本年度アカデミー賞&ゴールデン・グローブ賞で、外国語映画賞 W受賞達成のイラン映画。
ベルリン国際映画祭史上初の3冠!オスカー獲得で83冠目の映画賞に輝く話題作
2010年の外国語映画賞受賞作「瞳の奥の秘密」も面白かったし毎年外国語映画賞は気になってて。
監督&脚本はアスガー・ファルハディ。
前作「彼女が消えた浜辺」(ベルリン映画祭銀熊賞(監督賞)受賞に続く長編5作目。
前作より面白かった
まずはあらすじ。
離婚協議で口論する主人公夫婦の姿をとらえた冒頭から
シミンとナデルは結婚して14年。もうすぐ11歳になる娘テルメーとナデルの父との家族4人で、テヘランのアパートで暮らしている。
妻シミンは、娘の将来を考えて国外移住すべく、1年半奔走して国外移住の許可を取った。
しかし、夫ナデルの父がアルツハイマー病になったことで、計画が狂う。
妻は出て行く代わりに信心深い貧しい家政婦ラジエを雇い、娘を置いたまま実家へ出て行く。
この家政婦がまたひとくせありもので。
娘は地味だけど11歳。(監督の娘だって。)
家政婦、ラジエの夫は失業中で借金も抱え、短気でキレやすい困った人。
ある日、ナデルが帰宅するとアルツハイマーのおじいちゃんがベットの横に倒れていて
アザを作って一歩間違うと死んでしまうところだったという事故に。
面倒を見ているはずのラジエの姿はなく、しばらくすると戻ってきた。
それと同時にタンスの中のお金もなくなっていたため
カッとなったナデルはラジエを問いつめ、出て行く様に怒鳴ってドアを閉め追い出した。
自分はお金をとってないと言って戻るが聞く耳もたれず。
数日後、つきとばされて流産したといいナデルを訴えて来る。
ナデルに突如かけられる殺人容疑。
妊娠していたことも知らないし、突き飛ばしていないと主張するナデル。
果たして嘘をついているのは、、、、?
そして、最後で明かされる みせられなかった 事実とは、、、、!
介護問題、嘘、信仰宗教
相手を思うふりをしてむき出しになっていくエゴと良心のせめぎあい。
小さなことから広がる。
修復可能だったことが、徐々に事態は収拾つかなくなっていく。
8/10(82点)
ちょこっとネタバレあり
とても見応えあるドラマで数々の賞も納得の1本。
「おとなのけんか」よりシリアスな激情の口論展開
初めの30分は前作同様話がなかなか進まず退屈だったけど,途中からどんどん惹き込まれた。
キーワードは嘘。
嘘をついてる人をあてるというミステリーではないのだけど、
観る人によって、誰に肩入れしてみるかかわってくるかもしれない。
わたしは断然、お父さんナデルが災難だなぁと思いながら観てた。
妻は娘の為といいながら、実際娘のことを思っている様には見えないし,
あまりに14年も連れ添った夫に対して疑ったりそこで責める?というくらい夫に対して酷い。
観ていて興味深く面白いのは、
- 家政婦はどこへなにをしにいってた
- 裁判の行方
- 出て行った妻は夫に何をしてあげられるか
- 明かされるすべての真相
という部分。
1について、結局はおじいちゃんが道路に出てしまったところを目撃し
助けに出たところで車にはねられてその日からお腹が痛くなり、病院へ。
出て行けと言われたので夫のお金の工面もあるため咄嗟に嘘をついた。
お金は確かに入らなくなるけどそれならはねた車訴えればいいのに(そこはつっこんじゃダメか)
おじいちゃんを助けようとしてと最初から真実を言えば良かったのに
どんどん事態が悪い方向へ。信仰心厚い人は 結局は嘘を突き通せないでどこかでばらしてしまう。
こんな親同士の喧嘩に巻き込まれた子供は大変。
離婚させたくない、母親を呼び戻したい一心の娘。
信仰心強い家政婦は結局嘘を突き通せない事で立場が逆転するラスト近くまで
二つの家族の争いがうまい脚本によって描かれ、どういう展開になるのか最後まで惹き付ける。
なるほど結局はそれでも「別離」か、、、、。悲しいね。
こんなことになっても2人の絆はもとには戻らず、悲しい決断をせまられる娘。
娘が結局どちらか選ばされるけど「もう決まっている」と言って
2人は部屋の外(ロビー)にだされたままで反対側の椅子に座り判決を待つ。
そこへエンドロールが流れるラストカット。
なんだかとても印象的だった。
最後に、監督のメッセージを。
私は、映画『別離』のことを探偵がいない探偵映画のようなものだと考えています。
パズルを解くのは観客であるあなたです。そこにはたくさんの答えがあるでしょう。
本作ではいくつもの問いがちりばめられていますが、明確な考え方や答えを示すということはしていません。
登場人物自身やその気持ちになりきって、直面した問題を考えてみてください。
私は、監督が大衆よりも優れていて、あたかもアドバイザーやメッセンジャーのようにふるまうような時代は終わったと考えています。
それは、つまり、観客がもっと能動的になって、積極的に物語に関わっていく時代になったということです。
観客は、観ている映画の中から自分でアングルを選ぶことができます。
だから、観客のみなさんは、探偵役になって、本作の示す問いについて考えてみてください。
—アスガー・ファルハディ
気になる方は、ぜひ劇場で
JODAEIYE NADER AZ SIMIN 2011年 イラン 123min
4月7日より、Bunkamura ル・シネマほかにて公開中~
アルツハイマーのおじいちゃん。
アスガー・ファルハディ監督(左)1972年5月7日、イランのイスファハン生まれ。
えーー、39歳だって!みえん
今後の作品も要チェックです