毎年、
夏になると、この1枚の絵葉書を見て、オバちゃんの事を思い出します。
これは2004年(平成16年)にオバちゃんから貰った暑中見舞いです。
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平成16年。
今からおよそ18年前。
私は夜勤をしておりました。
夕方の6時頃に出勤し、夜中トラックを走らせる。
仕事が終わるのは朝方の7時頃。
会社近くのアパートに帰る。
約2時間の睡眠。
そして、10時開店のパチンコ屋へ………
そんな毎日だった私。
夕方からの仕事までに、パチスロで10万勝つときもあれば、10万負ける時もある。
勝っても負けても、夜勤の仕事だけはサボらす勤務を続けていた。
しかし、
毎日の睡眠が約2時間………
そんな生活が長く続くはずがない。
私は身内(母や弟)には内緒で仕事を辞め、1人、毎日パチスロに明け暮れる日々を送っていた。
私が思い描いていた思惑とは真逆に、サラ金からの借金だけがどんどんと増えてゆく。
いつしか私はパチンコにも行けなくなり、一人アパートで酒を飲み続けているような生活を送っていた。
「このまま、死んでしまおうか………」
そう思った事もあった。
丁度そんな頃に、ポストに入っていた一通のこの絵葉書。
涙が止まらなかった。。。
私は一念発起し、産業廃棄物収集運搬業に就職し、汗を流し働く喜びを覚えた。
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仕事をしながら、出会った彼女と私は結婚した。
その彼女との間に子供も産まれ、このまま幸せな日々がいつまでも続くと信じていた。
しかし、
私も、妻であった彼女も、互いにスロット中毒、ギャンブル依存症である二人の夫婦が、いつまでも幸せな暮らしを続ける事など出来るわけがない。
結婚してから一年、
離婚。
彼女との慰謝料、養育費などを巡る調停。
ボロボロになった私は実家に帰るしか他なかった。
一銭もなかった私。
◆◆◆◆◆
その頃……
オバちゃんは末期の癌に侵されて病院に入院していた。
私はある日、オバちゃんが入院していた病院に出向いた。
オバちゃん:
「おう!よく来てくれたな。オマエさん。
ま、聞かなくても
オマエさんの事はオフクロさんからイロイロ聞いとるからな。知ってるぞ。」
笑いながら、そう言うオバちゃん。
オバちゃんは私の母の姉。
オバちゃん:
「ほれ、コレ見てみ、オバちゃんのこの足。
こうなっちゃうと、流石にオバちゃんでも歩けなくなっちゃうわ(笑)」
ベッドの傍ら、私の方に脚を差し出したオバちゃん。
その脚は、浮腫んで象のような脚になり、カチカチだった。
オバちゃん:
「お前さんも、イロイロと今は大変だろうけど、頑張ってな。
コレ、今はこんなだからオバちゃん貧乏でな、コレしかあげること出来ないけど。ほれ、小遣い。オマエさんに。」
不自由な身体をなんとか動かし、巾着袋の財布から5000円札を、こんな時なのに、私に差し出したオバちゃん。
私は、そんなオバちゃんの姿を見ながら、ベッドに顔を埋め、ボロボロに泣いてしまった。。。
数日後………
オバちゃんは静かに息をひきとった。
平成21年。今からおよそ13年前のこと。
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「オバちゃん。
オレ、まだなんとか働いてるよ。
相変わらず、ダメダメだけどね。」