泉であるということでした。一見回り道のようですが、ここの丁寧さこそが売上にもっとも相関があるように思います。そしてもう一つ学んだことは、そのクレーム処理こそが、経営TOPが自分の手間暇をかけて行わなければならないということでした。


 やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、 ほめてやらねば、人は動かじ。


 この言葉は特にクレーム対応部門で、経営TOPが現場以上に一緒に汗をかくことが必要であることをあらわしていると思います。



おひさま、ありがとうございます。



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