飲兵衛の酔写アルバムPartⅡ

毎週1回月曜日に更新します

傾城阿波の鳴門・順礼歌の段

2021-02-04 00:00:01 | 田舎歌舞伎

我が浜松は江戸時代より田舎歌舞伎の盛んな地です。
毎年一月末には雄踏文化会館で雄踏歌舞伎・万人講が開催
されてきました。

時代の流れで、成人男子の担い手がいなくなり、その大多数が
女子中高生になり、いわば少女歌舞伎の様相を呈してきました。
女の子が大好きな飲兵衛にとってこれは誠に喜ばしい事で、
ほぼ毎年の様に出かけていましたが、残念な事に今年はコロナ
で中止になってしまいました。

そこで過去のブログから、今まで一番印象に残った「傾城阿波
の鳴門・順礼歌の段」を再アップいたします。

 

十郎兵衛・お弓の夫婦は、徳島の玉木家の家宝国次の刀を探すため、
大阪の玉造に住み、今では盗賊の仲間に入っていました。
お弓が留守番をしているところに、順礼の少女がやってきます。

「おひねり」(投げ銭)が投げ込まれ場面を盛り上げます。

 

 

「巡礼にご報謝~」
戸口に聞こえた愛らしい声。

 

 

お弓が外へ出てみると見ると、巡礼装束を身にまとった可愛らしい少女が
戸口に立っています。

 

 

国許に残してきた自分の娘と同じ年頃なので、話を聞いてみると娘の名前は「おつる」、
両親を探して徳島からはるばる旅をしてきたという身の上を語ります。

 

 

「そうかい。それで、親の名は何というんだい」
「あい、とと様の名は十郎兵衛、かか様はお弓と申します」
間違いなく自分の娘であることがわかりました。

 

 

娘の「おつる」も「お弓」に母親の面影を感じ、はここにおいて欲しいと頼むのでした。

 

 

 

 

今すぐに抱きしめ母と名乗りたい思いを抑え、盗賊の罪が娘に及ぶことを恐れて、
国へ帰るように諭します。
そしてこのままここにおいて欲しいと頼むおつるを、お弓は泣く泣く追い返します。

 

 

悲歎にくれるおつる。
(どっと投げ込まれた「おひねり」が場面を更に盛り立てます)

 

 

やがておつるは哀しそうに順礼歌を口ずさみながら立ち去ります。

 

 

 

 


「♪ちちははの恵みも深き粉河寺~ 仏の誓いたのもしの身や~」
おつるの歌う順礼歌が遠のくと、お弓はこらえきれずにおつるの後を追いかけるのでした。

 

 

 

元々この手のお涙頂戴話には弱い飲兵衛、
歳と共に涙腺も益々弱り、あまりの名演技につい涙ウルウル
となったのであります。

 

 


雄踏歌舞伎(その4・子供歌舞伎三人吉三巴白波)

2020-02-03 00:00:01 | 田舎歌舞伎

田舎歌舞伎を始めとして、地方の伝統文化保存会にとって一番大切
なのが後継者の育成です。

そのため、雄踏歌舞伎において今一番力をそそいでいるのが
子供歌舞伎の育成です。
その中心の中学三年生のグループが今回は高校受験のため出演
できませんでしたが、その穴を小学校四年生を中心としたグループ
が見事に埋めて
くれました。
それでは小学校四年生による「三人吉三巴白波~大川端庚申塚の場」
をご覧ください。

江戸本町の木屋文蔵の手代十三郎は金百両を落とす。
拾った「おとせ」は十三郎に届けようとする。
(実際の歌舞伎ではおとせは夜鷹なのですが、さすがに小学校四年の子に
夜鷹は不適切ということで、ここでは町娘の設定で登場しました)

 

 

それを狙って美しい女装姿の「お嬢吉三」が現れる。

(ご両親の方々が舞台下に居て、ここぞとばかり大量の「おひねり」を投げ込んで
いました。)

 

おとせを呼び止めて、

 

 

お嬢吉三が近寄ります。

 

 

お嬢吉三はおとせに襲い掛かり百両を奪い、

 

 

 

 

大川に突き落とす。

 

 

ここからが名場面!

「月も朧に白魚の篝も霞む春の空、
冷てえ風も微酔に心持よくうかうかと、
浮かれ烏のただ一羽塒へ帰る川端で、
棹の雫か濡手で粟、
思いがけなく手に入る百両、

(御厄払いましょか、厄落し、という声が舞台の奥から)

ほんに今夜は節分か、西の海より川の中、
落ちた夜鷹は厄落し、
豆沢山に一文の銭と違って金包み、
こいつぁ春から縁起がいいわえ」

これだけの名科白を小学四年生の男子がすらすらとが言えるのですから、
大したものです。

 

 

その場を見ていたのが「お坊吉三」。
おとせから奪い取った百両を巡って二人は刀を抜いて争う。

 

 

 

 

通りかかった「和尚吉三」が止めに入り、争いの百両は和尚吉三が
預かり、三人の吉三は義兄弟の契りを結ぶ。

 

 

三人吉三が大見得を切るところで幕となりました。

 

 

 


雄踏歌舞伎(その3・恋飛脚大和往来~新口村の場)

2020-01-30 00:00:01 | 田舎歌舞伎

三百両の為替金の封印を切って梅川を身請けした忠兵衛は
梅川と二人、雪の降る中を追っ手の目を逃れて、
忠兵衛の実父・孫衛門の住むを新口村へとたどり着く。

 

 

 

 

 

 

寒さに凍える梅川。

 

 

二人は近くの小屋に身を潜めます。

 

 

二人が小屋に身を潜めていると、雪の中を忠兵衛の実父・孫衛門
がやって来る。
下駄の緒が切れ転んだ孫衛門を見て思わず梅川が走り出て助け起こす。

 

 

 

 

下駄の緒を繕う梅川。
梅川は孫衛門に迷惑がかかってはと名乗る事もできないが、
孫衛門はこの女が倅の嫁だと気づく。

 

 

小屋から見守る忠兵衛。

 

 

何とか忠兵衛を実父・孫衛門に会わせたいと苦悩する梅川。

 

 

白い雪景色に黒留袖、裾の割れ目からのぞく赤襦袢。
いや~艶やかですね。

飲兵衛もうゾクゾクしてしまいました。

 

 

梅川はついに「面無い千鳥」というお座敷遊びと同じ様に目隠を
して
忠兵衛に会わせる。
父の手が息子の身体を撫で、息子が父の手を握るのでした。

 

 

罪人と知って匿ったとあれは父にも罪が及ぶ。
父との別れを惜しみつつも、雪の降り積もった竹薮の道を二人は
逃げていく。

 

 

逃げていく二人を見守る孫衛門の嘆き!
現世では幸せになれない二人が、来世で幸せになることを願う。

近松門左衛門の一貫した世界観・人生観が見事に表現されていました。

 

 


雄踏歌舞伎(その2・恋飛脚大和往来~封印切りの場)

2020-01-27 00:00:01 | 田舎歌舞伎

雄踏歌舞伎より「恋飛脚大和往来」を、今回の「封印切りの場」と
次回の「新口村の場」との2回に渡ってご紹介いたします。

大阪の飛脚屋亀屋妙閑の養子忠兵衛は、新町井筒屋の遊女梅川と深い中に
なっている。
既に身請けの50両を渡してあるが後金ができない。

 

 

今日も堂島の武家屋敷に届ける三百両を懐に梅川のもとへ来てしまいました。

 

 

そこへ忠兵衛が居るとは知らずに丹波屋八衛門が来て忠兵衛の悪口雑言。
実は八衛門は梅川に惚れて身請けをしようとしていた。

 

 

 

 

八衛門の悪口雑言にいたたまれず、忠兵衛は奥の部屋から飛び出してくる。

 

 

忠兵衛は八衛門の挑発に乗り、お屋敷の三百両の封印を切ってしまう。
飛脚屋がお客の金の封印を切れば横領と見なされ、死罪は免れない。

 

 

死を覚悟したした忠兵衛はその金で梅川を身請けする。

 

 

誰も居なくなった座敷で、忠兵衛は今の金はお客の金だと打ち明け、
共に逃げようと告げる。

 

 

 

 

共に逃げる覚悟を決めた忠兵衛と梅川は養父や親方に身の不孝を詫びる。

 

 

梅川は井筒屋に別れを告げ、
目立たぬ様に一人ひそかに落ち合う約束の場所へと向かう。

 

 

 

 

梅川の後を忠兵衛また落ち合う場所へと向かうのでした。

大量に投げ込まれた「おひねり」(投げ銭)がこの場をを寄り一層盛り上げていました。

 

次回(1月30日・木)は「新口村の場」です。
雪の降り積もる中、追っ手の目を逃れながら忠兵衛の実父の住む新口村にたどり着い
た二人、
まさに近松門左衛門の世界が繰り広げられます。
是非見てくださいね。

 

 


雄踏歌舞伎(その1・寿式三番叟)

2020-01-23 00:00:01 | 田舎歌舞伎

1月19日(日)に浜松市雄踏町で行われました「雄踏歌舞伎」より
まず最初に「寿式三番叟」(ことぶきしきさんばそう)をご紹介いたします。

「寿式三番叟」は昔は正月の事始や歌舞伎の顔見世興行、新築開場などの目出度い
儀式として演じられました。

大歌舞伎では演じられなくなりましたが、田舎歌舞伎ではこの「寿式三番叟」
から始まるのが慣例となっています。


翁(天照大神)、千歳(八幡大菩薩)、三番叟(春日明神)が登場、
まずは千歳(八幡大菩薩)の舞からご覧ください。





続いて翁(天照大神)です。



そして三番叟(春日明神)の舞と続きました。



千歳や翁の優雅な舞と異なり、駆けたり跳ねたり舞台狭ましと動き回りました。





疲れて座り込んだところを、相方が蹴飛ばすというコミカルな場面もありました。






この「寿式三番叟」は各地域により伝承内容が異なります。
浜松市細江町の「横尾歌舞伎」では「千歳」や「翁」は登場せず、
三番叟のみ三人が登場しました。
こちらが「横尾歌舞伎」で演じられている「寿式三番叟」です。

 

 

 



おまけです。
(レタッチで東京カメラ部風?の画像に変えてみました)



 


絵本太功記・尼ケ崎閑居の場(横尾歌舞伎)

2019-08-05 00:00:01 | 田舎歌舞伎

今回は浜松市引佐町の横尾歌舞伎より「絵本太功記・尼ケ崎閑居の場」をご紹介いたします。

主君織田信長の執拗な辱しめに耐え続けた明智光秀だったが、
本能寺に陣を張る織田信長を夜襲して討ち取った。

光秀の母・皐月は息子の主殺しを良しとせず、尼ヶ崎の隠居所へ一人身を退いてしまった。
そこへ光秀の妻・操と息子の十次郎、その許嫁初菊が皐月の身を案じて訪ねてくる。
十次郎は皐月に出陣の許しを請う。
皐月は可愛い孫・十次郎に初菊との祝言の杯をさせて、十次郎を戦に送り出すことにする。
初菊は泣く泣く重い鎧を運び出陣の身支度を手伝う。

 

 

出陣を前にして祝言を挙げる十次郎と初菊。

 

 

 

 

 

 

 

出陣する十次郎を見送る初菊。



十次郎の身を思いやり涙にくれる初菊と操。



 

そこへ旅僧に身をやつした羽柴秀吉がやって来て一夜の宿を乞う。
皐月の勧めで旅僧が風呂に入る。



光秀が現われ、ひそかに隠居所をうかがう。
光秀が庭先から秀吉を狙って竹槍を突き入れる。
と、秀吉と思ったのは身替りになった母の皐月だった。






先ほど出陣した十次郎が瀕死の重傷を負って戻ってくる。
十次郎は負け戦の様子を語って絶命する。











母と息子の死を悲しむ光秀。するとその前に羽柴秀吉が旅僧から元の姿に戻って現れます。
合い対面した二人は戦場で雌雄を決することを約し幕となります

 

 

 


 


白波五人男(横尾歌舞伎、雄踏歌舞伎)

2019-08-01 00:50:32 | 田舎歌舞伎

浜松で行われている田舎歌舞伎で一番人気の演目といえばやはり「白波五人男」でしょうね。
江戸を逃げた五人男が稲瀬川に勢揃い、口上を述べて見得を切る「白波五人男・稲瀬川勢揃いの場」を
まず最初に横尾歌舞伎からアップいたします。

右から日本駄右衛門、弁天小僧菊之助、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸と並びます。

それでは日本駄右衛門の口上から。

問われて名乗るもおこがましいが 産まれは遠州浜松在
十四のときから親に放れ 身の生業も白浪の
沖を越えたる夜働き 盗みはすれど非道はせず
人に情けを掛川から 金谷をかけて宿宿で
義賊と噂高札に 回る配布の盥越し
危ねえその身の境涯も 最早四十に人間の定めはわずか五十年
六十余州に隠れのねえ 賊徒の首領日本駄右衛門



さてその次は江ノ島の 岩本院の稚児上がり
平生着慣れし振袖から 髷も島田に由比ヶ浜
打ち込む浪にしっぽりと 女に化けた美人局
油断のならぬ小娘も 小袋坂に身の破れ
悪い浮名も龍の口 土の牢へも二度三度
だんだん越える鳥居数 八幡さまの氏子にて 
鎌倉無宿と肩書きも 島に育ってその名さえ
弁天小僧菊之助



弁天小僧菊之助の人気はすごいですね。
投げ込まれた「おひねり」の数も半端じゃありません。





こちらは雄踏歌舞伎です。
まず最初は日本駄右衛門。



弁天小僧菊之助



忠信利平


赤星十三郎



南郷力丸



最後は追手の役人と大立ち回りを演じて幕となります。

 

 

 


傾城阿波の鳴門・順礼歌の段(雄踏歌舞伎)

2019-07-29 00:00:01 | 田舎歌舞伎

我が浜松は江戸時代より田舎歌舞伎の盛んな所で、今でも横尾歌舞伎や
雄踏歌舞伎が定期的に上演されています。
今日はその中から雄踏歌舞伎「傾城阿波の鳴門・順礼歌の段」をご紹介いたします。

十郎兵衛・お弓の夫婦は、徳島の玉木家の家宝国次の刀を探すため、
大阪の玉造に住み、今では盗賊の仲間に入っていました。
お弓が留守番をしているところに、順礼の少女がやってきます。

「おひねり」(投げ銭)が投げ込まれ場面を盛り上げます。

 

「巡礼にご報謝~」
戸口に聞こえた愛らしい声。

 

 

お弓が外へ出てみると見ると、巡礼装束を身にまとった可愛らしい少女が
戸口に立っています。

 

 

国許に残してきた自分の娘と同じ年頃なので、話を聞いてみると娘の名前は「おつる」、
両親を探して徳島からはるばる旅をしてきたという身の上を語ります。

 

 

 

「そうかい。それで、親の名は何というんだい」
「あい、とと様の名は十郎兵衛、かか様はお弓と申します」
間違いなく自分の娘であることがわかりました。

 

 

娘の「おつる」も「お弓」に母親の面影を感じ、はここにおいて欲しいと頼むのでした。

 

 

 

 

今すぐに抱きしめ母と名乗りたい思いを抑え、盗賊の罪が娘に及ぶことを恐れて、
国へ帰るように諭します。
そしてこのままここにおいて欲しいと頼むおつるを、お弓は泣く泣く追い返します。

 

 

悲歎にくれるおつる。
どっと投げ込まれた「おひねり」が場面を更に盛り立てます。

 

 

やがておつるは哀しそうに順礼歌を口ずさみながら立ち去ります。

 

 

 

 

「ちちははの恵みも深き粉河寺~ 仏の誓いたのもしの身や~~」
おつるの歌う順礼歌が遠のくと、お弓はこらえきれずにおつるの後を追いかけるのでした。