まるぞう備忘録

無題のドキュメント

大人の麻婆豆腐。その3。

2016-06-19 12:49:29 | まるぞうレシピ

 麻婆豆腐は多くの中年おじさんの好物であり、手を抜いて簡単作ることができるため、あちこちの食堂で提供されています。しかし、なかなか「これは!」という麻婆豆腐に遭遇することは少ないです。それは作り手の麻婆豆腐に対する3つの誤解があるからのように思います。



(1)豚肉に対する誤解

 私が思うのは、麻婆豆腐のひき肉は具ではないということです。もし具にするならひき肉にしないで小間切れの肉を使った方がいいですし、ひき肉を具にするなら、ハンバーグや肉団子にした方がいいです。でもなぜひき肉を使うかというと、豚のひき肉は良い出汁をとる調味素材であるからなのです。キリっ。

 麻婆豆腐の起源は諸説あり、本場中国では豚肉ではなく牛肉だという説もあります。その中の豚肉説では、貧しい肉行商人が、売れ残った豚の脂身の多い部分を、麻(あばた)のお婆さんに頼んで、料理してもらったのが始まりとも言われています。

 そうなんです。現代の日本人の健康志向からは逆行いたしますが、麻婆豆腐は豚の脂が出汁の基本となっているのです。このためこの大人の麻婆豆腐は健康志向の方にはそぐわないです。しかしここ一番「念」を出さなきゃというギラギラする時には、この麻婆豆腐は、頼もしい味方となってくれることでしょう。



 一般的に日本人が麻婆豆腐を作るとなると、フライパンでひき肉を炒めます。お肉の色が変わったら麻婆豆腐の元を入れることでしょう。
 しかしお肉を出汁として使うのであれば、ラードをとるように、豚肉を弱火でじっくり加熱します。火が強すぎると赤み部分が焦げてしまいますから。
 こうして中弱火でじっくにお肉を加熱することで脂身のラードが溶けて透明になります。この透明のラードが赤身お肉をカリカリに揚げてくれます。
 この時が、豚肉が最高の調味食材になった瞬間です。前回のブラジルのフェイジョンもそうでしたし、ひき肉のキーマカレーを作る時も、私はこの方法を使います。



 透明のラードには豚の赤身の旨味がたっぷり溶け込みます。そして赤身は、上質のベーコンのようにカリカリに香ばしくなります。この豚肉の旨味が溶け込んだラードスープと、赤身の旨味が凝縮されたカリカリのひき肉が、プリプリの淡白な豆腐との相性を引き立てるのでありました〜。



(2)激辛の誤解

 日本では激辛というと唐辛子の辛さのことです。外食で激辛麻婆豆腐を頼んでも、唐辛子の辛さの辛いだけです。でもこれは本当の麻婆豆腐の辛さの半分しかありません。


 中華では辛いの意味は、麻(マー)と辣(ラー)の二つを意味します。辣(ラー)は辣油の字の如く唐辛子の辛さです。日本人が激辛の時にイメージする辛さです。
 一方、麻(マー)は麻薬の字の如く痺れる辛さです。日本では味わうことはあまりありません。うちのお店は本場の四川料理です。とうたっている食堂であっても、麻の辛さが入っていないことも多くあります。やはり多くの日本人はこの麻(マー)は慣れていないため、入れる量を加減しているようです。


 数年前、私は一度だけ香港に出張したことがありました。香港の街中は台湾と同じで、漢字は私達日本人が読める繁体字であるため、外食のメニューを読むには不自由しませんでした。ある食堂で麻辣麺を頼んだのですが、出てきた麺の、もう麻(マー)の辛さは尋常ではありませんでした。二口三口と食べ進めると、もう舌が痺れてきて、味がわからなくなります。半分も食べるともう身体の限界。とても無理〜。ですが、もう我慢して苦行のように食べました。辣(ラー)の激辛とはことなる、初めての麻(マー)の激辛でした。
 こんな辛い麺は香港人だって無理っしょ。と思って店内を見渡すと、みんな平気でこの麻辣麺を食べています。きっと慣れるとこの麻(マー)の痺れる辛さがやみつきになるのでしょう。


 ちなみにインドカレーも辛いのは香辛料による辛さ(スパイシーホット)です。唐辛子の辛さ(チリホット)とは違います。日本で激辛カレーというと唐辛子の辛さ(チリホット)ですが、インドでは唐辛子の辛さが苦手な人も多いようです。唐辛子は南米原産の食材です。インドは胡椒などのスパイスの国。日本人には同じ辛さに思えますが、彼らからすると全く別物でありました。日本人のカラシとワサビぐらい別物です。閑話休題。


 日本人には本場中国の麻(マー)の辛さをそのまま再現するは多分行き過ぎではありましょうが、「おお、舌がピリピリする」程度の麻(マー)の辛さは新鮮であり、麻婆豆腐の醍醐味であります。
 このため大人の麻婆豆腐を作るためには、次の2点の調味料はご準備頂きたいと思います。


①豆板醤(トウバンジャン)
 いわずと知れた四川味噌です。これは日本人に馴染みのある唐辛子の辛さを出します。


②花椒(かしょう、ファオジャン)
 これがあの痺れる麻(マー)です。最近では大きなスーパーの中華食材コーナーにもあり購入しやすいです。
しかし2012年にこの花椒に猛毒のカビが検出され、輸入花椒の検査が強化された事件がありました。正直中国原産の食材は控えたいところでありますが、残念ながらこの花椒は日本では育てることができないようなので、全て中国産となります。
せめてエスビーやギャバンのように日本のスパイスメーカーが輸入したものを選んで、安全の確率を確保するしかなさそうです。
 もちろんそこまで無理して麻(マー)を体験したいかという話しもそもそも論としてあります。なくても日本人が美味しいとおもう辣(ラー)の麻婆豆腐は作ることは可能です。花椒をお使いになる方は、自己判断でお願いいたします。



(3)の誤解につづく。麻婆豆腐は、煮るのではなく、焼くのです。



 ありがとうございます。※今日は中潮ですね。



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